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バースプランとは?具体例や書き方のポイント、メリットまで解説

妊娠・出産は、人生において財産にもなる貴重な経験です。「初めてのことでわけが分からないまま出産した」「何回経験しても納得いかないお産になってしまう」といったことがないように、バースプランを立てましょう。多様なバースプランを選択できる葛飾赤十字産院の鈴木俊治副院長に、基本的なバースプランを考えるときのポイントや、「初産」「経産」「帝王切開」別の書き方例などを教えていただきました。

監修者プロフィール

鈴木俊治副院長
葛飾赤十字産院

産婦人科医。周産期医療が専門。1988年に長崎大学医学部卒業。日本医科大学産婦人科学教室、米国LomaLinda大学留学、東京臨海病院産婦人科部長などを経て、2006年より現職。

バースプランとは?

どのような出産をしたいのか、自分なりの出産計画を立てることです。バースプランは、希望する出産について産院と相談するために用いられます。

用紙に書いて提出する場合が多く、産院によって書式は違います。提出や相談のタイミングも、妊娠中期~出産当日などさまざまです。また、決まった書類はないので、妊婦健診や面談でバースプランを相談する産院もあります。

「慌ただしい診察では話しづらいことが多いので、バースプランを活用するとよいでしょう。医師、助産師、看護師と、妊婦さんとの情報共有に大変便利で、『そんな希望があるとは聞いていなかった』という事態をお互いに避けることができます。また、妊婦さんが出産について自分なりのイメージを持てれば不安が軽くなり、納得できるお産に近づけることができます」と、鈴木先生は医療者と妊婦さんの両方に多くのメリットがあることを実感しています。

分娩方法、設備、通院しやすさ、スタッフ、パパや上の子が通いやすいか、産院独自のサービスなど、チェックポイントはたくさんあります。情報を集めてパパともよく相談していただきたいですが、最初に決めたいのは産院と出産方法です。

産院によっては「特にバースプランに対応していない」「無痛分娩や水中出産などは対応せず、決まった分娩法しかできない」などというところもあるので、事前に確認することから始めましょう。

バースプランの書き方は?

「バースプランは、希望することや不安な気持ちなど、なんでも書いてかまいません。医師は、『それはできます』『その希望には添えないけれど、こちらの選択肢はいかがですか?』『不安になったら助産師が力になります』など、ひとつひとつ話し合って、できるだけ妊婦さんの希望に合うお産に近づけるお手伝いをします」(鈴木先生)

多くの病院では専用の記入用紙が用意されているので、項目に沿って書けば難しいことはありません。バースプランの主な記入例を紹介するので参考にしてください。

出産方法の記入例

  • 自然な陣痛を待ち、経腟分娩を希望します
  • 分娩台を使わず、布団の上で産みたい
  • 陣痛が始まってから産後回復するまで、同じ部屋で過ごせるLDR室がよい
  • 立ち会い出産がしたい
  • 帝王切開はできるだけしたくない
  • ヨガや瞑想を取り入れたソフロロジー法で産みたい
  • 水中出産をしてみたい

陣痛時の過ごし方についての記入例

  • 好きな音楽をかけたい
  • 家族に、できるだけそばにいて欲しい
  • 廊下などを歩いて、お産を早めたい
  • お気に入りのクッションを持ち込みたい
  • 夫に陣痛を和らげる腰のさすり方などを教えて欲しい
  • 他の妊婦さんがいない部屋で、ひとりで過ごしたい
  • 陣痛があまりにひどくてパニックにならないか心配
  • 呼吸法をリードして欲しい
  • お産の進行具合を教えて欲しい

分娩時の対応についての記入例

  • できれば会陰(えいん)切開はしないで欲しい
  • 自然な陣痛を待ちたいので、陣痛促進剤は使ってほしくない
  • 出産後、胎盤を見たい
  • へその緒は夫に切って欲しい
  • 吸引分娩、鉗子(かんし)分娩はなるべくしたくない
  • 赤ちゃんの頭が子宮から出てきたとき、触らせて欲しい
  • 出産の様子をビデオ撮影したい
  • すぐに母乳を飲ませたい

