産婦人科・産院の選び方のポイント
妊娠かな?と思ったら、まずは妊娠検査薬で確認する人が多いと思います。妊娠検査薬で陽性が出ても、子宮外妊娠などの場合もあるため、正確な診断のためには産婦人科などの診察を受けます。いざ診察へ!と思っても、産婦人科・産院にもいろいろ種類があるので、選び方も迷ってしまいますよね。しっかり情報をチェックして、自分に合った施設を見つけましょう!
監修者プロフィール
井上裕子先生
井上レディースクリニック 理事長・院長
医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本乳癌学会認定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、母体保護法指定医師。
診療のかたわら、思春期から更年期の様々な女性に対しての講演活動、また、雑誌などに、出演、監修、執筆するなど多方面で活躍。
著書に「産婦人科の診療室から」(小学館)、「元気になるこころとからだ」(池田書店)、「赤ちゃんとお母さんのための妊娠中のごはん」(池田書店)など。
現在は、リボーンレディースクリニック 理事長、NPO法人マザーシップ 代表を兼務。
産婦人科のある病院の種類
産院を選ぶにあたって、まずは、赤ちゃんを産むための施設にはどんな種類があるのか、それぞれの長所・短所を知っておきましょう。
総合病院
産婦人科以外にもほとんどの診療科が揃っている病院です。大学の医学部付属の大学病院もここに含まれます。
ベッド数が100床以上あり、医師が多く、設備が整っています。
○長所:小児科や内科が併設されているので、合併症がある場合や、分娩時に緊急事態が起こった場合に、すみやかに適切な処置を受けることができます。
△短所:医師が多いだけに、毎回同じ先生に診てもらうことが難しいことがあります。患者さんの人数も多いため、診察の際、待ち時間が長い一方で診察時間は短いということがあるようです。大学病院の場合、研修機関を兼ねているため、診察や分娩に学生や研修生が立ち会うケースも多くみられます。
- ※最近は少子化により、総合病院でも産科を閉鎖したり、分娩数の制限を設けている病院も少なくありません。産科があるか、分娩までできるかを事前に確認した方が安心ですね。
産科・産婦人科専門の診療所
病院とはベッドが20床以上、医院は20床未満の医療機関です。医師の人数、設備は病院・医院によってさまざまですが、総合病院ほどではないところが多いようです。
○長所:産婦人科のみ扱っているので、同じ担当医に初診から産後まで診てもらえるケースが多いようです。妊婦健診では4Dエコーなど、親切に診てもらえるケースが多いです。入院施設は清潔でプライバシーが守られている個室が多く、入院中と退院後の助産師によるケアを積極的に行うなど顔見知りのスタッフが増えるため、ちょっとした心配事を相談しやすいというメリットもあります。
△短所:合併症や分娩時の万一などリスクをともなう妊娠・出産の場合、産科以外の医療処置が必要となるため、提携している総合病院へ転院せざるを得ない場合があります。
助産院
病院とは異なりますが、助産師の資格を持つ人が、10床未満のベッド数で入院・分娩の施設を持って開業しているのが助産院です。自然分娩を志向する妊婦さんたちに、助産院での出産も昔のように見直されています。
○長所:家庭的な雰囲気のなか、精神的なアドバイスやフォローを受けられます。また、陣痛からずっと付き添ってみてもらって出産に臨めます。
△短所:医師がいないため、一切の医療行為ができません。そのため、助産院で出産するためには、リスクのない妊娠・正常妊娠経過であることが条件となります。また、分娩時に医療行為が必要な分娩経過になったときは、提携する医療施設のアドバイスを受けます。総合病院などとの提携があるかを必ず事前に確認しておきたいですね。
周産期センターとは?産婦人科とどう違うの?
