体重はどの位変化する?羊水・胎盤の重さは?
妊娠中期を過ぎるとおなかの赤ちゃんの成長とともに、体重はぐんぐん増えていきますね。
「増えすぎは注意」と言われる一方で、日本の妊婦さんのやせすぎが近年指摘されています。適度な体重増加とはどれくらいなのか、知っておきましょう。
監修者プロフィール
井上裕子先生
井上レディースクリニック 理事長・院長
医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本乳癌学会認定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、母体保護法指定医師。
診療のかたわら、思春期から更年期の様々な女性に対しての講演活動、また、雑誌などに、出演、監修、執筆するなど多方面で活躍。
著書に「産婦人科の診療室から」(小学館)、「元気になるこころとからだ」(池田書店)、「赤ちゃんとお母さんのための妊娠中のごはん」(池田書店)など。
現在は、リボーンレディースクリニック 理事長、NPO法人マザーシップ 代表を兼務。
妊婦さんの体重管理とは?
つわりの時期が過ぎると、妊娠前よりおなかがすくものですね。おなかに赤ちゃんがいるので当たり前なのですが、妊婦さんにとって適度な体重増加とされているものがあります。
昔は「妊娠中は2人分食べる」と言われていたのが、少し前までは「妊婦さんの安産のために体重管理は厳しく、+10kgぐらいまで!」と言われていたり、何が正しいのか混乱してしまう人もいるかもしれません。
科学や情報の発達で、体重増加の目安は変わるので、みなさんのお母さんの時代や、先輩ママから聞いていたことと少し違うかもしれません。特に、2021年にも厚生労働省の発表で妊娠中の体重増加の目安が変わったため、「1人目のときと違う!」という経産婦さんもいると思います。現代の医学と食生活にあった、適度な量と、栄養バランスが大事なのです。
体重増加のうちわけは?
赤ちゃんは3kg前後で産まれてくるのに、もっと体重が増えるのはなぜなのでしょう?
妊娠中の体重増加にはちゃんと理由があって、そのうちわけは下記の通りと言われています。
- 胎児の重さ→約3kg
- 胎盤の重さ→約0.5kg
- 羊水の重さ→約0.5kg
- 妊娠によって増加する子宮・乳房・血液などの重さ→約4kg
上記を合計すると「約8kg」ということになりますね。
これにプラスして妊娠によるホルモンバランスの変化で増える脂肪や水分の蓄積があります。
体重が増えすぎるとなぜいけないの?
体重増加による弊害には下記のようなことがあります。
- 妊娠中に妊娠高血圧や妊娠糖尿病などの合併症をおこしやすくなります。
- 分娩時の微弱陣痛の原因になることがあります。
- 脂肪がつきすぎると産道が狭くなったり、赤ちゃんが大きくなりすぎることで難産になる傾向があります。
体重が少なすぎるのも問題視されています
一方で、近年日本の妊婦さんが指摘されているのが、体重の増えなさすぎ。日本人はもともと比較的、体が小さいことに加え、「小さく産んで大きく育てる」ことが、安産神話のひとつとされてきてしまったのです。でも極端に抑えすぎると、低出生体重(2500g未満)で赤ちゃんが産まれる原因にもなり、日本は低出生体重児の割合が2004年以降9.4%前後もいることが問題視されてきました。
なにごとも適度であることが大切ですから、体重管理に躍起になりすぎて、必要な栄養まで抑えることはしないように心がけたいものですね。
妊娠中に適度な体重を保つには?
それでは具体的な体重の管理について見ていくことにしましょう。体重増加の目安が多少変わっても、体重管理のためにやることは変わりません。自分の体重の増え方に応じてトライしみてください。
ポイントは、食事は量よりバランス。プラス、適度な運動です!
臨月時の体重増加の目安は?
2021年に厚生労働省が出した、妊娠中の体重増加指導の目安は下記の通りです。2006年に厚生労働省が出していた体重増加の目安より、やせ型の人で3kg程度上限が増えています。今までほど体重管理がきびしくなくなったとも言えます。
これはBMI(Body Mass Index)という体格区分によって分類しています。
妊娠前の体格 | BMI | 体重増加指導の目安 |
---|---|---|
低体重(やせ型) | 18.5未満 | 12~15kg |
普通体重 | 18.5以上 25.0未満 | 10~13kg |
肥満(1度) | 25.0以上 30.0未満 | 7~10kg |
肥満(2度以上) | 30.0以上 | 個別対応 (上限5kgまでが目安) |
適度な体重管理をするには?
こまめに体重測定をする
妊娠していないときも同じですが、体重管理で最も大事なのは、現状を知ることです。定期的に、少なくとも1週間に1回は体重計に乗って、体重の変動を記録しておきましょう。できればグラフなどを作って、目に付くところに貼っておくといいですね。増えすぎも、増えなさすぎもこれでチェックできます。
1週間で300g程度の増加に
もとの体格にもよります、1週間で増えてもよい体重は多くて300gが目安。そんなに細かいチェックは難しいと感じる人は、1ヵ月に1kgまでを目安に管理していきましょう。
つわりの時期が終わったら3度の食事をきちんととり、間食を減らす
おなかがすくからと、ダラダラ間食するのはやめましょう。食事の時間にできるだけきちんと栄養をとるようにしましょう。
夫やパートナーの帰宅が遅く、夕食を一緒に食べるために「待っている間の我慢がつらい!」という人は、3食分を4回に分けて食べることがおすすめです。夕方におやつ程度の軽食をとって、夕食には夫やパートナーより軽めにおさえて食べましょう。
量よりもバランスを考えて
糖分、脂肪分は体重増加につながるので適量に。塩分は妊娠高血圧の原因になったり、主食の食べ過ぎにつながるのでできるだけ少なめにしましょう。母体のためにも赤ちゃんのためにもバランスが大切ですから、野菜を多めにして満腹感を得て、タンパク質、鉄分、カルシウムの摂取も心がけましょう。
適度な運動を心がける
「妊婦は安静に」と言われますが、適度な運動は必要です。歩くことは母体にも胎児にもなんの悪影響もありませんから、安定期に入ったら毎日1時間程度のお散歩やウォーキングはおすすめです。日常的な家事ももちろんOK。
最近は、体重が適正であっても、筋力が弱いことで難産になる人も増えているそう。適度な運動はカロリー消費だけでなく、筋力をつけることで、お産への備えにもなります。
ウォーキングや家事をしても体重が増え続ける人は、医師の指導のもとでマタニティスイミングやマタニティビクスを試してみるのもよいかもしれませんね。
「体重管理って大変…」と思ってしまいがちですが、ママと赤ちゃん2人分の大切な健康管理です。
「大事なおなかの赤ちゃんが、すこやかに育って産まれてきてくれるため」と思って、赤ちゃんと一緒に二人三脚でやるつもりになれば、体重管理も楽しくなりませんか?
監修/井上レディースクリニック院長 井上裕子先生
update : 2022.05.16
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