妊娠2ヶ月(妊娠4週、5週、6週、7週)の胎児と母体の状態
妊娠4週になると見えてくる、「胎嚢」って何?「卵黄嚢」って? 妊娠5週になると脳や神経、心臓など臓器の原型ができて、手足や目、耳の原型もできてきます! 妊娠6~7週で、心臓の動きも確認。まだ「胎児」と呼んでもらえない「胎芽」時代の赤ちゃんのこと、母体に起こっていることを、ご紹介します。
監修者プロフィール
島岡昌幸
島岡医院(京都市南区)院長
「母と子がハッピーになってほしい」と願い、専門の周産期医療はもとより、育児や子どもの皮膚のことなど、日夜勉強を重ねている。母と子が集い学び楽しむ「親育ち、子育ち」の場も多数企画。1970年関西医科大学医学部卒業。同大学附属病院産科主任、大阪府済生会泉尾病院産婦人科医長、奈良東生駒病院初代院長を経て、1983年、島岡医院院長。
妊娠2ヶ月(妊娠4週、5週、6週、7週)の
胎児の様子
妊娠4週:超音波検査(エコー)で、胎嚢が見える!
妊娠4週は、子宮の中に胎嚢(たいのう)が見えてくるころです。超音波検査の画面には子宮の中に黒い袋のように映ります。胎嚢は赤ちゃんを包む袋! 英語では「Gestational Sac」、直訳すると「妊娠袋」です。どちらも少々味気ないネーミングなので、「赤ちゃんの部屋」と呼んであげましょうか!
このころ、部屋の主である赤ちゃんは、胎嚢の中に小さな点みたいに映ることがありますが、まだ映らないこともあります。
卵黄嚢は、赤ちゃんのお弁当箱
卵黄嚢(らんおうのう)は赤ちゃんに栄養を送るお弁当の役割をしています。妊娠4週に超音波の画面に赤ちゃんが映っても、まだとても小さいので、卵黄嚢のほうが大きく見えることがあります。
妊娠7週になると赤ちゃんのCRL(頭殿長/頭からお尻までの長さ)は10㎜以上になって、卵黄嚢のほうが小さく見えるようになります。ちなみに、卵黄嚢は英語では「Yolk Sac」。文字通り卵黄の袋ですが、「エンジェルリング」や「ホワイトリング」という素敵な名前でも呼ばれています。
妊娠5週:心臓や脳などの原型ができ始める
妊娠5週から11週ころは、器官形成期といって、赤ちゃんのいろいろな器官の原型が作られ始める時期です。器官とは、心臓や血管などの循環器、胃や腸などの消化器、脳や脊髄(せきずい)も中枢神経系の器官です。妊娠5週には心臓、脳や脊髄、食道や胃、腸など、主要な器官の原型が作られ始めます。
中でも心臓は早くから作られ始め、まだ4つの部屋(右心室、右心房、左心室、左心房)ができていないのに、拍動し始めます。未完成のうちから働き始めるのです。赤ちゃんの体内に血液を循環させて、ほかの臓器たちの発育を支えるためです。
最初はお魚? 生物進化の過程をたどって、ヒトになる
このころの赤ちゃんには、長い尾やエラがあって、とても人間の赤ちゃんとは思えない形をしています。赤ちゃんは、魚類から両生類、爬虫類(はちゅうるい)、そして哺乳類(ほにゅうるい)、ヒトへ――という生物進化の過程を一気にたどるのです。人間の赤ちゃんらしい形になるのは、妊娠7週ごろ。わずかな日数の間に起こる、生命誕生の神秘のドラマです!
