乳児期(0歳児)にかかりやすい病気
赤ちゃんがかかりやすい病気は思いのほか多いもの。
いざという時のために、症状にあった正しいケアを覚えておきましょう!
乳児期の病気の基礎知識
ママから免疫をもらえる病気ともらえない病気があります
いちばん身近な病気は風邪ですが、生まれてくるときにママから免疫をもらうおかげで、生後6ヶ月ぐらいまではあまり風邪をひきません。また、麻疹、風疹、おたふくかぜの場合、ママが免疫を十分にもっていると赤ちゃんに免疫が移行して生後8~10ヶ月ごろまではかかりにくいのです。でも、百日咳、結核は免疫をもらえないので、周囲からうつる機会があると生後早い時期からかかる心配があります。水痘は免疫が移行しても早い時期になくなるので、生後1ヶ月ごろからうつる可能性があります。
先天性の病気の場合、誕生後しばらくたってからわかることがあります
くびの片側にしこりがある斜頚(しゃけい)、股関節の骨が外れたりずれている先天性股関節脱臼、胃の出口が狭くなっている幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)などは先天性の病気ですが、生後しばらくたってからわかることもあります。1ヶ月健診や3~4ヶ月健診でわかることが多いので、乳児健診は必ず受けましょう。また、いつも片方ばかり向く(斜頸)、おむつ替えで股を開くと片方が開きにくい(先天性股関節脱臼)、おっぱいやミルクを勢いよく吐く(幽門狭窄症)など、気になる症状があるときは早めに小児科で相談しましょう。
アレルギー体質があるとアトピー性皮膚炎になることがあります
両親、兄弟、祖父母などにアレルギーの素因を持っている人がいると、赤ちゃんもその体質を受け継いでいることがあります。アレルギー体質によって起こる病気には、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支ぜんそくがありますが、乳児期に発症しやすいのはアトピー性皮膚炎です。乳児期には湿疹が出やすいのですが、家系的にアレルギー体質が疑われるときは、早めに診察を受けて体質と関係のない乳児湿疹か、アレルギー性体質が隠れているアトピー性皮膚炎かを診断してもらいましょう。
感染症は家族からうつることが多いのですが、保育園でもらうこともあります
乳児期の生活範囲はほとんど家庭内に限られるので、赤ちゃんが感染症にかかるのは家族からうつるケースがほとんどです。風邪やインフルエンザなどの流行期には、パパやママがかからないように注意し、かかったときは赤ちゃんにうつさないようにうがいや手洗いをまめにしましょう。感染症は集団生活でうつりやすいので、保育園に通う赤ちゃんは保育園でうつることが多く、上の子がいるときは保育園や幼稚園に通うお兄ちゃんやお姉ちゃんからもらうことが多いのです。麻疹や百日ぜきなどは、乳児期の赤ちゃんは症状が重くなりがちです。予防接種は早めに受けましょう。
いつもと違う様子に気づいたら病気の始まり?と注意しましょう
病気の始まりにはふだんと違う赤ちゃんの様子やいろいろな症状があります。発疹(皮膚に出る赤いポツポツなど)、鼻水、せき、嘔吐、下痢など、ママやパパの目に見えたり耳に聞こえたりする症状は気がつきやすいでしょう。熱があるときは顔が赤い、抱っこすると体が熱くほてっていることで気がつきやすいものです。
また、とても大切なのが「いつもと違う」というママやパパのカンです。何となくきげんが悪い、ぐずったり泣いたりする、食欲がない、元気がない、眠りが浅くてすぐに泣いて起きる、あやしたり遊んでもいつものように喜ばないなどの様子に気がついたら、熱がないか体温計で測ったり、皮膚に赤いポツポツがないかなどを観察しましょう。
とくに生後6ヶ月ぐらいまでの赤ちゃんは、高い熱が出ないまま病気が進行していることがあります。きげんや元気などを一般状態といいますが、一般状態がいつもと違っているときには、診察を受けるようにしましょう。
乳児期にかかりやすい主な病気
風邪
風邪ウイルスの感染が原因です。熱、鼻水、せきなど上気道の症状が主ですが、ウイルスタイプによっては下痢を伴うことがあります。熱は出ても38度台で、出ないこともあります。体の中にウイルスへの免疫ができれば治ります。ふつうは3~4日で症状は軽快します。食欲があればミルクや離乳食はいつも通りに。熱、せき、下痢のときはとくに水分補給を心がけましょう。
突発性発疹
ほとんどの赤ちゃんがかかる病気です。風邪症状もなく突然38~40度ぐらいの高熱が出ます。中耳炎を起こしやすく、下痢を伴うこともあります。38.5度以上の場合は熱性けいれんを起こすこともあります。熱は3~4日で下がり、その後2~3日間全身に赤い細かい発疹が出ます。生後4ヶ月ごろにかかる赤ちゃんもいます。
百日ぜき
3種混合ワクチンの接種が済んでいない1歳以下の赤ちゃんがかかりやすく、百日ぜきの子どもや大人からうつります。鼻水や軽いせきで始まり熱はほとんど出ません。せきが出はじめてから3週間ほどすると、連続して出るしつこい特徴的なせきが出はじめます。
