乳児期(0歳児)に受ける予防接種
赤ちゃんへの一番の気がかりは病気のこと。
予防接種は赤ちゃんを怖い病気から守るために大切なものです。
きちんと理解して忘れずに受けるようにしましょう。
予防接種早わかり5つのキーワード
- 予防接種の目的
人から人へうつる病気を感染症といいます。感染症のなかには乳幼児期にかかると症状が重くなったり、ときには命にもかかわる病気があります。予防接種の目的はこれらの病気にかかるのを防ぐことです。病気の原因になるウイルスや細菌の毒素を弱めたり、免疫成分だけを取り出したワクチンを接種することで、その病気に対する免疫を体につけます。
- 定期接種と任意接種
予防接種には、予防接種法により接種が推奨されている「定期接種」と、個人の意思で受けられる「任意接種」があります。「定期接種」は原則、無料で受けることができます(一部、自己負担が発生する地域も)。「任意接種」は自費で受けるものですが、市区町村が独自に助成している場合もあります。
万が一、重い副反応が生じた場合、「定期接種」は国から補償されます。一方、「任意接種」は独立行政法人医薬品医療機器総合機構からの補償となり、定期接種よりも補償額が少なくなります。
しかし、任意接種は「受ける必要性が低いもの」ではありません。重い病気や後遺症を防ぐことに変わりはなく、諸外国ではほとんどのワクチンが定期接種になっています。国内でも定期接種化が望ましいと、議論されています。
- 生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイド
生ワクチンは生きた病原菌の毒素を弱めたワクチンで、その病気に軽くかかった状態にして免疫をつけます。BCG、麻疹・風疹、ロタウイルスなどが生ワクチンで、生ワクチン接種後に次のワクチンを接種するまで27日以上間隔をあけます。
不活化ワクチンは、病原体を殺して免疫成分だけを取り出したワクチンです。百日咳、ポリオ、日本脳炎は不活化ワクチンです。トキソイドは細菌が作る毒性を取り出し、その毒性を消したワクチンで、ジフテリア、破傷風ワクチンがトキソイドです。不活化ワクチン、トキソイドともに数回接種して免疫をつけます。接種後6日以上あければ他のワクチンを受けることができます。
ただし現在のこのワクチンの接種間隔の基準は、2020年10月に変更される予定です。 - 個別接種と集団接種
小児科医院など医療機関でひとりひとり受けるのが個別接種で、予防接種は基本的には個別で受けるように勧められています。集団接種は決められた日時に保健所などで集団で受けるもので、地方自治体によっては、BCGなどを保健所が行う乳児健診スケジュールに合わせて接種する場合があります。
- 単独接種と同時接種
日本では、1回につき1種類のワクチンだけを接種する「単独接種」が基本でした。しかし、ワクチンの種類が増えているため、1歳までに接種する回数は定期・任意を合わせると17回にものぼり、単独接種は困難です。
諸外国では、複数のワクチンを一度に打つ「同時接種」が一般的に行われていますが、重い副反応が増えたり、ワクチンの効果が低下する、という報告はありません。日本小児科学会は2011年1月、同時接種は必要な医療行為だと認めて、推奨しています。何本でも同時に接種することが可能です。
- 接種対象年齢と標準接種年齢
定期接種では、ワクチンごとに「標準接種年齢」が定められています。病気を効果的に予防するために、できるだけこの期間に受けるようにしましょう。
もし標準接種年齢を過ぎてしまっても、「接種対象年齢」の間なら、定期接種は公費で受けられ、万が一副反応が強く出た場合も国から補償されます。
任意接種のワクチンは、接種対象年齢が定められているものと、定められていないものがあります。
乳児期に受ける予防接種
予防接種名 | Hib |
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病気の説明 | Hib(ヒブ)は、インフルエンザ菌b型の略称ですが、流行性のインフルエンザとは違う細菌で、乳幼児が感染すると重症化しやすく、肺炎、肺血症、咽頭蓋炎、難治性中耳炎などを引き起こします。なかでも細菌性髄膜炎を発症すると、たいへんに危険。知能障害や聴力障害が残ったり、最悪死亡するケースもありえます。 |
標準接種スケジュール | 標準は、2ヶ月~7ヶ月未満で接種開始。4~8週間の間隔で3回。3回目の接種から約7ヶ月以上あけて1回。 ※接種を開始した年齢によって、回数やスケジュールが異なります。 |
薬剤の種類 | 不活化ワクチン |
接種方法 | 皮下注射 |
副反応 | 注射跡が赤くなる、発熱、不機嫌になるなど。重大な副反応は、今のところ日本で出ていませんが否定はできません。 |
予防接種名 | 肺炎球菌 |
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病気の説明 | 鼻やのどの粘膜に付着して感染。咳などによって広がります。乳幼児がかかると重症化しやすい感染症です。この菌が脳を包む膜に付くと細菌性髄膜炎を発症し、たいへん危険。肺炎、重い中耳炎、敗血症なども起こすことがあります。抗生物質が効かない耐性菌が多いので、治療も困難です。Hibよりも、死亡や後遺症の比率も少し高くなっています。 |
標準接種スケジュール | 標準は、2ヶ月~7ヶ月未満で接種開始し、27日以上の間隔であと2回。追加は1歳~1歳3ヶ月までに1回、合計4回で終了。 ※接種を開始した年齢によって、回数やスケジュールが異なります。 |
薬剤の種類 | 不活化ワクチン |
接種方法 | 皮下注射 |
副反応 | 注射跡が赤くなる、発熱、不機嫌になるなど。重大な副反応は、ないとされています。 |
予防接種名 | B型肝炎 |
