オトナ夫婦は教育費が上がりがちで危険!
最近は、晩婚化が進んでおり、40代以上で結婚、子どもを授かる人も多くなってきています。若い世代に比べて経済的に余裕がある世代なので、子どもを授かっても経済的には余裕があり、教育費もかさみがちに。ただし、定年退職までの期間が短いので教育費にかけすぎてしまうと、人生の後半で家計が苦しくなってしまいます。そこで、オトナ夫婦のための教育費の考え方と家計防衛術についてお話します。
監修者プロフィール
高山一恵(株式会社Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー)
(株)Money&You取締役。慶應義塾大学卒業。2005年に(株)エフピーウーマンの創業に携わり10年間取締役を務めた後、現職へ。主に女性向けに、全国で講演、執筆・監修、書籍、マネー相談を行っている。著書は「マンガでわかるiDeCoのはじめ方 ライバルはイデ子!?」(きんざい)、「35歳までにはぜったい知っておきたいお金のきほん」(アスペクト)など多数。ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
経済的余裕があるからこその油断
最近は、社会で活躍する女性も増え、晩婚、晩産化が進んでいます。筆者のところにも以前に比べて、
40代以上で結婚し、子どもを授かった、いわゆるオトナ夫婦からのマネー相談が急増しています。
40代で第1子を授かったオトナ夫婦にとって、今は子どもがかわいい真っ盛りの時期。でも、冷静に将来を考えると、定年を迎えたときに子どもはまだ成人していません。これから先は、子どもの学費に住宅ローンの返済、親の介護、さらには、夫婦2人の老後資金まで、あらゆるお金の問題が待ち受けています。
ですから働き盛りの今のうちに、子どもの教育費をはじめ、将来かかるお金について対策を考えておく必要があります。
とはいえ、40代は、それなりにキャリアを積んできた人であれば、役職にもついており、年収も高め。貯蓄もそれなりにある人が多いでしょう。子どもを授かっても経済的な余裕があるため、養育費が加わっても家計への影響はさほどありません。また、子どもにお稽古事をたくさん習わせるなど、教育にもお金をかける傾向があります。
筆者のお客さまを見ていても、遅くできた子どもが可愛くてしょうがないために、洋服一つでも有名ブランドショップものを買い、「子どもに良い教育を!」と、いくつものお稽古事を並行して英才教育に精を出しています。そこそこ貯蓄があるゆえに「何とかなるだろう」と出費を重ね、ある日突然、「先のことを考えたら意外とキツイ」と冷静になるようです。
特に世帯年収が1,000万円を超えるオトナ夫婦は、日常の出費でもワンランク上の買い物をしがちです。
例えば、スーパーならイオンより成城石井、ドトールよりもスターバックス、ユニクロよりもユナイテッドアローズ等々。高収入なゆえに払えてしまうから油断してしまうわけです。これを積み重ねた結果、定年近くになってほとんど貯蓄がないというケースも少なくありません。
最大の教育費がかかる大学入学を前に
定年を迎えるケースも!
一般的には、40代以降に子どもを授かる方が経済的には余裕があるように思いますが、上記で説明したように経済的に余裕があるからこそ生活全般にお金を使いがちです。ずっと経済的に余裕があるのであればよいのですが、問題なのは、退職するまでの期間が短いことです。
例えば、妻40歳、夫45歳の時に子どもを授かったとすると、子どもに本格的にお金がかかり始める15歳のときに、夫の年齢は60歳。定年退職を迎え、世帯年収が右肩下がりの中で、子どもは大学入学を迎えることになります。
文部科学省「私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果」によると、私立大学の初年度学生納付金は、平均131万6,816円。さらに、遠方の大学に通うことになった場合には下宿代がかかります。
これらを年金のみから支払っていくのは大変です。また、住宅ローンがある場合には、定年退職を迎えるまでに住宅ローンが完済していないと、老後に住宅費用も重くのしかかってきます。
授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
私立大学 | 877,735 (1.1) |
253,461 (△1.0) |
185,620 (0.6) |
1,316,816 (0.6) |
私立短期大学 | 699,512 (0.6) |
245,354 (△0.3) |
172,468 (0.5) |
1,117,334 (0.4) |
私立高等専門学校 | 455,478 (0.0) |
167,826 (0.0) |
114,261 (0.0) |
737,565 (0.0) |
40歳超えでの子育てスタートは、
3大支出に介護費が重くのしかかる
40歳を超えての子育てスタートは、人生の3大支出といわれる「教育資金」「住宅資金」「老後資金」が重くのしかかってくるといいましたが、さらに、問題なのは、40代の場合、親の年齢も上がるため、子どもに手がかかる時期に介護が発生する確率も高いことです。
その結果、共働きだった場合には、夫婦のうちどちらかが仕事を辞めざるを得なかったり、自費の介護サービスを頼むことになったりして、家計の負担が増えてしまうことになります。
40代で子どもを授かった場合には、人生の後半、しかも短い期間に教育費、住宅費、老後費、さらに親の介護費が重くのしかかってくるのです。
ですから、早い段階から教育資金、住宅資金、自分たちの老後資金、親の介護費用など、それぞれを準備しておかないと、老後は家計が火の車になってしまう可能性が高いでしょう。
今、経済的余裕があるとしても油断せず、しっかりと計画を立てて貯蓄していくこと大切です。特に夫婦の働き方は、家計に大きく影響するので、将来にわたり正社員で勤務するのか、どちらかがパートタイム勤務にするのか、妻もしくは夫が仕事を辞めた場合には、再就職の時期などについて夫婦でしっかりと話し合っておきましょう。
子どもが小学校を卒業するまでが
貯めるチャンス!
