効果的な胎教とは?いつからするべき?どんな音楽がいい?
「胎教」というと、『教』という字がつくことから“赤ちゃんがおなかの中にいるときから始める勉強”というイメージを持つママやパパもいるでしょう。胎教の捉え方は人それぞれで、その方法もいろいろあるようです。「そもそも胎教とは何か?」また、「具体的にどのようなことをするのが胎教なのか?」そして、「効果はあるのか?」など、胎教について気になることを、あゆみレディースクリニック高田馬場院長の佐藤歩美先生に話を聞いてきました。
監修者プロフィール
佐藤歩美先生
あゆみレディースクリニック高田馬場
院長
日本周産期・新生児医学会周産期専門医。2008年横浜市立大学医学部卒業。愛育病院、NTT東日本 関東病院に勤務後、2022年より現職。できるだけ妊婦さんの気持ちに寄り添えるように、悩みなども話せるような雰囲気づくりを心がけている。
胎教とは?
「胎教」の捉え方は人それぞれだと思いますが、もともとは、昔から日本各地で言い伝えられてきた「妊婦が火事を見ると赤痣の子が産まれる」とか「妊婦は葬式に行かせてはいけない」といった伝承が、胎教のもとになっているのではないかと思います。基本的にはどの地方でも、“妊婦さんはあまりストレスがないような環境で妊娠生活を送りましょう”という意味で、伝統や文化の中で受け継がれてきた慣習です。
やがて1960年代ごろになると医療技術が進歩して超音波画像診断が行われるようになりました。さらに、胎児学・新生児学、神経科学などの研究も進んだことから、胎児には聴覚や記憶能力があることが解明されました。このことをきっかけに、早期教育に注目が集まり、クラシックや英語などをおなかの赤ちゃんに聞かせることが「胎教」であるというイメージが、強くなったように思います。
しかし、現在では教育という概念よりも、「妊娠中はママができるだけストレスを受けずによい環境で過ごすことで、赤ちゃんにもよい影響を与えることができるので、まず、ママがリラックスして楽しくマタニティライフを過ごすことが大切」という、広い意味で捉えられるようになったと思います。
胎教はいつから始めるべきなの?
「胎教」を始める時期というのは特に決まっていません。胎教の内容にもよるとは思いますが、妊娠初期はつわりがあり、ママも気持ちに余裕がもてる状況ではないことが多いと思います。そのような時期に無理に始めるよりも、少し体調が落ち着いてから始める方が良いでしょう。
多くの妊婦さんは妊娠15週を過ぎるとつわりは軽減し、妊娠18~20週ごろから胎動を感じるようになります。胎動を感じることで、赤ちゃんの存在が今まで以上に身近になってくると思います。また、このころから赤ちゃんの脳や五感が急速に発達し始めます。胎動を感じるようになった時期から積極的に胎教を始めるとよいのではないでしょうか。また、逆にいつまでに始めないと遅い、ということもありません。
胎教って効果あるの?
胎内記憶とは?
赤ちゃんがママのおなかにいたときの記憶を「胎内記憶」といいます。これには大きくわけて2種類あるそうで、ひとつは胎児の聴覚や味覚に関すること、もうひとつは赤ちゃんが産まれる瞬間を覚えているとか、妊娠中にママが見た風景を知っているといった体験などに関する内容です。
妊娠5ヶ月を過ぎると、赤ちゃんの脳の中にある“海馬(かいば)”と呼ばれる記憶をつかさどる部分が完成し、毎日聞いているママの声を記憶できるようになります。7ヶ月ごろには音の調子を区別する部分も完成し、ママやパパの声も聞き分けられるようになるといわれています。ママの声は、ママの体の中を通して振動して届くので特に伝わりやすいようですが、ママの声よりもママの心臓の音や血液の流れる音などの方がよく聞こえるという報告もあります。
出産直後から聞いたことのない女性の声よりもママの声を好むという研究結果も報告されています。また、味覚についても、ママが妊娠中に野菜ジュースなどを毎日のように飲むと、出産後、赤ちゃんはそれらの食べ物を好んで食べる傾向にあるという研究報告もあります。しかし、胎児期の産まれる瞬間を覚えているといった体験などに関しては、科学的に証明されているものはないようです。
音楽でおすすめのジャンルは?
おなかのなかの赤ちゃんに音楽などを聞かせた場合、私たちが聞こえる音と同じように赤ちゃんにも聞こえているわけではありません。赤ちゃんはママの皮膚や脂肪、羊水を通して音を聞いているので小さく聞こえるようです。また、おなかの赤ちゃんに、クラシックや英語教材を聞かせたことによる効果については、現時点で科学的に証明されたものはありません。
「胎教」の一環として、おなかの赤ちゃんにクラシックや英語などを聞かせているというママも多いと思います。ママが赤ちゃんのことを思って行う胎教なので、ママが楽しい気持ちであればそれは良いことです。ただ、産後に胎教の効果を期待しすぎるのはあまり賛成できません。胎教としてママがクラシックを毎日聞くことで、産後の赤ちゃんの情緒が安定してあまり泣くこともなく手のかからない子どもになることを期待したとしても、産後の赤ちゃんが必ずしもそうなるとは限らないでしょう。気に入らないことがあれば泣く、赤ちゃんとは本来そういうものです。「胎教を頑張ったのになぜ?」と悲観することがないように、そのことを念頭に置いておくことが大事だと思います。
胎教におすすめの音楽というと、モーツァルトの曲がいいという説があります。その理由は、モーツァルトのメロディには川のせせらぎや小鳥のさえずりなどに似た自然界にあるような音の強弱やリズム「1/fゆらぎ」があるからだそうです。このゆらぎは人がリラックスしたときに出る「α波」という脳波を誘発するといわれています。
しかし、いくらモーツァルトの曲が胎教によいといわれていたとしても、ママが聞き慣れない音楽を聞くことで、ストレスを感じてしまうようであれば胎教の意味がないでしょう。それよりも、普段から聞いているポップスやロック、ジャズなど自分が一番好きだと思う音楽を聞くほうがよいと思います。大切なのはママがリラックスできる環境に身を置くことです。目を閉じるだけでもα波は出るので、モーツァルトにこだわることなくママが好きな音楽を聞き、楽しいと感じることが、おなかの赤ちゃんにとってもよい胎教となるのではないでしょうか。
胎教の方法7選!