妊娠6週:手足や目、耳の原型ができ始める
妊娠6週を迎えると、手足や目、耳、口などの原型がつくられ始めます。手も足もまだ丸い棒が少しだけ突き出たような形です。目や耳、口は「くぼみ」のようにしか見えません。
エコーで赤ちゃんの心拍が確認できる
妊娠6週になると、超音波検査(エコー)で、赤ちゃんの心臓の拍動、心拍が確認できるようになります。心拍がきちんと確認できると、無事に赤ちゃんが育っているとわかります。心臓の音が聴けることもあります。
ただし、胎児心拍の確認には、多少の個人差があります。同じ妊娠週数でも0日から6日までの7日間のうち、いつ検査を受けるかにもよりますから、はっきり確認できなくてもあまり心配しないようにしましょう。7週末までには確認できるでしょう。
妊娠7週:赤ちゃんの体は2頭身になる
☆妊娠7週6日の胎児の大きさ
CRL(頭殿長)約12.5㎜ 体重約4g(*)
魚のエラやしっぽのようなものがなくなり、人間らしい形になってきます。でもまだ、頭と胴体に分かれただけの「2頭身」。頭からお尻までの長さが約12㎜、わずか4gの体の中では、脳や脊髄(せきずい)の神経細胞の約80%がつくられて、脳の神経や目の視神経、耳の聴神経などが急速に発達しています。 胎盤や臍帯のもとになる組織も発達してきますし、羊水(ようすい)も少しずつたまり始めます。
妊娠7週まで、「胎芽」と呼ばれるワケ
妊娠7週までの赤ちゃんはまだ「胎児」と呼んでもらえず、「胎芽」と呼ばれます。タツノオトシゴみたいな形をしていて、人間の赤ちゃんの姿になっていないからです。「胎児の芽」というわけですね。妊娠8週になると晴れて、胎児と呼んでもらえるようになります。「芽」は赤ちゃんの臓器の作られ始めを指すこともあります。たとえば、妊娠8週頃には「乳腺芽」といって、乳腺組織の原型が作られ始めます。
妊娠2ヶ月のママの状態
妊娠を知らせる、いろいろな兆候
妊娠2ヶ月の初め、妊娠4週は、予定していた生理が始まるころ。ですが、妊娠したら生理は来ません。母体には、さまざまな形で妊娠のサインが現れ始めます。「いつもと違うかも?」と思ったら妊娠しているのかもしれません。新しい命の存在を知らせる大切なサインです。
- 生理が止まる
生理周期が規則的な人は、予定していた生理が1週間以上遅れたら、妊娠と思っていいでしょう。ただし、女性の体は精神的なストレスや環境の変化の影響を受けやすいので、妊娠以外の原因で遅れることはよくあります。
- 基礎体温は高温相が続く
基礎体温が低温から高温に移行して、高温が3日以上続くと排卵があったとわかります。そのまま高温が15日以上、つまり排卵期を含めて18日以上続いたときは、妊娠と思っていいでしょう。
- 便秘や眠気、熱っぽくなることも
妊娠後はホルモンの影響で、便秘になったり眠くなったりします。体が熱っぽくだるくなったり、乳首の色がわずかに濃くなって敏感になるのもホルモンの影響です。
- つわりが始まる人も
つわりは、早い人では妊娠4週ごろ、たいていは妊娠5~6週ごろから始まります。おなかがすくと吐き気を感じたり、吐いたりします。つわりは「モーニングシックネス」といわれ、朝起きて一番おなかがすいているときに吐き気を感じるのが、この時期の特徴です。
子宮の大きさは、鶏卵の1.5倍に!
妊娠2ヶ月は、見ためにはママのおなかは膨らんではいません。妊娠の実感もまだわかないかもしれませんが、超音波検査(エコー)で、2頭身の胎芽ちゃんを見たり、心臓がぴくぴく動く様子を見たりするうちに、不思議な気持ちになることでしょう。
妊娠2ヶ月の終わりの妊娠7週ごろには、子宮は鶏卵の1.5倍くらいの大きさになります。この中に、頭殿長が12㎜くらい、体重4gくらいの「胎芽ちゃん」がいます。
妊娠2ヶ月のママがしたほうがいいこと、
注意するべきこと
市販の妊娠検査薬を使ってみる
妊娠すると、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが、将来胎盤になる「絨毛(じゅうもう)」でつくられ始めます。妊娠に特有のホルモンです。分泌量は、時間がたつにしたがってじょじょに増えていき、尿の中に排出されるようになります。
妊娠検査薬は、この尿中のhCGが一定量を超えると、検出できるようになっています。一般に市販されている妊娠検査薬は、尿中のhCGの値が50mIU/mlを超えると陽性反応を示すタイプで、予定していた生理が1週間遅れてから使います。
ただし、hCGの増え方や排卵日(受精日)には個人差があります。陰性と出ても妊娠していないとは限らないので、数日後に再検査をするといいでしょう。
早期妊娠検査薬って、どういうの?
早期妊娠検査薬は、予定月経の開始日やその前から使える、としているタイプです。尿中のhCGの値が25mIU/ml を超えると反応するようにつくられています。ただ、早期妊娠検査薬は薬事法により、薬剤師のいる薬局で対面販売でないと購入することができません。海外製品は通販などで購入できますが、検査する時期が早ければ早いほど、精度も低くなると考えたほうがいいでしょう。
生化学的妊娠って、どういうこと?
妊娠検査薬が薬局などで手軽に買えるようになったことで、クローズアップされてきたのが、「生化学的妊娠」です。妊娠反応は出たものの、超音波検査で妊娠が確認できる前に流産となり、生理が来てしまう状態です。
妊娠検査薬を使わなければ、「今月は生理がちょっと遅れた…」くらいで済ませていたことが、「流産」として、とらえられるようになったのです。「生化学的妊娠」は、たびたび起こっている現象です。
妊娠を待ち望んでいる人にとっては、一刻も早く妊娠検査薬で調べたい気持ちでしょう。しかし、妊娠反応が出ても正常な妊娠とは限りません。産婦人科を受診し、子宮内に胎嚢と胎児を確認し(妊娠4、5週ごろ)、心拍を確認(妊娠6、7週ごろ)して、はじめて「正常妊娠」です。
葉酸を積極的に摂ろう!
