妊娠3ヶ月(妊娠8週、9週、10週、11週)の胎児と母体の状態
妊娠8週から、赤ちゃんは「胎芽(たいが)」を卒業して「胎児」に昇格。頭と胴体、手足がのびて、まぶたや耳たぶ、唇もでき始めます。だんだんと赤ちゃんらしい体つきに成長してきたわが子。でも、ママはつわりのピークを迎えて辛い時期かも? さまざまなつわり対策、お産する病院、母子健康手帳、職場報告のこと……。妊娠3ヶ月で気になる胎児のこと、母体のことをご紹介します。
監修者プロフィール
島岡昌幸
島岡医院(京都市南区)院長
「母と子がハッピーになってほしい」と願い、専門の周産期医療はもとより、育児や子どもの皮膚のことなど、日夜勉強を重ねている。母と子が集い学び楽しむ「親育ち、子育ち」の場も多数企画。1970年関西医科大学医学部卒業。同大学附属病院産科主任、大阪府済生会泉尾病院産婦人科医長、奈良東生駒病院初代院長を経て、1983年、島岡医院院長。
妊娠3ヶ月(妊娠8週、9週、10週、11週)の
胎児の様子
妊娠8週:主な臓器の基本的な形ができる
妊娠8週を迎えると、赤ちゃんには頸部(首のこと)ができてきます。首ができ、手足がじょじょに伸びると、頭と胴の2等身を卒業して3等身になります。
脳をはじめ、心臓や肺、肝臓、腎臓などの器官の基本的な形がほぼ完成する重要な時期でもあります。手足の指や目、鼻、耳などの感覚器官もじょじょに細部まで形づくられていきます。
心臓の拍動する音が聞こえるように
各器官の形がほぼ完成してきて、それぞれに働きはじめます。心臓の拍動はかなりはっきりしてきます。妊娠5~6週では、超音波検査(エコー)の画面でピクピクという拍動が見えるだけでしたが、妊娠8週以後は、超音波ドップラーという機械で「ドッドド、ドッドド」という心臓が拍動する音がはっきりと聞こえるようになります。
妊娠9週:手足の基本的な形ができ始める
手足の基本形ができ始めます。手足といいましたが、正式には手は腕、足は自由下肢(かし)といいます。腕はやがて肘を中心に上腕、前腕、手の3つの部分に分かれます。自由下肢は誕生後に這ったり歩いたり、自由に動かすことのできる部分のことで、股関節から足先までをいいます。歩いたり、走ったりの運動だけでなく、体重を支えないといけないので、骨や関節の数は腕よりたくさんあります。
超音波検査(エコー)では、骨は白く映る
超音波検査(エコー)では、骨は白く映ります。骨の形成が未熟なうちはうっすらかすんで映りますが、しっかりできてくると白くはっきりと映るようになります。赤ちゃんの背骨は早い時期から、1個ずつ積み木を積むようにでき始めます。頭の骨や太ももの骨もじょじょにできてきます。
妊娠10週:手足を動かすことができるように
超音波の画面で見ると、赤ちゃんが羊水の中で体を動かしているのがわかります。手足を自分で動かすこともできるようになります。手足の指も、水かきのように互いにくっついていたのが、指の形に分かれてきます。手の指のほうが足の指よりも先にはっきり分かれ始めます。
妊娠11週:まぶた、耳たぶ、唇ができてくる
目にはまぶた、耳には耳たぶ、口には唇ができ、鼻も高くなって鼻の穴ができます。下あごや頬も発達しますから、ずいぶん人間らしい顔つきになります。
男の子、女の子を区別する外性器は、妊娠11週の終わりごろにはできてきます。
☆妊娠11週4日の胎児の大きさ
CRL(頭殿長) 約43 .3㎜ 体重約20g(*)
両足を交互に出して、歩いている?