近年耳にすることが多くなった周産期センター。正しくは「周産期母子医療センター」といいます。周産期とは、妊娠22週から生後7日未満までの期間を指し、妊娠中から分娩後まで妊婦さんと赤ちゃんの両方の健康を見守る医療機関です。つまり産科と新生児医療を担当する小児科が連携して母子を見守る医療体制が整っている医療機関として、総合病院などが担っている役割のことです。
周産期母子医療センターは、「より高度な医療を扱う」「より緊急性の高い医療を行う」「研修医など医療スタッフの教育を行う」「医学の進歩のための研究を行う」という4つの目的をもった医療機関です。
周産期母子医療センターにはNICU(新生児集中治療管理室)とM-FICU(母体・胎児集中治療管理室)を備え、よりリスクの高い妊娠に対する医療及び高度な新生児医療を行う「総合周産期母子医療センター」と、比較的高度な医療行為が行える「地域周産期母子医療センター」があります。
近年、妊産婦の高齢化などにともない、合併症などのハイリスク妊娠が増えていることから、都道府県ごとに周産期医療の体制整備が進められています。前述のような、従来の一般病院や診療所、助産所はリスクの低い正常分娩を扱う場所として位置づけられ、リスクの高い妊産婦さんはリスクの内容や度合いによって、「地域周産期母子医療センター」または、「総合周産期母子医療センター」に搬送されるよう、連携体制が整えられています。
どの医療機関が周産期センターとされているかは、お住まいの都道府県のホームページで「周産期医療」で検索すると情報を得られます。
セミオープンシステムとは?
セミオープンシステムとは、診療所と病院や周産期センターが連携しているシステムのこと。妊娠中の妊婦健診は一定の時期まで自宅に近い診療所で受け、出産は設備の整った病院や周産期センターでできるというものです。
産科医不足により出産施設がない診療所があったり、上記のようにハイリスク妊娠になった場合に、セミオープン先の医療機関で専門分野の医師に対応してもらえるメリットがあります。一方で、妊婦健診で慣れ親しんだかかりつけ医ではない医師による分娩に不安を感じるデメリットもあります。
産婦人科・産院を選ぶ際の、選択肢のひとつとして考えてみると良いですね。
産婦人科・産院の探し方
少子化の影響で産院の数が減っているのは残念なことですね。でも、いまは知りたい情報が探しやすくなっている世の中です。 さまざまな情報ツールを駆使して自分に合った産院を賢く見つけましょう!
インターネットで探す
まずは、スマホやパソコンを使ってネットで検索してみましょう。検索サイトで「産婦人科」と入力すると、さまざまな「産婦人科を探す」サイトを見つけられます。そこでお住まいの地域名で検索すれば、近所にある産院を知ることができ、クチコミで評判も見られます。
今はほとんどの医療機関が自院のホームページをつくっているので、検索して気になった産院は、ホームページをチェック。入院や分娩にかかる費用がわかるのはもちろん、医師の考え方や施設の写真なども掲載されていることが多いので、より具体的にイメージできると思います。
また、SNSで産婦人科選びについての体験談を投稿している先輩ママも多いので、「#産婦人科選び」などで探してみるのも手です。
自分の足や口コミで探す
産院はできれば自宅の近くが何かと安心で便利。近場の情報を得るには足で探して、目で確かめるという手もあります。ネットで検索した産院も、実際に見てみると印象が変わることもあります。また妊娠・出産を経験している先輩ママの友人や知人が近所にいる場合は、直接評判を聞いたり、紹介してもらうのが近道ですね。
産婦人科・産院を選ぶポイント
情報を収集していくつかの産院をピックアップしたら、その中から自分に合った産院を選びます。産院によって特徴から費用までさまざまなので 事前に細かくチェックしたいものです。では、どんな基準で選んだらよいのでしょう?