「コンコンコン」とせきが続いたあと「ヒュー」という音をたてることがあります。細菌感染なので抗生物質で治癒します。月齢が低いと命にかかわることもあります。しつこいせき症状は早めに受診しましょう。
急性中耳炎
風邪をひいたときになりやすい病気です。インフルエンザウイルスや肺炎球菌でなることも多く、鼻やのどについた細菌が中耳に入り込んで炎症を起こします。耳が痛いので赤ちゃんは手で耳をさわったり、激しく泣いたりします。横になると痛みが強く泣いてしまうので、体をたててあげるといいでしょう。熱が出ることもあり、原因になっている細菌に合った抗生物質で治療します。中耳に穴をあけて膿を出すこともあります。
湿疹
生後2ヶ月ごろから多くなります。ほっぺたに赤いブツブツができたり、白いフケのようなカサカサができたり、タイプはいろいろです。
離乳食が始まると口の周りや手のひらに出ることもあります。ほとんどはかぶれなので顔や手をいつも清潔にして、塗り薬をきちんと塗ると治ります。湿疹ぐらいと考えずに、早めに受診して湿疹に合った塗り薬を処方してもらいましょう。
アトピー性皮膚炎
ほっぺたやおでこなどに湿疹が出てきます。湿疹は赤いボツボツ、カサカサ、ジクジクなどいろいろです。かゆみが強いので赤ちゃんは手でかいたり、爪でひっかいたりします。体質がベースの病気なので家族にアレルギー体質がいるときは、早めに受診しましょう。全てのアトピー性皮膚炎が食べ物が原因というわけではありません。ほとんどはきちんと塗り薬を塗るとよくなります。自己判断で特定の食品を制限してはいけません。
ロタウイルス下痢症
2歳くらいまでに多くの赤ちゃんが経験します。ロタウイルスが原因の下痢症で、便の色が白っぽくなるので、白色便下痢症ともいわれます。嘔吐を伴うこともあります。
ウイルスを排泄するためにも下痢止めは使用しません。脱水症状を起こしやすいので、経口補水液、湯冷まし、ミルクなどこまめな水分補給が不可欠。感染力が強いので、おむつ処理に手袋を使ったり、手洗いをするなど衛生管理を徹底しましょう。
症状別対処法と病院へ行く目安
一般状態が悪い
きげんが悪い、尿が出ない、ぐずって泣いてばかりいる、おっぱいの飲みが悪い、離乳食を欲しがらない、眠りが浅くて泣いて起きる、元気がなくてぐったりしている、こんなときは熱を測ったり、発疹を観察しながら診察を受けましょう。生後6ヶ月未満の赤ちゃんは熱や発疹などの症状がなくても念のために受診するのが賢明です
熱っぽい
必ず体温計で熱を測ります。赤ちゃんの平熱は大人より高いので、37.5度以上の場合を「熱がある」といいます。39~40度近い高熱はすぐに病院へ。38度台でも食欲や元気がなくてぐったりしているときや、発疹や下痢などの症状があるときは病院へ急ぎましょう。赤ちゃんが最初に熱を出すときは突発性発疹のことが多いのです。風邪の症状がないときは、尿路感染症も考えられます。
発疹がある
熱を伴う発疹はほとんどが感染症です。突発性発疹、麻疹、風疹、水痘、溶連菌(ようれんきん)感染症、手足口病、りんご病(伝染性紅斑)、発熱と発疹が主症状の感染症はたくさんあります。感染症以外には川崎病なども考えられます。早めに受診しましょう。熱のない発疹はあせも、乳児湿疹、じん麻疹などですが、症状が強いときは受診して薬をもらいましょう。
鼻水・鼻づまり
熱を伴うときは風邪のことが多いですね。鼻水だけで熱がなければ、スポイトなどで鼻水をとってあげます。鼻づまりは口呼吸のできない赤ちゃんにはつらい症状です。部屋は加湿を充分にしてあげましょう。呼吸がしにくい、おっぱいが飲めない、眠りが浅くなるなどしますから、受診しましょう。なかにはアレルギー性鼻炎のこともあります。
下痢をしている
下痢だけで食欲、元気などの一般状態がよいときは、軽症の下痢です。極端な食事制限をせず、果汁や果物など糖分の多いものや脂肪の多い食品を避け、できるだけ普通食を与えましょう。熱や嘔吐、腹痛など他の症状を伴うときは脱水に陥る可能性があるウイルス性胃腸炎や細菌性胃腸炎が考えられます。早めに診察を受けましょう。下痢で水分不足になるので、糖分の少ない水分を十分に与えます。
吐く
授乳後におっぱいやミルクを少し吐くのは、ほとんど心配ありませんが、授乳直後に勢いよく吐いて体重が増えないようなときは幽門狭窄症のことがあります。小児科で相談しましょう。熱や下痢、発疹などの症状を伴うときも早めに受診しましょう。吐くときも水分不足が心配です。飲めるようなら少量ずつ頻繁に十分、水分を与えましょう。
せきをする
熱があったりなかったりするときは風邪のことが多いでしょう。熱を伴うときは細気管支炎や肺炎などが心配なのですぐに受診します。せきだけのときも、たんがからむようなせきが長引いたり、呼吸が苦しそうなときは病院へ急ぎます。急性気管支炎、百日ぜき、気管支ぜんそくのことがあります。たんが切れるように水分補給を心がけます。
監修/みやのこどもクリニック院長 宮野孝一先生
update : 2020.03.18
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