妊娠11週ごろの赤ちゃんは、両足を交互に出すような動きをします。まるで、羊水の中で歩いているよう。足は伸ばせないので、膝から下をけるようなキッキングのような動きです。これは原始歩行といって、赤ちゃんの中枢神経が発達して、簡単な反射ができるようになったことを示しています。
妊娠3ヶ月のママの状態
子宮は、大人の握りこぶし大に
妊娠していないときの子宮の大きさは、大きめの鶏の卵ぐらいでした。妊娠すると少しずつ大きくなり、妊娠3ヶ月の終わりごろ(妊娠11週の末ごろ)には、大人の握りこぶしぐらいの大きさになります。個人差もありますが、まだ恥骨の後ろに収まるぐらいの大きさなので、おなかがふくらんできた実感はあまりないかもしれません。
つわり症状がピークを迎える
つわりの時期や症状は人それぞれ。個人差はありますが、多くは妊娠8~10週ごろにピークを迎えます。
つわりの原因ははっきりとはわかっていませんが、妊娠後に大量に分泌されるhCGというホルモンが原因という説があります。また、精神的なストレスが自律神経のバランスを乱すことも影響しているともいわれています。
つわりの症状や程度には個人差があり、気にならないほど軽い人がいる一方で、かなり重い人もいます。12~13週ごろにはおさまることが多いので、いろいろな方法を試したり工夫したりして、乗り切りましょう。
つわり対策、いろいろ試してみよう!
無理に食べなくてOK! 栄養も気にしない!
赤ちゃんは自分が必要なエネルギーをママの体から奪う力をもっています。ママの食欲が落ちても、赤ちゃんは大丈夫!「赤ちゃんのために無理に食べる」のは、やめましょう。
赤ちゃんはまだ小さいので、栄養バランスもあまり気にしなくて大丈夫。妊娠初期はまだ塩分制限の必要もありません。塩辛い物でも、コッテリ系や揚げ物でも、食べられる物を食べましょう。
食事の間隔を短く、“小分け食べ”しよう
日中は少量ずつ2~3時間おきに食べる“小分け食べ”がお勧めです。働くママは机の引き出しやハンドバッグ、ポケットの中に軽食を用意するといいでしょう。
食事時間も、家族に合わせずマイペースで! 寝る前や起床後すぐ、夜中に目が覚めたときに、小さなおにぎりやクッキーなどを食べるようにしましょう。
何でも冷たくして食べてみる
湯気や匂いが吐き気を誘うので、調理は自分でしないでできれば家族に任せるのがベスト。無理なら、出来合いのお惣菜やお弁当、外食に頼るのも対策のひとつ。
主食も副菜も汁物もぜ~んぶ、冷蔵庫で冷たくするか、常温で食べてみましょう。冷し茶漬け、冷やしラーメン、冷製パスタなどもおススメです。
冷えた果物は食べやすいのですが、酸味のある柑橘類はあとで吐くことがあるので注意しましょう。
水分補給は氷や炭酸水で!
水分の一気飲みは吐き気を誘うので要注意。氷をかじらずに、口の中で溶かしながら飲みこむのがコツです。炭酸水や経口補水液なら飲める人もいます。飲みやすいミカンやオレンジなど柑橘類のジュースも、吐いたら控えましょう。
歯みがきができないときは…
歯ブラシを口に入れると吐き気がして、歯みがきができないことがあります。そんなときは、洗口液で口の中を清潔に保ちましょう。また、ガムなら大丈夫!という人は、歯をみがいた気分になれる歯みがきガムを利用してもいいでしょう。ただ、シュガーレスでも実際の歯みがきとは違います。
虫歯のあるママは、つわりが収まったら、歯医者さんへ。まだおなかが小さくて治療が苦しくない時期に受けられるといいですね。
妊娠3ヶ月のママがしたほうがいいこと、
注意するべきこと
妊婦健診はきちんと受けよう
妊婦健診は母体と赤ちゃんの健康を守るために、とても重要です。とくに妊娠初期には、母体の全身的な健康をチェックしたり、流産のリスクがないかどうか、双子などの多胎かどうかなど、基本的なことを調べます。赤ちゃんの発育が順調か、ママの健康チェックは何が必要か、すべては正しい妊娠週数がベースになります。
正確な妊娠週数は、妊娠11週未満に超音波検査でわかる赤ちゃんのCRL(頭殿長)が教えてくれます。
つわりがひどいときは、早めに受診
つわり症状が強い人は、我慢しすぎずに早めに医師に相談しましょう。食べられない、飲めない、吐くなどの症状が続くと脱水症状が進み、ときには重い病気につながる場合もあります。
外来受診で脱水を防ぐ点滴治療を受けると楽になりますし、受診した安心感が症状を軽くする場合もあります。「つわりで受診するのは気が引ける」などと思わないことが大切です。
