妊娠1ヶ月(妊娠0週、1週、2週、3週)の胎児と母体の状態
妊娠0週は生理が始まる週で、妊娠1週は排卵の準備期なので、まだ赤ちゃんはいません。妊娠2週になると受精卵ができて、妊娠3週で子宮内膜に着床すると、赤ちゃんの原型誕生! そのころの母体はどんな状態? 妊娠検査薬はいつ使えばいいの? つわりは? 葉酸は? 妊娠1ヶ月の胎児とママのことをご紹介します。
監修者プロフィール
島岡昌幸先生
島岡医院(京都市南区)院長
「母と子がハッピーになってほしい」と願い、専門の周産期医療はもとより、育児や子どもの皮膚のことなど、日夜勉強を重ねている。母と子が集い学び楽しむ「親育ち、子育ち」の場も多数企画。1970年関西医科大学医学部卒業。同大学附属病院産科主任、大阪府済生会泉尾病院産婦人科医長、奈良東生駒病院初代院長を経て、1983年、島岡医院院長。
妊娠1ヶ月(妊娠0週、1週、2週、3週)の
胎児の様子
妊娠0週:最終月経が始まる週
妊娠0週は、妊娠する前の「最終月経(生理)」が始まる週です。生理中はこの周期に妊娠するかどうかはわかりませんが、あとで妊娠とわかって「最終月経」と気がつきます。
ホルモンの働きで厚くなった子宮内膜は、妊娠しないときは剥がれて体の外に流れ出ます。これが月経です。月経は受精卵が来たらスムーズに着床できるように、毎月、子宮内膜を新しく張り替える働きをしているのです。
妊娠1週:卵子が成熟し、排卵準備が始まる
妊娠1週は、排卵に備えて卵子が成熟する週です。卵子が入った卵胞(らんぽう)を育てるホルモンがたくさん分泌され、卵巣では10数個の卵胞が育ち始めます。なかでも最も良く育った卵胞が排卵の準備を始めます。十分に成熟した卵胞を成熟卵胞、またはグラーフ卵胞といいます。
原始卵胞から排卵まで、150日の長距離走!
排卵する卵子は、もともとはママが胎児だった時期にできたもの。卵巣の中に「原始卵胞」として貯蔵されています。1回の排卵のために、まず10数個の原始卵胞が目覚め、一次卵胞から二次卵胞へと成熟していきます。ずっと冬眠状態だったので、成熟卵子になるまでには長い時間がかかります。原始卵胞が発育し始めてからはおよそ150日、一次卵胞から数えると90日かかるといわれています。
妊娠2週:週の初めに受精卵誕生!
妊娠2週は、排卵日を迎え、赤ちゃんの基である受精卵が発生する週です。排卵日は、月経周期が規則的な28日周期の人の場合は、月経初日から数えて14~15日目ごろ。妊娠2週の初めです。基礎体温表では低温期から高温期に移行するころです。
卵子の寿命は、排卵から約24時間!
排卵する卵子は、普通は1個だけ! この選ばれた卵胞を「主席卵胞」といいます。排卵された卵子の寿命はおよそ24時間といわれています。精子と卵子がこの間にタイミングよく出会い、合体したとき、ママとパパから半分ずつ遺伝子をもらった新しい命――受精卵が生まれます。
精子が目指すのは、卵管膨大部!
受精のステージは、卵管膨大部(ぼうだいぶ)です。
卵管膨大部の内側の幅は約10㎜! わずか1㎜の細いところもある卵管の中では一番広いところです。射精された精子が進むスピードは1分間におよそ3㎜。精子は8㎝ぐらいの腟を通過、小さめのアボカドぐらいの大きさの子宮の中を移動して、卵管膨大部に辿りつきます。早いと1~2時間、遅いと4~5日かかる精子もいるそうです!
卵子の近くに到達できる精子は、腟内に射精された精子の約100万分の1! とても過酷なロードレースなのです。
卵子に進入できる精子は、1個だけ!
