生後12ヶ月の成長・発達 「生理的な早産の、ここがすごい!」
1歳のお誕生日、おめでとう! この1年、おっぱい、ミルク、おむつ、お風呂、ねんね……に明け暮れたお母さん、お父さん、お疲れさま! でも、こうして赤ちゃんに手がかかったからこそ、言葉や社会性が育ってきたのです。「生理的な早産」って、すごいこと! 子どもの体と心の発達研究の第一人者、榊原洋一先生の解説付きです。
監修者プロフィール
榊原洋一先生
お茶の水女子大学名誉教授
医学博士。1976年東京大学医学部卒業後、ワシントン大学小児神経研究部、東京大学医学部附属病院小児科などを経て、お茶の水女子大学理事・副学長。2017年より現職。「子ども学」の研究所「チャイルド・リサーチ・ネット」所長、日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達小児科学、特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。今後の活動について、「発達障害には様々な誤解があるので正しい理解を広げていきたい」と語る。『オムツをしたサル』『アスペルガー症候群と学習障害』など著書多数。
はじめてのハッピーバースデー
「お誕生日おめでとう」
パパ ママ おじいちゃん おばあちゃん
みんなが笑っているから
うれしくなってニコニコした
目の前にはおおきなケーキ
ママが好きなやつだよね
その上に火のついたロウソクが1本
「ふー、ってできるかな?」
パパが口をとがらせながら
息を吹き出して見せてくれた
マネしてみたけど息は出ないよ
「1歳だよ」
人指し指を立てて
おじいちゃんがいった
「親として1歳ね おめでとう」
おばあちゃんがにっこり
そんなことより
やっぱりケーキが気になる~
身を乗り出して
ケーキに手を伸ばすと
ぺちょ~とやわらかい感触がした
手についたぺちょ~をなめてみた
この味は はじめましてだね
トリコになりそう~
Dr.サカキハラの「生理的な早産の、ここがすごい!」
未熟だから手がかかる。だから言葉や社会性が発達する
生まれたばかりは受動的に見えた赤ちゃんが、1歳になると、平均的にですが、立って歩いて自分の意思で移動し、離乳食も食べ、コミュニケーションの方法として、言葉を理解して話し始めます。手も使い、人間として基本的な生活を身に付けるようになるのです。
他の哺乳動物を見ると、馬や牛は生まれて1時間で立って歩き、自分でおっぱいを飲みに行きます。でも人間の場合は、おなかの中でその時期まで待っていると、赤ちゃんの頭が大きくなって、お母さんの骨盤を通れなくなります。
ですから、頭が骨盤を通れる、かつ自分でおっぱいが飲めるぎりぎりの段階で、外に出してしまう。それが人間の出産なのでしょう。そのため、人間は他の哺乳動物に比べて、生理的な早産で未熟な状態で生まれてきます。
未熟なので、おっぱいを飲ませたり、声をかけたりして、育てなければいけません。しかし、その結果として、親子が一緒にいる緊密な時間が生まれます。それが言葉や社会性を伝達する期間となっているのです。
親の鳴き方をまねて鳴く小鳥や、イモを洗う幸島のサルなど、ごくわずかの例外を除いて、親から子どもへ世代を超えた、知識や技、経験の伝達が、他の動物はできません。
さらに人間は、大きくなったら、本を読んだり、インターネットで調べたりして、世代を越えて、経験を受け継ぐことができます。それは言葉があるからです。人間だけが持つ言葉はすごいものなのです。
さて、1年間にわたり、誕生から1歳までの赤ちゃんの成長発達を紹介してきました。そこに秘められた赤ちゃんのすばらしい能力、奇跡的なパワーをわかっていただけたでしょうか。
子どもは、これからもまだまだたくさんのパワーを発揮しながら、成長していきます。日々の生活に見え隠れしているそのサインをキャッチしながら、どうぞ子育てを楽しんでください。
update : 2018.08.15
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