できるだけ自宅に近い場所で選ぶ
最新の施設など、雑誌やテレビで紹介される産院も少なくないため、「あの産院で産めたら・・・」と思うこともありますよね。けれど、出産までは健診で何度も足を運ばなければなりませんし、陣痛が予定外に来るケースもあります。妊娠月数とともに体も重くなってきますから、自宅から遠い場所ではすぐに訪ねるのも大変です。できるだけ自宅に近い場所や、自宅からの交通の便がよい産院を選んだ方が安心できますね。
里帰り出産をする場合
里帰り出産を希望する人は、健診で通う自宅に近い産院と、分娩する帰省先の産院の両方を探して、双方にその旨を早めに伝えておきましょう。
<健診で通っている産院で>
- 里帰り出産をすることを決めたらできるだけ早めに報告しましょう。
- 出産する産院名と連絡先を伝えておきましょう。
(出産する産院に経過を連絡してくれる場合があります) - 里帰りする際、出産する産院宛の今までの健診経過を連絡する書類をもらいましょう。
<里帰り出産する病院で>
- 里帰り出産をすることを決めたら、できるだけ早く帰省先近くの産院をさがし、分娩の予約を入れられるか確認しましょう。
- 妊娠9ヵ月の後半(34週)くらいには、里帰りし、出産する産院の健診を受けましょう。
口コミなどの評判で選ぶ
探し方でもお伝えしたように、先輩ママに評判を確認しておくと安心です。先輩ママたちのリアルな口コミは、体験した人でないとわからない情報を知ることができるのでとても大切。ネットで見られる口コミ情報も便利ですが、フェイク書き込みもある時代なので幅広く多くの意見を見て判断したいものです。また、口コミはどんなお産をしたかによっても捉え方が変わってきます。みなさんご自身が産院に求めるものによってどう判断するかを冷静に考えてみてください。
また、日頃ほかの疾病などで病院に通っている人は、担当医に産科や産院の推薦をしてもらうのもよいですね。
施設の特徴や分娩方法で選ぶ
「産院の種類」でお伝えしたように、いろいろな産院のタイプがあります。また同規模の機関でも、施設の雰囲気はそれぞれです。
分娩方法もひとつではなく、夫の立ち会い出産ができるところとできないところがあるなど、産院の方針によってさまざまです。それらを事前にしっかり確認してから選びたいものですね。
必要な費用で選ぶ
出産費用は保険がきかないため、入院・出産の費用は数十万円かかり、出産する施設によって費用はまちまちです。健康保険に加入している場合は出産育児一時金として子どもひとりにつき42万円が支給されますが、それでまなかえる産院もあれば、差額でさらに数十万円を自己負担しなければならない産院など千差万別。費用が高い施設ではホテル並みのサービスが受けられたり、個室を選べるなど値段なりの付加価値があります。費用の安さを重視するか、費用はかかってもゆったりとした気分で入院期間を過ごしたいかなど、出産は人生でとても大切な経験。高い/安いだけでなく自分自身の価値観で選ぶとよいでしょう。出産を機会に、生涯の「かかりつけ医」としておつきあいが続くこともあります。
産院選びのチェックリスト
施設の規模や評判は、情報収集の段階でわかることも多いですが、最終的には自分との相性を自分の目と耳で判断することが一番です。初診に行く前に電話で尋ねたり、診察を受ける前に実際に訪ねて確認するのもひとつの手です。
その際に確認しておきたい内容について、以下を参考にしてください。
質問でチェックできる内容
- 分娩方法はどのような方法か? また、選べるか?
- 分娩・入院費用はどのくらいかかるか?
- 入院は個室か、大部屋か?
- 出産後、母子同室か、別室か?
- 入院する部屋の設備、雰囲気は? 見学が可能か?
- 夫の立ち会い出産は可能か? 可能な場合の条件は?
- 母乳主義か、人工栄養か?
- 母親学級、両親学級は行っているか?
- ※新型コロナウイルス感染症対策で健診時の付き添いや、出産時の立ち会い、入院時の面会を制限している施設も少なくないので、それもチェックしておきましょう。
見学や下見が可能な場合、チェックしたい内容
分娩室や入院する部屋はどんなところか気になるものですね。産院の候補がいくつか決まったら、見学を受け入れているかどうかを確認してみましょう。お産などで立て込んでいる場合や感染症対策によって、見学ができないこともあるようです。
- 施設の様子、清潔感はどうか?