1個の卵子に100個もの精子が同時にアタックします。精子は頭の先から卵子の殻を溶かす酵素を出して、中に入ろうとします。先にアタックした精子が進入できるとは限りません。先兵隊の努力で殻が溶けたころに、運よく入り込んだ者が勝利者となります。
1個の精子が卵子の中に入ったとたん、卵子は扉をピタリと閉じてしまいます。多精子受精というトラブルを防ぐ素晴らしい仕組みです。
受精卵は、1日1回のペースで細胞分裂
受精直後の受精卵はひとつの細胞ですが、すぐに2細胞、4細胞、8細胞という具合に細胞分裂を繰り返します。この細胞分裂を「卵割(らんかつ)」といいます。卵割は、およそ1日に1回のペース。細胞数を増やしながら、卵管から子宮へと5日くらいかけて移動します。
妊娠3週:受精卵が子宮に到着!着床したら妊娠
☆妊娠3週末の胎児の大きさ/約1mm
妊娠3週になると、受精卵が子宮に到着! 受精卵は、外側を覆っていた殻がなくなり、表面から出る酵素で子宮内膜を溶かしながら中にもぐり込んでいきます。こうして受精卵が子宮に着床すると、妊娠の成立です。
このころの赤ちゃんの大きさはわずか1mmぐらい。でも、受精直後は0.1~0.2mmぐらいなので、これでもずいぶん大きくなっているのです。
妊娠1ヶ月のママの状態
排卵~受精~着床のドラマが起きる
妊娠1ヶ月の母体で起きているのは、排卵~受精~受精卵の着床、という現象です。でも、まだ次の生理(月経)は遅れるかどうかわからないし、たいていはつわりも始まっていません。
では、どういう状態になれば妊娠が成立したと言えるのでしょう。
生理周期が平均的な28日の場合、卵巣から卵子が排卵するのは、生理の開始日から約2週間後。卵子の寿命は排卵されてから約24時間といわれているので、この間にタイミングよく精子が卵子に出会い、受精すると「受精卵」になります。
受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、子宮へと運ばれ、受精からおよそ7日目に子宮内膜へともぐりこみます。受精卵が子宮内膜に接着することを「着床」といい、医学的には着床したときが「妊娠の成立」です。
妊娠週数と妊娠月数の数え方
妊娠週数は、最終月経の開始日を妊娠0週0日として数えていきます。0日から6日の7日間を1週間として、4週間を1ヶ月とします。ですから、妊娠1ヶ月(妊娠0~3週)は最終月経開始日からの4週間を指しますが、このうち妊娠0~1週はまだ排卵していないし、受精もしていません。受精卵のできていない排卵前から妊娠週数を数えるのは不思議ですが、母体で妊娠の準備が始まっている大事な時期です。
妊娠初期、中期、後期の分け方
妊娠期間はトータルで40週(10ヶ月)。妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期に分ける。
- 妊娠初期(妊娠0~15週/妊娠1~4ヶ月)
- 妊娠中期(妊娠16~27週/妊娠5~7ヶ月)
- 妊娠後期(妊娠28週~/妊娠8~10ヶ月)
生理の周期を記録しておこう
「最終月経(生理)」が始まったときは、まだ妊娠するかどうか、わかりません。妊娠したあとで「いつからいつまでの生理が“最終月経”だった」とわかります。妊娠かどうかは、予定した生理が遅れてから妊娠検査薬で調べるとわかります。
しかし、正常な妊娠であると確定するために、必ず産婦人科を受診します。問診票には、ふだんの生理の周期や直近の生理の期間を記入する欄があります。とくに生理不順の人は、正しく記入できるように、毎回きちんと記録しておきましょう。
妊娠週数と在胎週数の違いは?
