会陰マッサージ! 切開・裂傷から会陰を守るアロマオイル湿布
妊娠中期を過ぎると、ちらほら耳にしはじめる「会陰マッサージ」。お産をスムーズにするためのものですが、見てビックリ。腟に自分の指を入れてグイグイと押し広げる、と、怖いことが書いてある……。なんだか、痛そうだし、衛生面も気になるし…と、おののくプレママに朗報!「たったそれだけ?」「超カンタン!」な会陰マッサージがあるのです。アロマを使った方法を伝授している助産師の浅井貴子先生にレクチャーしていただきます。
監修者プロフィール
浅井貴子先生
助産師・マタニティアロマセラピスト
新生児訪問指導歴約20年以上のキャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行うほか、母親学級、マタニティースイミング、アクアビクスのコーチとしても活躍。タレント・大島美幸さん(森三中)のアロマ指導をしたことでも知られる。病院勤務時代、プレママのむくみや腰痛、肩こりなどの悩みに対して、「妊娠中だからしょうがない」「出産すれば治るからがまんしましょう」としか言えない医療の限界に直面。残念そうな表情を浮かべていたプレママたちを笑顔にしたいと志し、2002年から『プレママ★アロマ教室』を主宰。東京・調布市で隔月開催している教室は、キャンセル待ちが出ることもある人気の講座。
会陰マッサージのメリット・効果とは?
会陰マッサージは、妊娠中に会陰をやわらかく、しなやかにしておくことで、お産をスムーズにしたり、産後の負担をやわらげよう!というものです。
会陰がしなやかになり、のびがよくなれば、
↓
- 赤ちゃんの頭が通りやすくなる
- 会陰切開のリスクが下がる
- 会陰裂傷のリスクが下がる
↓
- 赤ちゃんや母体の負担(痛みや体力低下)をやわらげられる
- 産後のダメージが少なく、スムーズに育児が始められる。
といったメリットがたくさん。
そもそも会陰というのは、腟と肛門の間のつるんとした平らな部分のこと。
直径約10cmの赤ちゃんの頭が出てくるためには、この平らな部分がスムーズに伸びる必要があるのです。「会陰の伸びが足りないと、赤ちゃんが出てくるのに時間がかかって、心拍が低下したりすることもあるんです」と、助産師の浅井貴子先生はいいます。
そこで、赤ちゃんになるべく負担をかけず“つるん”と出てきてもらうために、多くの病院では分娩時に3~4cmほど会陰を切って出口を広げる“会陰切開術”を行います。
でも、本音を言えば、できれば体にハサミやメスは入れたくない…。とはいえ、赤ちゃんが苦しくて出られなかったり、アソコがアチコチ裂けてしまうくらいなら、いっそひとおもいに切ったほうがいいのかな……!? あまりにも未知の経験すぎて、初産婦にはいまひとつイメージがわきません。
「会陰切開は赤ちゃんにスムーズに出てきてもらうためのもの。でもね、人工的に切開した傷も自然に裂けた傷も治癒の過程は同じです。出産後、数日から数週間は“イスに座る”とか“姿勢を変える”といったちょっとした動作に、ズキッとつらい痛みが伴うんです」(浅井先生)
産後はただでさえ慣れない育児でいっぱいいっぱい。授乳やおむつ替えなどやることがたくさんあるときに、身体の痛みで自由に動けないとなると、ストレスもたまりそうです。
なるべく切らないで産みたい! そう願うプレママが多いのは、そんな理由からなのです。
「筋トレ」より「スキンケア」で会陰をやわらかくする
なるべく切らずに産むために、会陰の伸びをよくする「会陰マッサージ」がすすめられています。だけど、母親学級や産院、マタニティ雑誌や出産本などで紹介されている内容は、ちょっとばかり怖い……。
「親指をすべて腟に入れ、息を吐きながら親指を肛門の方に押し下げる」ですと!? 本当にそこまでやらなきゃいけない!? こ、こわい~っ!
