生後10ヶ月の成長・発達 「言葉のシャワーの、ここがすごい!」
生後10ヶ月。「ママ」「パパ」など、意味のある言葉を1つ2つ話す子も出てくるようになります。しかし、話す言葉は1つでも、その奥で理解している言葉の数は、50~60個にもなっています。こうした言葉の発達は、毎日、言葉が降り注いでくる環境の中で育っているから。「言葉のシャワー」ってすごいこと! 子どもの体と心の発達研究の第一人者、榊原洋一先生の解説付きです。
監修者プロフィール
榊原洋一先生
お茶の水女子大学名誉教授
医学博士。1976年東京大学医学部卒業後、ワシントン大学小児神経研究部、東京大学医学部附属病院小児科などを経て、お茶の水女子大学理事・副学長。2017年より現職。「子ども学」の研究所「チャイルド・リサーチ・ネット」所長、日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達小児科学、特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。今後の活動について、「発達障害には様々な誤解があるので正しい理解を広げていきたい」と語る。『オムツをしたサル』『アスペルガー症候群と学習障害』など著書多数。
話せないけど、知っている言葉はたくさんあるよ
「おはよう」
「いっぱい眠ったね」
目覚めるとママが、パパが声をかけてくれた
「今日の天気は晴れ~」
テレビから声が聞こえてきた
お散歩に行くと
「何ヶ月?」
おばさんが声をかけてきた
「もう、いいかい?」
「まーだだよ」
公園でお兄ちゃんとお姉ちゃんが遊んでいる
「今日は肉の特売日~!」
スーパーでお兄さんが叫んでる
毎日あふれる言葉を聞きながら
言葉を学んでいるよ
ある日 離乳食を見て
「マンマ」と言ったら
「わぁ、初めて言葉を話した」
ママが目を丸くして驚いた
マンマだけじゃないよ
知っている言葉はた~くさんあるよ
「ワンワン」でしょ
「おいしい」でしょ
「バイバイ」でしょ……
まだ言葉に出てこないだけなんだ
Dr.サカキハラの「言葉のシャワーの、ここがすごい!」
言葉の発達には、生身の人間の声が効果的
早い赤ちゃんは「ママ」「パパ」「ワンワン」など意味のある言葉を話すようになります。親は、初めて意味のある言葉を話したとき、やっと話したと思うかもしれませんが、言語というのは理解が先行しています。
多くの実験で、意味のある言葉を1つ話したときに、その奥には理解できる言葉の数が50~60個あることがわかっています。だから、1語しか話せない赤ちゃんでも、「バンザイしましょ」というと、両手をあげてバンザイするし、「どうぞ」「ちょうだい」というモノのやりとりの遊びもできるのです。赤ちゃんは、いろいろな経験をしながら、言葉の種類を増やしていきます。
ハートとレイディの実験で、1~3歳までの子どもは、英語で1時間に平均500~700語を聞いていることがわかりました。自分にかけられた言葉だけでなく、自分の回りで話されている言葉はそれくらいあるのです。そういう言葉のシャワーの中で子どもは育っています。
テレビやビデオ、CDから言葉を学ぶこともあるでしょう。しかし、自分にとって身近な人が、生身で話した言葉をいちばん聞いていて、そこから言葉を効果的に学んでいます。そのことを実験したのが、ワシントン大学の神経科学者パトリシア・クール。英語を話す家庭の生後9ヶ月の赤ちゃんを対象に、保育園で行った実験が有名です。
赤ちゃんを2つのグループに分けて、1つのグループの赤ちゃんには、中国系の保育士さんが直接、中国語で絵本を読んだり、遊んだりしました。もう1つのグループの赤ちゃんには、ビデオで、中国系の保育士さんが絵本を読んだり、遊んだりするシーンを見せました。
その後、中国語を聞かせて、どれくらい感受性があるか調べたところ、保育士さんと中国語でふれあい、交流した赤ちゃんは、中国語に関心を示したのに対し、ビデオを見た赤ちゃんはあまり中国語に関心を示さなかったのです。
赤ちゃんの言葉の発達には、一緒に遊んだり、語りかけたりすることが大事なことがわかります。
update : 2018.06.20
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