幼児期にかかりやすい病気
幼児期にかかりやすい病気のほとんどが感染症です。
幼稚園や保育園など、集団生活が始まるとうつりやすい病気についても知っておきましょう。
幼児期の病気 覚えておきたいポイント
集団生活が始まると感染症にかかりやすくなります
感染症は、くしゃみやせきで空気中に飛んだウイルスや細菌を吸い込んだり、その病気にかかっている人と接触することでうつります。まだ免疫がない幼児期は、いろいろな感染症にかかりやすいのです。とくに幼稚園や保育園など、子どもがたくさんいて一緒に遊んだり、子猫がじゃれあうように触れ合うところでは、うつしたりうつされたりします。感染しても、症状が出ない潜伏期のうちに人にうつす病気もたくさんあります。集団生活で感染症にかかるのは「お互い様」というわけですね。
入園したての初夏は子どもの感染症の流行期
初夏から夏にかけては風疹、手足口病、ヘルパンギーナ、伝染性紅斑(りんご病)、プール熱(アデノウィルス感染)など、子どもの感染症が流行しやすい季節です。とくに、初めて集団生活に入った子どもはかかりやすいので注意しましょう。ほとんどの幼稚園や保育園で「手足口病が流行りはじめました」など、注意情報を出してくれます。園からのお便りや連絡帳にはきちんと目を通すようにしましょう。
ウイルス感染症の大半は子ども自身の体力で治ります
乳児期は目立った症状が出ないまま病気が進行して、症状が重くなっていることがありますが、幼児期になるとウイルスや細菌に対して体が反応するようになって、症状がはっきり出てきます。とくにウイルスが原因の感染症の場合、発熱や発疹などの症状は、体がウイルスに対抗する免疫(抗体)を作っている証拠です。やがて体の中に免疫ができると症状も落ち着いて、病気は治ります。麻疹など合併症が起こりやすい一部の病気を除くと、幼児期にかかりやすい感染症の大半は、子ども自身の体力で乗り越えることができます。
高熱に伴う熱性けいれんに注意しましょう
38.5度以上の高熱が出るときに、熱性けいれん(ひきつけ)を起こすことがあります。突然、白目をむいて手足をかたく突っ張り、全身をふるわせます。意識がないので呼んでも答えません。ママはドッキリしますが、ほとんどの場合は5分以内で収まり、そのまま寝入ります。ただ、熱性けいれんは繰り返すこともあるので、必ず受診して解熱剤をもらっておきます。普通は38.5度以上にならないと起こらないので、それ以下の発熱では解熱剤は必要ありません。ただ、個人差もあるので、解熱剤の使い方は主治医の指示に従いましょう。
かかりやすい感染症
麻疹(はしか)
ママ・パパが気づく初期症状
くしゃみ、鼻水、せきなど風邪のような症状で始まります。熱もありそうなので測ると38度以上の高熱です。目やにもいっぱい出て鼻水もひどく、顔中ぐしゃぐしゃです。ほとんどの人はこの段階で病院に連れて行くでしょう。
医師が頬の内側を見ると、特徴の白っぽい斑点(コブリック班)があって、はしかと診断されます。3~4日続いた高熱が一度下がってまた出るころに、体に赤い発疹が出てきてせきもひどくなります。10日ほどで症状は治りますが、体力が回復するには時間がかかります。
ホームケア
解熱剤や咳止めなど処方された薬は指示通りに使い、水分を十分に飲ませます。泣きながら手を耳にもっていく(中耳炎)、せき込みが激しい(肺炎)、ぐったりしている(脳炎)ときは、合併症を起こしている可能性があるので、通院中の病院へ急ぎましょう。用心のために入院の指示が出ることもあります。
風疹(3日ばしか)
ママ・パパが気づく初期症状
鼻水が出て風邪かな?と思って熱を測ると38度前後の熱があります。赤くて細かいあせものような発疹に気がつくこともあります。この段階で病院に行く人が多いでしょう。
病院では耳や首の後ろのリンパ節を触って、腫れていると風疹と診断されてます。
ホームケア
解熱剤や抗生物質を使わなくても、名前の通り3日程度で治ります。熱や発疹がほとんど出ない子もいます。食欲もあまり落ちませんが、熱のある間は水分をたっぷり与えます。
もしママが妊娠中なら感染していないかどうか確かめてもらいましょう。
水痘(みずぼうそう)
ママ・パパが気づく初期症状
感染力が強いので幼稚園や保育園で流行していたら要注意。熱っぽいので測ると37~38度ぐらいです。あせもよりずっと大きい赤い発疹が出てきて、かゆがります。この段階で受診する人が多いでしょう。
発疹は赤い発疹→水泡→黒いカサブタの順に変化します。1~2週間で発疹が全部カサブタになって治ります。
ホームケア
発疹の出る場所や数には個人差があり、頭皮や口の中、肛門の周りなどに出ることもあります。最近は、早期に飲むと症状が軽くすむ薬もあります。かゆみ止めの軟膏が処方されたらきちんと塗り、かきむしってばい菌が入らないように爪を短く切ります。許可が出ていればお風呂に入れますが、発疹のところを強くこすらないように洗い、入浴後はタオルを抑えるように当てて拭きます。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)
ママ・パパが気づく初期症状
耳の下からあごにかけて痛むので、食欲が落ちたり不機嫌になってママは「あれ?」と思うでしょう。熱を測ると38度前後で、耳の下が腫れぼったくなっているのに気がつきます。この段階で受診することが多いでしょう。