「指を腟に入れるとか、性器の近くに直接触れる…という行為そのものに、抵抗を感じる人も多いようですね。また、衛生的にも気になります。妊娠中はそれでなくても抵抗力が低下していますから、爪などで腟やその周辺を傷つけてしまうのはなるべく避けたいですよね」(浅井先生)
そこで、浅井先生が推奨しているのが、指を入れずにアロマオイルを使って行う会陰マッサージ。
オイルの力で皮膚を保湿してしっとりとやわらかくし、出産までに時間をかけて「よく伸びる会陰」をつくっていく方法です。
「会陰は皮膚です。だから、筋トレみたいに指でぐいぐい広げてストレッチをするよりも、スキンケア感覚で保湿をしたほうが、よほど簡単にやわらかくなります。私が主催するプレママアロマ教室はもう15年以上になりますが、これまで参加した生徒さんの約半数から、オイルによる保湿マッサージだけで会陰切開をせずに出産できた!という報告をいただいています」
ほう! これなら痛くないし、怖くなさそう…!
ではさっそくやってみましょう。
カレンデュラオイルを用意!市販品でOK
浅井式の会陰マッサージで用意するのは、以下の3つ。
- カレンデュラオイル
- 清潔なコットン
- フタ付き容器
「カレンデュラというのは、マリーゴールドの花です。この花で作ったオイルには、皮膚粘膜や血管を修復したり、保護したり、なめらかにする作用があるのです。花を乾燥したものが売られているので、それをスイートアーモンドオイルなどに漬け込んで作ることができます」
とはいえ、自分で作るのはなかなか面倒そう……。
「ですよね。ですから、私は手軽に入手できる市販品を勧めています。WELEDA(ヴェレダ)の『カレンドラベビーオイル』、またはAMOMA(アモーマ)の『カレンデュラオイル』がいいと思います。ベビー用なので産後は、赤ちゃんの乾燥肌やちょっとしたひっかき傷のお手入れ、おむつかぶれなどにも使えますよ」(浅井先生)
カレンデュラオイルを手に入れたら、フタの閉まる保存容器にコットンを20枚ほど入れ、カレンデュラオイルを注ぎ入れます。コットンの表面にジュワッとにじむくらいたっぷり入れます。
さあ、これで準備完了です!
- ※キク科にアレルギーのある方は使用を控えてください。また、肌が弱く心配な場合は、パッチテストをしてから使いましょう。
会陰を"くるくる"やさしく撫でてマッサージ
会陰マッサージをするときは、まず手や会陰周辺をよく洗って清潔にしてから。(お風呂上がりがおすすめ!) コットンを1枚取り、オイルがポタポタとしたたり落ちなくなる程度に、軽く絞ります。
次に、ショーツを脱ぎ、トイレやイスなどに腰かけて両脚を開くか、踏み台などに片脚をかけた状態で、会陰部分にコットンを持った手を伸ばします。
「こんなスタイルでやってみてね~」。プレママ★アロマ教室での浅井先生
会陰の皮膚は、親指と人差し指の間にある“水かき”くらいの薄さ。この部分がしっとり潤ってくるようなイメージで、オイルマッサージをするといいそうです!
「水かきの薄さが、会陰の皮膚の薄さなんですよ~」。
親指と人指し指を会陰に見立てて、やさしい撫で方を伝授する浅井先生。
浅井式会陰マッサージのやり方
コットンを人差し指・中指・薬指の3本で挟んで持ち、まずは会陰をUの字にくる~っとなぞります。これを2~3往復します。
次にコットンをすべらせながら、くる、くる、くると円を描くように会陰を撫でます。
以上、たったこれだけ。あの怖い「腟グリグリ」などは一切なし! まさに毎日のスキンケアと同じ感覚で、会陰をやさしく撫でるだけです。
まるで美容マスク!オイル湿布でさらに効果アップ
会陰マッサージをしたあとは、生理用ナプキン(またはパンティライナー)にコットンを広げ、ショーツにそのままつけて一晩過ごします。つまり「オイル湿布」で、さらに保湿効果のダメ押しをする、と。
早い人なら、翌朝には、ぷるん!とみずみずしい皮膚に生まれ変わるといいます。
「保湿をすると、まるでお餅のようにぷよんぷよんと弾力がでて、ペタッと吸い付くようなやわらかな会陰に変わっていきます。肌のうるおいも見違えて、助産師は見ただけで"会陰マッサージをしている人だわ"とわかります。ほんとに、見るからによく伸びそうな皮膚なんですよ(笑)」(浅井先生)
オイル湿布の効果は、まさしく美容マスクのそれ。寝ている間にじっくり、しっかり、会陰の皮膚が潤うわけですね。
会陰マッサージはいつから行ったらいいの?