日本では最終月経開始日を妊娠0週0日とする「妊娠週数」が使われていますが、欧米などでは「在胎(ざいたい)週数」といって、排卵日(受精日)を起点としています。ですから、在胎週数の妊娠0週0日は、日本式の妊娠週数でいうと、妊娠2週0日を指しています。
- 在胎週数の在胎は、おなかの中に赤ちゃんが登場したことを意味する
- 「胎生(たいせい)○週」と言うこともある。在胎週数と同じ意味
- 在胎週数または胎生週数を、日本式妊娠週数に直すときは2週をプラスする。日本式の妊娠週数を在胎週数に直すときは、2週をマイナスする
わずかに体調の変化が起こることも
受精卵が子宮に着床するのが、妊娠3週ごろなので、妊娠1ヶ月ではまだ妊娠の自覚はほとんどありません。しかし、妊娠すると、体の中にはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンがたくさん出てきます。
こうしたホルモンの影響で、予定月経のころにあくびばかり出て眠くなったり、なんとなくだるくて熱っぽい感じがしたり、おっぱいがわずかに張ったり、朝起きておなかがすいているときに軽い吐き気を覚えるなど…、「何か今までと違う体調の変化」が起こることもあります。
超音波検査(エコー)でわかる、排卵時期
超音波検査(エコー)は、産婦人科の“聴診器”。妊娠したかも?と思って婦人科を受診すると、超音波検査を受けます。これから妊婦健診で何度かお世話になりますが、妊娠する前の卵巣や子宮の中もくわしく観察できます。
卵巣の中には卵子が入った卵胞があり、ホルモンの作用で成熟して排卵が起こります。卵胞の大きさが、1.8~2.5cmぐらいに成長すると排卵するので、超音波検査で卵胞の大きさを測ると、排卵の時期がわかります。
子宮内膜も観察できます。子宮内膜は、排卵後、ふかふかベッドのようになって受精卵を受け入れる準備を始めます。超音波検査では、子宮の厚みを測ることもできます。
妊娠1ヶ月のママがしたほうがいいこと、
注意するべきこと
妊娠したいなら、排卵前にセックスを
妊娠を望むときは、妊娠しやすい時期にセックスのタイミングをもちましょう。排卵された卵子の寿命は約12~24時間なので、排卵とわかってからでは間に合わないかも!? 精子の寿命は約72時間といわれますから、排卵前にタイミングをもつのがベストです。
排卵の多くは、最終月経から14日~15日目ぐらいに起こります。月経が終わったら、1~3日おきのペースでタイミングをもつと、妊娠の可能性は高くなります。
妊娠を早く知りたいなら、基礎体温で
妊娠を早く知りたい人は、基礎体温の測定を習慣にするといいでしょう。妊娠は排卵があるのが必須条件! 基礎体温を測ると排卵の有無がわかります。排卵すれば基礎体温は高くなります。妊娠が成立すると、基礎体温はそのまま高温が続きます。予定していた生理が始まらず、高温が排卵期を含めて18日以上続いた場合は、ほぼ妊娠と考えていいでしょう。
妊娠検査薬は、いつ使うといいの?
一般に市販されている妊娠検査薬の精度は高いので、予定月経のころに陽性を示す場合もあります。しかし、胎盤のもととなる絨毛でつくられるhCGの分泌量には個人差がありますし、排卵が遅れて着床が遅れた場合は、妊娠反応が陽性と出るのも遅くなります。予定していた生理が1週間以上遅れたころに使います。
葉酸を積極的に摂ろう!
葉酸はビタミンB群に属する水溶性ビタミンです。葉酸には、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減する働きがあります。また、新しい細胞ができるのを助け、体の発育を促す作用があります。妊娠する1ヶ月以上前から、1日0.4㎎の葉酸を摂るようにしましょう。
葉酸の語源は、ホウレン草。この葉っぱから発見されたからです。ホウレン草のほか、ブロッコリーや小松菜、ニラなど緑色の野菜に豊富に含まれています。また海苔、レバー、枝豆、緑茶などにも含まれています。白い野菜(大根や白菜)や赤い野菜(トマト)にはほとんど含まれていません。
1日0.4㎎の葉酸を、ホウレン草だけで摂取しようとすると、毎日2把食べる必要があります。ふだんの食事から必要量摂るのはなかなか難しいので、厚生労働省も日本産科婦人科学会も、たくさんあるビタミンのうち、葉酸だけは「サプリメントでとりましょう」と推奨しています。
葉酸サプリを利用する場合は、産婦人科医や薬剤師などのアドバイスを受けて、品質の確かな製品を、用量を守って飲むようにしましょう。葉酸サプリメントによる副作用はほとんどないので、妊娠初期だけでなく、その後も続けていいとされています。葉酸の食品からの摂り過ぎは問題ありませんが、サプリメントでの摂り過ぎは、NG! 1日量を超えないように注意しましょう。
X線検査や薬を飲むのは慎重に!
このころにX線検査を受けたり、薬を飲んだときは胎児への影響が心配になりますが、X線は受精後10日(妊娠3週の半ば)まで、薬は受精後14日(妊娠3週末)までは心配ありません。これ以降も、X線の場合、被ばく量が少なければほとんど心配ないとされていますし、薬も影響が心配なのはごく一部です。
また、日本の場合、市販薬のほとんどは心配ありません。しかし、飲んだ時期や成分、量によっては影響がないとはいえません。この時期、病院を受診するときは、必ず妊娠の可能性があると伝えましょう。また、市販薬を自己判断で使うのは控えましょう。実際には心配なくても、大丈夫かしら?と悩んでしまうことがあるからです。
update : 2018.04.16
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