子どもにお金をかけてしまいがちなオトナ夫婦ですが、子どもの教育プランによってかかるお金は全く違うので、きちんと考えておきたいものです。
収入が高い分、子どもにやってあげられることは何でもやってあげたいと、先の見通しを立てずに支出を続けていると、大変なことになってしまいます。
子どもの教育費を貯めるチャンスは、本格的に教育費がかかる前の段階、つまり、子どもが小学校を卒業するまでです。共働き家庭で、子どもが保育園に通う場合は、保育料が安くなる3歳から小学校卒業までがベストな時期といえるでしょう。
教育費は必要になるタイミングがピンポイントで決まっています。この点は老後資金と異なるところです。
投資商品などは、長期的に増えることは期待できますが、教育費が必要な時期に元本が割れてしまっては困ります。ですから、教育費を準備する場合には、まず、確実に貯められる商品で準備することが大切です。
確実に貯められる商品の中で、現状もっとも増やせる可能性があるのは「学資保険」です。今年の4月に有力商品の値上げが相次ぎ、以前よりも魅力は薄れていますが、それでも保険料の支払い期間を10年間など短期にすれば返戻率が100%を超える商品はあります。オトナ夫婦の場合には、ライフプランの後半に多額のお金が必要になるので、教育資金は、10年の短期払いなどを利用して、なるべく前倒しで貯めておきたいところです。
また、教育費は、長年にわたって貯蓄していかなくてはいけないので、貯金が苦手な人でも強制的に貯まる仕組みがある商品が望ましいといえます。その点、学資保険は、毎月保険料が指定した口座から引き落とされるので、自動的に貯めていくことができます。
ただし、学資保険もデメリットがないわけではありません。もし、将来的に金利が上がったとしても、契約時の予定利率で固定されてしまうことに加え、万が一途中で保険料を支払えなくなってしまった場合には、中途解約となり元本割れをしてしまいます。毎月確実に支払える金額で積み立てることが大切です。
まずは、子どもが小さいうちから漠然とでも良いので、進学プランを考え、塾代なども含めた教育費の総額を「見える化」してみましょう。いつの時点でいくら必要なのかを把握することで、教育費の資金計画が立てやすくなります。
マネープランに加えて、
長く働き続けることも考えておこう!
以上、見てきたように40代以降に子どもを授かると、人生の後半に大きな資金が必要なライフイベントが集中するため、目先のマネープランだけを考えるのではなく、長期的な将来のビジョンを描き、マネープランを考えることが必要です。
加えて、長く働き続け収入を得る期間を延ばすことも必要です。現在、少子高齢化が加速する中、深刻な労働力不足が叫ばれています。
もちろんパパも長く働き続けられるように努力することが大切ですが、一般的に男性に比べて女性の方が育児を担う傾向にあり、ママの場合、仕事も育児も、となると、負担が重すぎるという人も少なくないことでしょう。特に高齢出産の場合には、体力的な問題も心配になりますね。
ただし、今後は、働き方改革の推進により、ママでも働きやすくなる環境が整備されていくほか、あらゆる企業で女性の感性やコミュニケーション力を求めており、女性の活躍の場が広がることが予想されます。
ずっとハイペースで働く必要はないので、子どもの成長過程に合わせて細く長く仕事を続け、長く収入を得続けることも考えていきましょう。
40代以上で子どもを授かるメリットは、経済的にも精神的にも余裕があることです。子どもの教育についても、お金を十分にかけられる余裕があります。子どもが小さい頃から、複数のお稽古事をやらせ、公立よりも私立の学校に通わせる傾向があります。もちろん、子どもに良い教育環境を与えたいという親心はわかりますが、注意しなければならないのは、定年までの期間が短いことです。というのも、現役でいられる時間が短いにもかかわらず、40代以上で子どもを授かると、人生の後半に、子どもの教育資金に加えて、住宅資金、老後費用、親の介護費用など、負担が重い資金がのしかかってくるからです。夫婦共働きでずっといければまだよいですが、体力的な問題や親の介護などで、夫婦のどちらかが離職しなくてはならなくなるケースも少なくありません。
今、経済的に余裕があっても、油断せずに将来にわたるマネープランをきちんと立て、不測の事態も想定しながら備えておくことが大切です。特に子どもが小学校を卒業するまでは貯め時なので、早めに計画して実行することを心がけましょう。また、できるだけ長く収入を確保するべく、長く働けるようにキャリアプランニングを考えておくことも大切です。
監修/高山一恵(株式会社Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー)
update : 2018.12.19
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