会陰マッサージはいつごろから行うものなのでしょう?
「腟を指で広げるタイプのマッサージは、臨月に近くなってから奨められることが多いみたいですね。私がおすすめしているオイル式の会陰マッサージは、28週ごろ、妊娠8ヶ月に入れば始められますよ」と、浅井先生。
スキンケアは毎日の積み重ねが大切。浅井式は、指で押し広げるといった強い刺激を極力避けながら、時間をかけてしなやかな皮膚をつくっていくのですね。
「最初は2日か3日に1回程度でいいと思います。脱衣所やトイレにコットンを入れた容器を置いておくと、気が付いたときにサッとマッサージができるので便利ですよ。臨月に入ったら、できるだけ毎日やりましょうね」(浅井先生)
会陰マッサージの注意点
会陰マッサージを行う際に注意したいのが、清潔な状態で行うこと。
「妊娠中は抵抗力が落ちていますし、抗生物質もあまり強いものを飲めません。爪の間や性器のまわりの雑菌が原因となって、感染症になってしまうリスクもないわけではありません。マッサージをするときは、手指や会陰が清潔な状態で行うのが基本ですよ」(浅井先生)
おすすめは、入浴後。脱衣所にコットンと踏み台を備えておいて、パジャマに着替える前のタイミングでマッサージを行うのがベストです。風呂上がりのスキンケアの感覚で、会陰にもうるおいを与えてあげるといいですね!
会陰マッサージのよくある質問
浅井先生が主宰する『プレママ★アロマ教室』で、よく出る質問を聞きました。
切るのと裂けるのとでは、どちらがいいの? できるだけ切らないお産にしたいけど、裂けるくらいならひとおもいに切ってしまったほうがいいのでしょうか?
オイルでやわらかくなった皮膚は、切った傷でも裂けた傷でも治りやすいといわれています。お産の傷って、たとえるならば、湯葉をやぶくようなもの。ギザギザと裂けても、まっすぐスパッと切れても、傷じたいは同じもので、傷の大きさや体質、そして、どれだけ皮膚がのびた状態で切れた(or裂けた)かなどが、傷の治りを左右します。
会陰マッサージをしておくと、会陰切開するのを避けられますか?
お産は十人十色です。医師が会陰切開を判断する理由も、当然さまざまなことが考えられます。2ヶ月間がんばってぷよぷよのやわらかい会陰になられた方が、会陰切開や、ときは帝王切開で無事出産されたというお話もよく聞きます。でも、皆さん“会陰マッサージをしてきたおかげで、自分の体を知ることができた。お産に主体的になることができた”と言ってくださいます。
妊娠中に腟の周辺をさわるのは少し抵抗があるかもしれません。でも、だからこそ、会陰マッサージをすることで、赤ちゃんがどんな風に生まれてくるかをイメージしたり、自分の体に向き合ってみるいいチャンスになりますよ。
まとめ
会陰マッサージも運動も、すべてお産にプラスになる!
会陰の傷は、無理して裂けてしまう裂傷よりも、ハサミで切開したほうがふさがりやすいとか、また切開のほうが痛みが長引くとか、いろいろ言われています。でも、これらは「傷の大きさやその人の体質(肌質)によるところが大きく、一概にどちらがいいとはいえない」と言います。
「ただ、初産と2度目、3度目のお産の人とでは、初産の方がダメージが大きいと思います。一度お産を経験して、伸びたことのある会陰は伸びやすくなっているので、二人目は切らずに済んだ!という人も多いですね」と、浅井先生
しかし、お産は何が起こるかわかりません。どんなに準備していても、会陰切開という結果になることもあります。
「たとえ切開したとしても、血流のいい、伸びやかでしなやかな会陰を作っておくことに、ソンはないと思います。会陰がよく伸びると、産後の回復も違います。妊娠中に適切な運動をするのもオススメです。私はマタニティスイミングも指導しているのですが、会陰マッサージと湿布に加えて、スイミングをした、という人は、7割が"切らずにすんだ"という結果が出ています」
update : 2018.03.19
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