バースプラン
おすすめの書き方の例はこちら

ここでは、特に「初産」「経産」「帝王切開」の記入例を紹介します。

1.初産のバースプランの書き方

両親学級や書籍などから得た知識をもとに、分からないこと、確認したいこと、希望することしないことなどを、パパの意見も交えて書いてください。「初めての妊娠は、特に夢がふくらむと思います。たくさんの希望があってよいのですが、不足の事態が起こり希望に添えないこともあるので、すべての希望に固執しない柔軟に対応する気持ちも必要です」(鈴木先生)

  • 陣痛が怖いので、陣痛室でできるだけ助産師さんにそばにいて欲しい
  • 母乳育児を目指しているので、妊娠中から母乳指導して欲しい
  • 家族がそばにいると心強いので、立ち会い分娩を希望します
  • 痛みに弱いので無痛分娩を希望します
  • 体力がないので、産後は母子別室がいい
  • 分からないことが多いと不安なので、できるだけ説明してください
  • 出産費用は○円内におさめたい

2.経産のバースプランの書き方

前回の出産で、よかったことや反省したことを踏まえて、「次はこうしたい」「これはしたくない」と具体的に書きやすいでしょう。経産婦さんの留意するポイントは、上の子です。上の子を出産にどのように参加させるか、産前産後のフォローをどうするかなどをよく考えておくことが大切です。

  • 前回は切迫早産で入院に。上の子のために、入院にならない対策があれば知りたい
  • 上の子がいるので、出産や入院中のお世話が心配。どうしたらよいか相談に乗って欲しい
  • 前回、義理の母が分娩室に入ってきましたが、今回はパパだけにして欲しい
  • 前回は帝王切開でしたが、できれば自然分娩をしてみたい
  • 尿漏れがひどいので、入院中から骨盤を引き締める指導をして欲しい
  • 上の子にへその緒を切らせてあげたい
  • 上の子の夏休みに合わせて計画分娩したい
  • 母子同室で、上の子もひと晩宿泊させたい
  • ひとり目は母乳の出が悪かったので、母乳育児の無理強いをしないで欲しい
  • 上の子が心配なので、なるべく早く退院したい

3.帝王切開のバースプランの書き方

「現在の帝王切開率は、全出産の約20%です。妊娠中のトラブルなどで突然決まることも多いため、あわててしまいがちに。帝王切開になる可能性があることも頭に入れてバースプランを立てておけば、いざというとき冷静に対応できるでしょう」と鈴木先生は話します。

  • 立ち会いができるなら夫にそばにいて欲しい
  • 赤ちゃんを取り出す瞬間は、教えて欲しい
  • 産後は、どこがどのように痛むのか事前に知りたい
  • 痛みに弱いので、産後は痛み止めの薬を処方して欲しい
  • 術後の傷跡がケロイド化しないか心配
  • 手術室で、好きな音楽をかけて欲しい
  • 赤ちゃんを取り上げたら、すぐに抱っこしてみたい
  • 自然分娩でないと、母乳がきちんと出るか不安
  • 保険のことも含めて、分娩費用について教えて欲しい
  • 傷の痛みが落ち着くまで、赤ちゃんとは別室で過ごしたい

バースプランを書くときは、パパと相談しながら

バースプランは、つい妊婦さんだけで考えてしまいがちですが、「ぜひ夫とふたりで考えましょう」と鈴木先生は提案します。「妊婦さんが、夫に対してどのようなことを希望しているのか分かると同時に、夫がどこまで応えられるか、夫婦でよく話し合うことができます。夫自身の希望も明確にするために、両親学級へ参加する機会が増えるかもしれません。夫婦で出産に対する意識を高めるのに、バースプランはよいきっかけになります」

バースプランで赤ちゃんを迎える準備を

「赤ちゃんを安心して迎える準備として、バースプランは必要不可欠です」と、鈴木先生。「バースプランを見れば、医師は必要な情報を提供しやすくなります。産院の体制、妊娠経過やおなかの赤ちゃんのトラブルなどによって希望通りにいかないこともありますが、事前に相談することで妊婦さんとの理解を深めやすくなることが最大のメリットになります。バースプランは、産院スタッフと信頼関係を築くコミュニケーションツールと考えるとよいでしょう」

監修/葛飾赤十字産院 鈴木俊治副院長

update : 2018.07.06

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