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病気の説明 | 母子感染や性行為など、血液・体液を通してB型肝炎ウィルスに感染。多くの場合は自覚症状がなく自然に完治するものの、ウィルス保有者の約10%は慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんに進行します。国内のウィルス保有者は推定200万人。日本ではウィルスを保有している母親から新生児への感染予防だけが重点的に行われていますが、世界中の多くの国では定期接種になっています。 |
標準接種スケジュール | 生後2ヶ月以降。4週間隔で2回。20~24週間後に1回。計3回接種。 ※1回目接種は15週未満を推奨。 |
薬剤の種類 | 不活化ワクチン |
接種方法 | 皮下注射 |
副反応 | 接種部の痛み、腫れ、しこり、熱感など。 |
予防接種名 | ロタウィルス[1価/ロタリックス][5価/ロタテック] |
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病気の説明 | ロタウィルス胃腸炎(白色便性下痢症)は米のとぎ汁のような白っぽい下痢と、嘔吐を繰り返すのが特徴。冬に乳幼児の間で流行し、ほとんどの子どもが一度は感染します。しかし、約10%は脱水やけいれんを起こして入院、ごくまれに脳炎や髄膜炎、ギラン・バレー症候群(手足のしびれ)によって死亡したり後遺症が残ることもあります。 |
標準接種スケジュール | [1価/ロタリックス] 生後6週から、4週以上の間隔をあけて2回接種。生後24週以降は接種不可。 [5価/ロタテック] 生後6週から、4週以上の間隔をあけて3回接種。生後32週以降は接種不可。 ※1回目接種は15週未満を推奨。 |
薬剤の種類 | 生ワクチン |
接種方法 | 経口投与(スポイトで赤ちゃんの口の中に直接たらして飲ませます) |
副反応 | ぐずりや下痢、鼻水など。なお、以前に使用されていた旧ワクチンで、腸重積の発症が増えました。現在のワクチンではこのような副反応は報告されていませんが、接種後に腹痛や嘔吐、血便、腹部の膨らみ、高熱などの症状が現れたら急いで受診しましょう。 |
予防接種名 | 四種混合(DTP+IPV) |
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病気の説明 | 百日咳とジフテリア、破傷風、ポリオを予防します。特に百日咳はママから免疫をもらえないため、周囲に感染者がいると高い確率で赤ちゃんに感染します。近年、大人の百日咳が増えているため、できるだけ早く接種しましょう。 |
標準接種スケジュール | 生後3ヶ月から満1歳までに、3週~8週間隔で3回接種。3回目から6ヶ月以上の間隔をあけて、1歳~1歳半頃に4回目。 |
薬剤の種類 | 不活化ワクチン・トキソイド |
接種方法 | 皮下注射 |
副反応 | 発熱、注射跡が赤くなる、不機嫌になるなど。まれに、ショック、アナフィラキシーなどが起きることがあります。 |
予防接種名 | BCG |
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病気の説明 | BCGは結核を予防するワクチンです。国内では毎年2万人以上の患者が発生しています。乳幼児が感染すると髄膜炎を起こしたり、全身に感染が広がることがあり致死率が高いので、ワクチンが勧められています。 |
標準接種スケジュール | 生後5ヶ月から生後1歳未満までに、1回。(ツベルクリン反応は現在行われていません) |
薬剤の種類 | 生ワクチン |
接種方法 | スタンプ方式(管針法といって、ワクチンを皮膚にたらし、管針で強く押して接種します) |
副反応 | 接種後2~3週間目に接種した部分が赤くなったり、軽く化膿することがありますが、やがてカサブタになって治ります。 |
予防接種の名前 | インフルエンザ |
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病気の説明 | インフルエンザは、A型、B型、C型などいろいろな型があり、毎年流行する型が違います。高熱が出て、さまざまな風邪の症状が出ますが、単なる風邪と違って、脳炎や肺炎、喉頭炎、気管支炎、中耳炎などの合併症を起こすことがあります。 |
標準接種スケジュール | 生後6ヶ月から。13歳未満は2~4週間隔で2回。 ※流行期前にじゅうぶんな抗体をつけるためには、10月頃から接種を |
薬剤の種類 | 不活化ワクチン |
接種方法 | 皮下注射 |
副反応 | 注射跡の腫れ、発熱、だるさなど。まれにショック、アナフィラキシーなど重大な反応。流行の型が違うと効果がない。卵アレルギーがある場合は避ける。 |
予防接種を受ける時の注意
体調のよい時に受けましょう
体温計で熱を測り、いつもと同じ平熱で熱がないことを確かめましょう。また、ポリオは熱がなくても下痢をしていると免疫がつかないので受けられません。風邪の引き始めなどいつもと違う様子があったら、無理せずに体調がよいときまで待ちましょう。
母子手帳を忘れずに
接種記録を記入するので、忘れずに持っていきましょう。
薄着を心がけましょう
腕がすぐ出るような薄着を心がけましょう。集団接種では暖房などで会場が暑いこともあります。ベストやカーディガンなど、簡単に着脱できるものがいいでしょう。また、暑いと喉が渇きます。お茶を持っていきましょう。
あやして抱っこして安心させましょう
とくに集団接種の場合には、スタッフも多いし(白衣の医師が!)、ほかの赤ちゃんもいて見慣れない光景に驚きがちです。しっかり抱っこしてやさしく声かけして安心させてあげましょう。待ち時間が長くなることもあります。お気に入りのおもちゃや絵本を持っていくのもいいでしょう。
接種のスケジュールはどうすればいい?
どのワクチンをどんな順番で接種したらいいか……おすすめのスケジュールは、地域の病気の流行状況や、市区町村の制度、子どもの体調によってもちがいます。迷うときは、かかりつけの小児科医に相談を。以下のサイトも参考になります。
監修/みやのこどもクリニック院長 宮野孝一先生
update : 2020.06.30
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