腫れ方はいろいろで左右ともに大きく腫れる子、片方だけ腫れる子などいろいろです。
ホームケア
高熱のときは医師の指示で解熱剤を使います。口を動かすと痛がって食欲が落ちるので、カンタンに飲み込めるとろとろの形に調理してあげましょう。あごの腫れは冷すとラクになります。お風呂は許可があれば入浴させてかまいません。
まれに、無菌性髄膜炎(高熱・頭痛・嘔吐)、卵巣炎(女の子/おなかを痛がる)、精巣炎(男の子/おちんちんのあたりを痛がる)、また最近は両耳が難聴になることがあります。気になる症状があるときは早めに相談しましょう。
溶連菌(ようれんきん)感染症
ママ・パパが気づく初期症状
まず高熱が出るのでママ・パパはハッとするでしょう。喉が痛いので不機嫌になるし、頭痛や腹痛、嘔吐を伴うこともあります。幼児はどこが痛くても「ぽんぽん痛い」という子が多いでしょう。この段階で病院に連れていく親がほとんどです。
発熱から数日たつと、赤い小さな発疹が首、手首、足首から全身へと出てきます。発疹の出方で医師は診断がつきますが、舌が真っ赤になるいちご状舌が、この病気の大きな特徴です。
ホームケア
細菌が原因なので抗生物質を処方されます。指示通りの期間(普通は10日間ぐらい)きちんと飲ませます。症状のある間は幼稚園や保育園は休ませます(以前は「しょう紅熱」といって法定伝染病でした)。急性腎炎やリウマチ熱を合併することがあり、薬を飲み終わってから2~3週間後に検査をします。指示通り必ず検査を受けましょう。
手足口病
ママ・パパが気づく初期症状
手足口病やヘルパンギーナは夏風邪です。初夏から夏にかけて保育園や幼稚園で流行します。手のひらや足の裏に小さな水泡ができてママが気づくでしょう。口を開けさせると口の中にもできています。この段階で受診することが多いでしょう。
おしりやひざにできる子もいます。熱を測ると、ほとんどないか出ても38度以下の熱です。たいていは解熱剤などを使うことなく自然に治ります。
ホームケア
熱もなく本人が元気ならお風呂にも入れますし、ふつうに生活してかまいません。ただ、口の中の水泡が破れるとかなり痛いので、食欲が落ちます。酸味を避けて薄味に、やわらかくて冷たい食事を与えましょう。飲み物を冷たくして与え、脱水を防ぎます。まれに、髄膜炎や脳炎を起こすことがあります。頭痛、嘔吐、けいれん、眠ってばかりいる、などの症状がある場合は、急いで病院へ行きましょう。
ヘルパンギーナ
ママ・パパが気づく初期症状
高熱と喉にできる水泡が主症状です。ごはんを食べたり飲み物を飲むときに、嫌がったり泣いたり不機嫌になったら、この症状を疑います。熱を測ると38度以上の高熱が出ています。この段階で病院へ行くことが多いでしょう。
水泡が破れて潰瘍になると水も飲めなくなりますが、症状が強いわりには数日でケロッと治ります。
ホームケア
とろとろおかゆやオートミール、野菜スープなどの他、アイスクリーム、プリン、甘いゼリー(酸味はしみます)など、やわらかくて冷たい食べ物を与えます。水分も甘くて冷たいものなら飲みやすいでしょう。水も飲めなくなると脱水が心配です。早めに受診して必要なら点滴などで脱水を防ぐ治療を受けましょう。まれに、髄膜炎を起こすことがあります。頭痛や嘔吐などがある場合は、病院へ急ぎましょう。
伝染性紅斑(りんご病)
ママ・パパが気づく初期症状
ほっぺたがりんごのように真っ赤になるので、ママは気がつくでしょう。腕やふとももを見るとレース状に赤くなっていることもあります。熱はほとんどないので、受診しない人もいますが、診断してもらう意味で受診してもいいでしょう。
ホームケア
まれに関節炎などを起こすこともありますが、たいていは真っ赤なほっぺたをしているだけで元気がいいので、通園やお風呂などを含め、普通に生活できます。ただ免疫のないママが妊娠中なら要注意。胎児に影響する心配もあるので、産婦人科で相談しましょう。
病院に行くときココに注意!
うつる病気らしいときは事前に連絡しましょう
発疹の出る病気はほとんどが感染症といっていいでしょう。病院によっては他の子どもたちにうつさないように、感染症の子どもは外来時間や診察室を別にしていることがあります。事前に電話をして、ママ・パパがわかる範囲で症状を伝えると指示をしてくれます。
ママ・パパはできるだけ正確に症状を伝えましょう
赤ちゃんの体調の変化をいちばん知っているのがママ・パパです。医師の診断を助ける意味でも、できるだけ正確に症状を伝えましょう。口頭で伝えようとするとつい言い忘れることも。簡単なメモにして、保険証や母子健康手帳と一緒に出すといいでしょう。
また、発熱や発疹を伴う子どもの感染症はたくさんあります。病院が替わってもいいように、かかった病気の記録は主治医に頼んで母子健康手帳に記入してもらいましょう。
登園許可書が必要な病気もあります
手足口病やりんご病は本人が元気なら登園できますが、一定の条件を満たすまで登園できない(出席停止)病気もあります。たとえば、はしかは「熱が下がってから3日たってから」などとなっています。幼稚園や保育園によっては、登園許可書に主治医のサインが必要なこともありますから注意しましょう。
監修/みやのこどもクリニック院長 宮野孝一先生
update : 2020.03.18
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