生後1ヶ月の成長発達「追視の、ここがすごい!」
生後1ヶ月…。おっぱいをくれるママの顔、抱っこしてくれるパパの顔もわかってきたようです。目の前のモノをじっと見つめて、動くと追いかける「追視」も発達中。これぞまさに強い好奇心の現れです。赤ちゃんにみなぎる力強いパワーをもう一度発見して、かみしめて、味わって、感動! 子どもの体と心の発達研究の第一人者、榊原洋一先生の解説付きです。
監修者プロフィール
榊原洋一先生
お茶の水女子大学名誉教授
医学博士。1976年東京大学医学部卒業後、ワシントン大学小児神経研究部、東京大学医学部附属病院小児科などを経て、お茶の水女子大学理事・副学長に。2017年より現職。「子ども学」の研究所「チャイルド・リサーチ・ネット」所長、日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達小児科学、特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。今後の活動について、「発達障害には様々な誤解があるので正しい理解を広げていきたい」と語る。『オムツをしたサル』『アスペルガー症候群と学習障害』など、著書多数。
これなんだ? じっと見つめる、追いかける
はじめまして、ママの顔
こんにちは、パパの顔
「生まれたときから見ていたでしょう?」
そういうかもしれないけれど
いままでぼんやりしていた
それが目の前20~30センチくらいが
だんだん見えるようになってきたんだ
おっぱい ミルクを飲ませてくれるママ
「ただいま」とのぞき込むパパ
いろんな顔があることは まだわからないけど
おもしろいからじっと見つめる、見つめる
おまけに目の玉を
右から左へ 上から下へ 動かして
モノを追いかけられるようになったよ
「あら、起きているの?」
声がするほうに目をキョロリ
ママがやってきた あ、パパもきた
目の前30センチに
カラフルなガラガラが登場
「こっちだよ~」
ママが パパが 右へ左へ
ゆっくり動かしていく
目玉で追いかけっこ
遊んでくれているらしい
ちょっと付き合ってあげようかな~
Dr.サカキハラの「追視の、ここがすごい」
生後1ヶ月ごろの視力は、0.05くらい。よく見えるのは、目の前20~30cmくらい。ちょうど授乳時のママの顔がわかる距離です。ママの顔、パパの顔も、だんだん区別できるようになってきます。
目の前に見えたモノを追いかける「追視」は、生まれたばかりでもできますが、まだとてもゆっくり。それが、1ヶ月、2ヶ月と月日を追うごとに少しずつスピードアップ。2ヶ月半くらいになると、かなり速い追視ができるようになります。
これはものすごいことです。情報を積極的に収集しようとする強い好奇心の現れなのです。
視力でキャッチする情報だけではありません。おっぱい・ミルクの味、乳首を口に含むときの舌の感覚、抱っこされているときの揺れる感覚、お風呂に入っているときの肌ざわり、キッチンから流れてくるごはんのにおい、聞こえてくる人の声、テレビの音、風の音、車の音……。
いまはまだ何もできないように見えるけれど、赤ちゃんは五感をフル動員して、情報を収集しています。
その結果、1年ほど経つと、立ってよちよちと歩くまでになり、言葉を話す子も出てきます。顔の表情を読んで、喜んでいるのか、怒っているのか、理解できるようにもなるのです。
赤ちゃんのすごいところは、ただ見ているだけ、聞いているだけで、こうしたことができるようになる、ということです。
大人になると、こうしたことはできなくなります。英語が嫌いな人は英語が身につきません。英語を勉強したくないからです。でも、赤ちゃんは、だれかが教えなくても、英語がまわりにあれば、英語がしゃべれるようになる。日本語があれば、しゃべることができるようになる――。
赤ちゃんとは、そういう強い好奇心と情報を収集する存在なのです。からだを大きくしながら、同時に、言葉、運動能力、社会性を身につけていく――。
「赤ちゃんはゆりかごの中の科学者」といった人がいます。まさに尊敬すべき存在なのです。しかし、赤ちゃんが科学者だからといって、完璧な親でいる必要はありません。「教育的なことをなにかしてあげなくちゃいけない」などと思わなくていいんです。
教えなくても、赤ちゃんは自ら情報収集しているからです。
update : 2017.09.18
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