葉酸サプリを利用する場合は、産婦人科医や薬剤師などのアドバイスを受けて、品質の確かな製品を、用量を守って飲むようにしましょう。葉酸サプリメントによる副作用はほとんどないので、妊娠初期だけでなく、その後も続けていいとされています。ただし、葉酸の食品からの摂り過ぎは問題ありませんが、サプリメントでの摂り過ぎは、NG! 1日量を超えないように注意しましょう。
1日も早く診察を受けよう
一般に市販されている妊娠検査薬で陽性と出ても、子宮外妊娠などの妊娠異常をチェックすることはできません。妊娠初期には、流産の心配もあります。ですから、妊娠かもしれないと思ったときや、妊娠検査薬で陽性と出たときには、1日も早く産婦人科を受診しましょう。
産婦人科では、尿検査や、必要な場合には血液検査で、妊娠を診断します。あわせて、ほとんどの病院で超音波検査を行い、妊娠の確定診断を行います。超音波検査では、妊娠4~5週(月経が1~2週間遅れた段階)で、妊娠の確定診断ができます。また、妊娠5週には、子宮の中に着床しているかどうかを確認します。ただし、月経周期や排卵時期には個人差があるので、もう少し後にならないと診断がつかないこともあります。
胎嚢と赤ちゃんが見えるか、が決め手
ほとんどの病院では、妊娠の確定診断は超音波検査で行います。子宮内の胎嚢(たいのう/赤ちゃんの部屋)確認と、胎嚢の中に赤ちゃんがいるかどうか、が決め手です。
胎嚢や赤ちゃんの姿が見えず、「1週間後にもう一度来てください」と言われることもあります。排卵日は受精日!なので、排卵が遅れた場合は、赤ちゃんが見えないことも。排卵日は生理周期が規則的な人でも遅れることがあります。
妊娠6週の超音波検査で「胎児心拍」が確認できなかった場合も、妊娠7週には確認できるでしょう。
産婦人科の初診で受ける主な検査
【問診】
問診表に受診の目的やこれまでの健康歴を記入します。月経周期、最終月経、妊娠や分娩の経験、これまでにかかった婦人科の病気などを記入します。診察では医師が問診表を参考により詳しく質問します。基礎体温表をつけている人は持っていきましょう。
【一般検査】
- 身長、体重の測定
- 体温や脈拍の測定
- 血圧の測定
- 尿検査/尿糖、尿タンパクなどを調べる
【超音波検査】
初診からしばらくの間は経腟超音波検査といって、検査用の器具を腟内に挿入するので、内診台で受ける。胎嚢(たいのう)の位置や胎児心拍を観察して、妊娠の確定診断および子宮外妊娠などの異常がないかを観察。子宮筋腫(きんしゅ)や卵巣嚢腫(のうしゅ)の有無も調べる。
【尿検査】
市販の妊娠検査薬が普及したので、初診時に尿検査で妊娠を確かめることは減っているが、必要な場合は行う。(正確なhCG値の計測が必要な場合には、血液検査を行う)。今後の妊婦健診では毎回、尿検査を行う。
【おりもの検査】
内診台で受ける。細い検査用の綿棒を腟内に挿入して腟内の分泌物を採取。クラミジア感染症など、母子感染の可能性がある病気がないかを調べる。子宮頸ガンの検査を行うこともある。
最終月経をもとに「仮の出産予定日」を決める
出産(分娩)予定日は、最終月経の開始日を基準に、妊娠40週の最初の日(40週0日)、つまり280日目になります。受精したときは、すでに妊娠2週なので、280日から14日をひいた266日間が実質の妊娠期間です。
でも、このときの出産予定日は、まだ仮。排卵日は生理周期が規則的な人でもずれることがあり、受精した日を特定できないからです。
正確な分娩予定日は、いつわかる?
赤ちゃんの頭からお尻までの長さ、CRL(頭殿長/とうでんちょう)は、妊娠の初期にはほとんど個人差がありません。そこで妊娠11週頃までに、超音波検査で何度かCRLを測って正しい妊娠週数(9週5日など)を出します。それを基に正確な出産予定日(40週0日)を算出します。
修正された出産予定日がわかるのは、だいたい妊娠9週から11週の間くらい。ただし、CRLにも3~4日程度の誤差があります。
update : 2018.04.16
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