生後9ヶ月の成長・発達「いないいないばあの、ここがすごい!」
生後9ヶ月。このころの赤ちゃんにとって、「いないいない、ばあ」は、鉄板。高度な発達があってできる遊びです。「いないいない」で顔を隠したそのあとに、「ばあ」でおもしろい顔が出てくる…というダンドリを記憶する力や想像力、予測力、期待する気持ちなどが、育まれたからこそできるのです。「いないいない、ばあ」って、すごいこと! 子どもの体と心の発達研究の第一人者、榊原洋一先生の解説付きです。
監修者プロフィール
榊原洋一先生
お茶の水女子大学名誉教授
医学博士。1976年東京大学医学部卒業後、ワシントン大学小児神経研究部、東京大学医学部附属病院小児科などを経て、お茶の水女子大学理事・副学長。2017年より現職。「子ども学」の研究所「チャイルド・リサーチ・ネット」所長、日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達小児科学、特に注意欠陥多動性障がい、アスペルガー症候群などの発達障がいの臨床と脳科学。今後の活動について、「発達障がいには様々な誤解があるので正しい理解を広げていきたい」と語る。『オムツをしたサル』『アスペルガー症候群と学習障害』など著書多数。
「ばあ」で何が起こるか、知ってるよ!
パパが両手で顔を隠して
「いないいな~い」
って いったんだ
なになに?
その手の後ろに
パパの顔があるのを知っているけど
すこ~しすると
「ばあ」と言いながら
両手を開いた
パパはおかしな顔をしていたよ
びっくりしたなあ
お姉ちゃんが両手で顔を隠して
「いないいな~い」
知っているよ! この遊び
「ばあ」で
へんな顔が出てくるんだよね
わくわくしながら
待っていると
「ばあ」
お姉ちゃんは あかんべをしていた
ほら 思ったとおり
うれしくなって
きゃっきゃっと笑っちゃった
Dr.サカキハラの「いないいないばあの、ここがすごい!」
記憶力、想像力、予測力の発達でできる、高度な遊び
生後9ヶ月ごろになると、親の視線の先、指さした先の「食べ物」や「花」や「犬」や「お月さま」など、いっしょに同じものを見て、気持ちを共有することができるようになってきています。「ジョイントアテンション」と呼ばれる社会性です。また、この人は「知っている人」で、知っているお母さんが「怖い顔をしている」「笑っている」ということがわかるようになります。
たとえば、「かわいいね」とにっこり笑って話しかけられたときや、「新聞はなめちゃダメよ」とメッという顔でお母さんにいわれたとき、言葉よりも表情を見て、相手の気持ちを理解するようになるのです。
「いないいないばあ」も、こうした成長発達が基礎になっている遊びです。初めてやるときは、びっくりするかもしれません。でも、次に「いないいない」というと「例のあれだ」、そのおまじないの言葉の後にちょっと待っていると、「知っているお母さんの顔が出てくるぞ」と、期待して待っている。だから、「ばあ」で顔を見せると、「あ、きた」と喜ぶわけです。
これはダンドリを記憶する力や想像力、予測力、期待する気持ちが育まれたからこそできる、高等な遊びです。そこまで発達していない、月齢の小さい赤ちゃんに「いないいないばあ」をやっても、きょとんとされるだけでしょう。
このころになると、目の前にあるおもちゃに布や箱をかぶせて隠しても、それを取って見つけられるようになります。視界から消えても、布・箱の下に存在しているという「物の永続性」は、発達心理学者のベイラージョンらの実験で、生後5ヶ月半でも、ある程度認識していることが示されています。
でも、布で隠したおもちゃを発見するには、物の永続性だけでなく、おもちゃがそこにあることを覚えている、短い記憶力も必要です。これらが備わってくると、布でおもちゃを隠したあと、取って「あった」と見つける遊びもできるようになります。
update : 2018.05.09
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