生後8ヶ月の成長・発達「いたずらの、ここがすごい!」
生後8ヶ月になると、スプーンにぎって離乳食をぐちゃ、べちゃ、むにゅっ! お皿をたたいて、カチゴチチ、ガッチーン! テッシュをシュッシュッと取り出して、1枚2枚、3……40枚~!? こんないたずら、もう、うんざり~!? いえいえ、「いたずら」って、すごいこと! 子どもの体と心の発達研究の第一人者、榊原洋一先生の解説付きです。
監修者プロフィール
榊原洋一先生
お茶の水女子大学名誉教授
医学博士。1976年東京大学医学部卒業後、ワシントン大学小児神経研究部、東京大学医学部附属病院小児科などを経て、お茶の水女子大学理事・副学長。2017年より現職。「子ども学」の研究所「チャイルド・リサーチ・ネット」所長、日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達小児科学、特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。今後の活動について、「発達障害には様々な誤解があるので正しい理解を広げていきたい」と語る。『オムツをしたサル』『アスペルガー症候群と学習障害』など著書多数。
遊び食べで、ただいま学習中
マンマの時間だって
自分で食べてみたいな
「あー」と手を伸ばすと
スプーンを持たせてくれた
ボウルにスプーンを入れて
かき混ぜると
グチャという感覚が伝わってきたよ
え、なになに?
2回、3回かき混ぜてみる
今度は早く、次はゆっくり
「グチャッ」と「グッチャー」
この違い、おもしろいな
「食べ物で遊んだらダメでしょう」
ママがメッという顔をした
その顔、はじめて見たなあ
次もやったら見せてくれるかな?
ママがスプーンを取り上げようとした
いやだよ、いやだよ
その拍子にスプーンが
ボウルに当たる カチカチ
机に当たる コトンコトン
いま音がしたよね?
もう1回、もう1回
カチカチ コトンコトン
じゃあコップは?
Dr.サカキハラの「いたずらの、ここがすごい!」
繰り返しいたずらしながら、
効率のよい脳の神経回路を作っている
8ヶ月ごろになると、バブリングといって、「ブーブー」「バブバブ」などの唇や舌を使った音が出せるようになります。口の周りの筋肉が発達して、コントロールができるようになるのです。それに合わせて、モグモグと口を動かして、離乳食を食べるのもうまくなっていきます。
でも離乳食では、赤ちゃんの好き嫌い、むら食い、遊び食べ、手づかみなどに悩まされることもあるでしょう。自分で食べたいという気持ちも出てきて、スプーンを持ったのはいいけれど、食べ物をぐちゃぐちゃかき混ぜたり、手づかみで食べ出したと思ったら、つぶしたり投げたり……。
せっかく作ったのに…と怒りたくなりますが、赤ちゃんはそうしたお母さん、お父さんの反応も楽しい! 手でつぶしたりする感触も楽しい! だから、はしゃぎながら同じことを繰り返すのです。
赤ちゃんは、買ってきたおもちゃだけでなく、キーフォルダーやテレビのリモコン、スマートフォンなどの生活用品に興味津々。ティシュボックスから紙が次々出てくるのも楽しい。新聞をクシャクシャにするのも、おもしろい。
積み木をカチカチと合わせて遊んだり、スプーンで食器をたたいたり……。音を楽しんでいる赤ちゃん。大人にとってはいたずらに見える遊びを通して、学習しています。
脳は、神経細胞(ニューロン)同士が結びつくことで、いろいろな情報を伝達したり、記憶として定着させたりしています。その神経細胞をつないでいるのがシナプスです。その数は、生後12ヶ月でピークに達しますが、その後、どんどん減少していきます。よく使われる効率のよいシナプスだけが残るように、刈り込まれていく。効率のよい神経回路が残ることによって、子どもの脳は発達していくのです。
生後8ヶ月ごろから顕著になる赤ちゃんのいたずらの数々は、まさにこうした脳の発達にとって必要なこと。重要な役割を担っているのです。
update : 2018.04.11
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