- 受付やスタッフの対応はどうか?
- 産院の周辺環境はどうか?
先輩ママの成功体験談
ムーニーサイトのアンケートで、産院選びに満足できた先輩ママの声をご紹介します!
北海道:まるこさん
「妊娠がわかった後、すぐに悪阻が始まり、通院の楽な評判のよいクリニックにしました。悪阻は一時的なものとは言いますが、通院中に何度も吐きそうになったので、通院が楽なことも頭に入れた方がいいと思います」
大分県:ふみママさん
「私は親戚のお姉さんに勧められた産院で出産しました。その産院の助産師さんは「腰をマッサージしてくれるのがとても上手!」ということでした。とくにマッサージには興味なかったのですが、いざ産むとき、激しい痛みと闘っている私を励ましてくれたのは、そのマッサージだけでした。その時になって、マッサージの大切さを実感しました。こういうことはホームページやパンフレットには書いていないと思うので、候補の産院で出産したことのある方に聞いてみるのが大事だと思います」
茨城県:きなこみるくさん
「最初は費用を抑えるために総合病院を予約していましたが、病院の環境はまさに病院…という感じ(当たり前ですが)で、行くのが億劫でした。ここに1週間近く入院するのかと思うと、みんなが経験することと思いつつも、ストレスでした。妊娠後期に突入して出産の不安や里帰りによる実家でのストレス等々…気が滅入りそうな中、インターネットで産院を調べたら、とっても素敵な個人病院を発見!全室個室でホテルのようなおしゃれさ…エステやレストランシェフによる食事…。
産院を途中で変えることはとても勇気のいるものですが、決心して電話しました。初めてその病院を訪れた時の感動は、今でも忘れません!とってもきれいで、親切で、さまざまな気配りがうれしかったです。料金は20万円ほど高くなりましたが、お金にはかえられないものを得られました!一生に数回の出産だし、何より産後の精神的なゆとりにつながりました。今自宅で子どもと楽しくすごせ、子育ても無理なくストレスなくできています」
先輩ママの失敗体験談
産院選びに後悔した先輩ママたちの声も参考にしてみてください。
神奈川県:あずままさん
「私は合計3ヶ所の産院にお世話になりました。ひとつ目は、出産できなかったので健診のみ。ふたつ目は出産できる産院を紹介してもらいましたが、この産院が私にはあっていなくて、初診で「母の自覚がない」「納得しているように思えない」などの言葉を浴びせられて、泣きながら帰宅したのを覚えています。
それでも我慢してその産院に通おうかと思ったのですが、ちょうど引っ越しすることになり、引っ越し先の近くの産院で出産しました。無事に元気な子が生まれ、あのとき我慢しなくてよかったと思います。1度受診してみて、少しでも悪い印象が残ったのならば、思い切って別な産院にも診てもらうことをおすすめしたいです。」
石川県:たままさん
「総合病院は安かったけれど部屋が個室ではなかったので、夜、母子同室で自分の赤ちゃんが泣くと他の赤ちゃんまで起こしてしまうんじゃないかと、必死に泣き止ませていました。なので入院中はゆっくり休むことができませんでした。高くても個室を勧めます。母子同室も無理にしなくてもいいと思います。」
愛知県:たいがのんさん
「市内で一番人気のある個人医院で出産しました。外来は混んでいたけれど、新しくてきれいな施設で、先生も複数いてよかったです。ヨガなど教室もありました。ただ出産したら、病棟のスタッフは忙しくて怖くて、授乳や沐浴などの指導は集団のみ。不安なまま退院しました。もっと入院中の指導をきちんとしてるか、確認しておけばよかったです。」
監修/井上レディースクリニック院長 井上裕子先生
update : 2022.06.14
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