「つわりぐらい、我慢できないなんて」という、家族の無理解な態度も困りもの。とくにパートナーの理解と手助けは重要! お弁当や総菜を買ってきてもらう、料理してもらう、外食に誘ってもらう、など最大限の理解と協力をお願いしましょう。
家では吐いてばかりだったけれど、外に出て気分転換をしたり、外食をするとウソのように食べられることもあります。
便秘は、早め早めの対処を
つわりで食事や水分の量が減ると、便秘がひどくなることもあります。次のような対策で、頑固な便秘にならないように工夫しましょう。頑固な便秘は痔の原因になるので、我慢しすぎずに早めに病院で緩下剤(かんげざい/作用の緩やかな下剤)をもらうようにしましょう。
- 朝、起きぬけに冷たい水や牛乳を飲む
- 便意を感じたらすぐにトイレタイムを作る
- 繊維質の多い食事を心がける
- 適度に体を動かす
- 病院で緩下剤を処方してもらう
お産する病院を決めよう
妊娠の確定診断は勤め先や自宅に近い病院で受けたけれど、これからの妊婦健診やお産は別の病院にしたい、また里帰り出産したい、と考えている人は、病院を決める時期です。地域にもよりますが、日本全体で分娩を扱う病院は減っています。早めに分娩予約を済ませるようにしましょう。
決めるポイントは、どんなお産をしたいか、立ち合い出産を希望するかどうか、パートナーや実家の都合など、人それぞれ、さまざまあるでしょう。しかし、何よりも大切なのは、妊娠・出産・産後の経過、新生児について、診療経験豊富な医師を頼ることです。
最近はウェブサイトの検索と情報に頼る人もいますが、医療内容を正しく、詳しく開示しているかどうかが最低条件でしょう。家族や友人、先輩ママの信頼できる情報に頼るのもひとつの方法です。
母子健康手帳の交付を受ける
妊娠11週までは早期流産といって、主に胎児側に原因のある流産の心配がありますが、胎児心拍が確認できると、その可能性はかなり低くなります。早期流産のリスクが減ったら、そろそろ、現住所のある自治体(市区町村)に「妊娠届け」を提出して、母子健康手帳の交付を受けましょう。
母子健康手帳をもらうと、妊婦健康診査の無料受診券や補助券のほか、さまざまな母子保健サービスを受けられるメリットがあります。なお、妊婦健診の基本的な検査については全国共通に14回分の健診費用を助成することになっています。また、子宮頸ガン検査や風疹の抗体検査など、さまざまな検査項目が補助の対象になっています。
またパートナーのために、『父子健康手帳』を交付している自治体もあります。ちなみに東京都では「父親ハンドブック」の名称で交付。電子版もあります。
自治体によっては、プラスの補助も
厚生労働省が平成29年9月8日に発表した、全国の市区町村が妊婦健診で実施している公費助成額の全国平均は、平成28年4月時点で10万2097円。都道府県別の平均額で、最も高いのが岐阜県で11万9570円、最も低いのが神奈川県で6万9644円で、約5万円の差です。
妊娠・出産への助成だけでなく、子育て支援を手厚くして、若い世代の移住を誘う市区町村もあります。独自のサービスを提供しているケースが多いので、早めに広報誌やウェブサイトなどで調べましょう。
シングル、事実婚、未婚のママも妊娠届けを
自治体に提出する「妊娠届け」は、ひとりでOK! シングルの場合も、事実婚、未婚の場合も、本人の住所登録がわかる書類があれば、母子健康手帳をもらえます。またひとりで育児を考えている場合、自治体でもさまざまな「ひとり親」に対する支援制度を設けていますから、しっかり情報を集めておきましょう。
仕事を持っている人は、職場に報告
仕事をしているママは、職場へ妊娠を報告するころです。雇用形態や労働条件、仕事の内容などにもよりますが、原則として、雇用側は妊娠中の女性に対して最大限の配慮をしないといけないことになっています。たとえば、妊婦健診のための遅刻や早退はOK! つわりがひどくてつらい場合には、勤務時間を短くする、などです。
頼りになるのは、同じ経験を持つ職場の先輩女性。いろいろ相談してみるといいでしょう。
産休のほか、育児休業についても早めに考えておきたいですね。育児休業については、平成29年10月1日から「1歳6ヶ月まで」から「2歳まで」に変更に。(「保育所待機等特別な事情がある場合の2歳に達するまでの育児休業」)。詳細は、勤務先に問い合わせましょう。
update : 2018.04.16
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