下記がおすすめの方法です。試してみてはいかがでしょう。
話しかける
朝起きたら「おはよう」、夜寝る前に「おやすみ」などのあいさつ、日常のできごとやママの気持ちなどを赤ちゃんに伝えましょう。声に出しても心の中でもOK。話しかけることで、次第におなかの赤ちゃんとの絆も深くなるでしょう。ママはもちろん、パパやおじいちゃん、おばあちゃん、上のお子さんなど、みんなが話しかけてあげるといいですね。たくさん話しかけてあげると、次第にママとパパの声の違いがわかるようになり、胎動で反応してくれるかもしれません。最近では、おなかの中にいるとき限定の愛称(胎児ネーム)をつけている人も増えています。赤ちゃんへの親しみが増す一つの方法だと思います。
おなかをなでる
おなかをなでるなど、おなかの赤ちゃんと間接的ではありますがスキンシップを積極的にとることで、愛情ホルモンと呼ばれる“オキシトシン”の分泌が促されるといわれています。もちろん、ママだけでなくパパや上のお子さんもたくさんおなかをなでてあげて。ただし、おなかをなでることで張りやすい人は注意が必要です。
好きな音楽を聞く
クラシックに限定しなくても、環境音楽、オルゴール音、ポップス、ロックなどママが心からリラックスできる好きな音楽を聞きましょう。
歌をうたう
声に出して歌うと気分がスッキリするという人は多いのではないでしょうか。ママが楽しそうに歌を歌うと、おなかの赤ちゃんもゆったりとした気分になれるでしょう。ママの気分転換にもおすすめです。
絵本の読み聞かせをする
ママやパパが好きな絵本を購入して読み聞かせをしましょう。ポイントは感情を込めてやさしいトーンで読むことです。気分が明るくなる本を選ぶといいですね。出産後の読み聞かせにも使えますね。
適度に体を動かす
適度に体を動かすと気持ちが前向きになり、便秘や腰痛などの解消にもなります。無理のない範囲で自分に合ったものを習慣にするとよいでしょう。ただし、おなかが張るときや体調がすぐれないときは中止しましょう。
散歩をする
転倒に注意しながらゆっくりと歩きましょう。ゆったりとした気持ちで散歩すると、道端に咲く花や小鳥のさえずりなど、いつもは気付かなかった新しい発見ができるかもしれません。
マタニティヨガ
体をゆっくりと丁寧に伸ばして、お産に役立つ筋肉を整えます。呼吸法や瞑想法でリラックス効果も得やすいようです。
マタニティビクス
有酸素運動をメインに考えられた妊婦さん向け全身運動のエアロビクス。お産のときに使う筋肉を鍛えるトレーニングにも役立ちます。
マタニティスイミング
浮力を利用して無理なく体を動かすことができます。肩こりや腰痛の緩和も期待できるようです。特に妊娠5ヶ月以降に夏を過ごす妊婦さんにおすすめです。
パパがママをサポートする
上記に挙げた方法は主にママが行うものですが、パパができる胎教があります。妊娠中はさまざまなマイナートラブルが出てきます。肩こりや腰痛で辛い状態のときに、肩や腰をマッサージすることでママの気持ちも癒されます。また、ママにとって妊娠・出産は不安なことも多いものです。話を聞いて気持ちを受け止めてあげることで、ママの気持ちも安らぎ、赤ちゃんにも伝わります。可能であれば両親学級にママと一緒に参加しましょう。
胎教におすすめのグッズ
もし、何かグッズを使って胎教をしたいと考えているのであれば、赤ちゃんが生まれた後も使えるものがよいと思います。例えば、「童謡」などのCDや「絵本」であれば、早めに購入してママが童謡などを歌ったり声に出して読んだりすることでおなかの赤ちゃんに聞かせてあげることができます。そして、赤ちゃんが生まれた後も一緒に楽しむこともできます。
「胎教」は特別な道具や、マタニティスポーツなどの教室に通わなくても行うことができます。おなかの赤ちゃんに話しかけたり散歩をしたり、食事に気を付けることも広い意味では「胎教」といえるのではないでしょうか。妊婦さんの中には、毎日忙しく、意識的に「胎教」をする時間が持てないという方もいるでしょう。積極的に「胎教」ができないことを負い目に思う必要はまったくありません。また、特別な「胎教」を毎日行ったからといって情緒が著しく安定する子どもになるといった科学的なデータもありません。一番大切なのは、ママがおなかの赤ちゃんを愛しい大切な存在であると思う気持ちです。会えることを楽しみにしているという思いを伝えましょう。そして、ママ自身がほんの少しでもいいので癒やしを感じることのできる時間を作り、マタニティライフを楽しむことが「胎教」なのだと思います。
監修/あゆみレディースクリニック高田馬場院長 佐藤歩美先生
update : 2018.06.26
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