妊娠中にアワビが良い?オススメな理由

妊娠中に「食べるとよいもの」「食べてはいけないもの」に関しては、昔からさまざまな言い伝えがあります。その中から、今回は食べるとよいもののほうを見てみましょう。
食べるとよいとされているものには、あわび、ナマズ、鯉こく(鯉を味噌で煮たもの)、牛乳、そしてなんと、「桃の虫」なんてものも! 日頃あまり食べる機会のないものも多いですが、本当に妊婦にいいのでしょうか? 由来や医学的な根拠について、いつものように大鷹美子先生にお聞きしました。
この記事の監修
大鷹美子先生
愛育クリニック産婦人科 非常勤
東京大学医学部保健学科・医学科卒業。日本赤十字社医療センター、NTT東日本関東病院、東京都保健医療公社豊島病院産婦人科部長、東京都保健医療公社大久保病院副院長を経て現職。専門は周産期学、臨床遺伝学など。著書に『どうしたの? 産後ママのからだ相談室』(赤ちゃんとママ社)、『高齢出産』(主婦の友社)などがある。
あわびの貝殻に薬効?
妊婦がごちそうを食べるいい訳だった?
「妊娠中に○○を食べるとよい」というのと「○○を食べてはいけない」というのでは、後者のほう、つまりタブーの言い伝えのほうが圧倒的に多いのですが、そんな中で、数少ない「推奨される食べ物」は、というとーー。
- あわびを食べると目のきれいな子が生まれる
- あわびを食べると目のいい子が生まれる
これは日本各地で言い伝えられてきているようです。地方によって「目のきれいな子」「目のいい子」という違いはありますが、あわびと赤ちゃんの目? いったいどんな因果関係があるのでしょう。
いろいろ調べてみると、昔、漢方では、あわびの貝殻に、肝臓と眼の機能を高める効果があるとされていたようです。身のほうではありませんが、こうした薬用効果がうたわれていたことから、「目のきれいな子」「目のいい子」の言い伝えになっていったと言えそうです。しかし、残念ながら現代医学、現代の漢方でも、こうした効果は正式には認められていません。
あわびは、今も高価な食べ物ですが、昔も同じ。神様に捧げるとても重要な海産物でした。お祝いごとに使われる熨斗袋(のしぶくろ)の「熨斗」は、もともとはあわびを薄く裂いて乾燥させたもの。あわびは慶事のシンボルなのです。中国では、秦の始皇帝が不老長寿の妙薬としていたとか、楊貴妃が美容のために好んでいたとか。
となると、「おなかの子どものため」「大事な跡取りを無事に生むため」に妊婦が食べたくなるのは、当然でしょう。嫁の地位が低かった昔、妊娠中にごちそうを堂々と食べる言い訳として使われたのかもしれません。
ちなみに、赤ちゃんの視力についてですが、「生まれたての赤ちゃんは、視野がとても狭く、弱い光がわかるくらいで、大人のように“目が見えている”状態ではありません。生後1~2ヶ月になれば、ものを追って見る追視ができるようになり、脳の視覚野の神経回路が完成するのは生後3ヶ月ぐらいになってからです」と大鷹先生。
昆虫は、貴重なたんぱく源だったけれど……
妊婦にオススメの食べ物には、こんな言い伝えもありました。
- 桃の虫を食べると美人が生まれる
今も昔も、できれば美人に生まれたい、美人の子がほしい、という願望は変らないのですね。前回、「トイレ掃除で美人の子が生まれる」話を書きましたが、いくら美人が生まれるといわれても、虫を食べるのは勇気がいりそうです。それに、桃の虫ってどんな虫でしょうか?
桃は、中国では邪気を払うといわれ、昔から豊穣や若返りを象徴する果物とされていました。桃から生まれた桃太郎のおとぎ話は、桃を食べた老夫婦が若返って桃太郎を生んだ、という話が元だともいわれます。そんな桃の力と関係があるのかもしれませんが、なかなか因果関係はつかめません。
「昔は、貴重なたんぱく源として、昆虫がよく食べられていました。東南アジアなどでは今でもよく食べられていますね。日本でもハチの子やイナゴなど、昆虫食の習慣のある地方があるので、“桃の虫”ももしかしたらその類のものかもしれません」(大鷹先生)。
粉ミルクのない昔、
母乳は赤ちゃんの命綱だった。だから…
粉ミルクなどない昔は、母乳は赤ちゃんの命綱でした。そうした時代でも、セレブな人たちは乳母を雇ってわが子にたっぷりお乳を飲ませることができましたが、庶民はそういうわけにはいきません。お母さんたちは、お乳の出がよくなるといわれるものをせっせと食べて、懸命におっぱいを出す努力をしたに違いありません。次に挙げるのは、そうしたことにまつわる言い伝えです。
- 妊娠中、あわびの味噌汁を飲むと母乳の出がよくなる
- 妊娠中、ナマズを食べておくと乳がよく出る
- 鯉こくを食べると、乳の出がよくなる
どれも「○○を食べると母乳の出がよくなる」というものですね。
“母乳と食べ物”って、やっぱり関係が深いのです。
「これらの言い伝えは、どれも妊婦にごちそうを食べさせなさいという意味なのでしょう。圧倒的に粗食だった昔は、あわびやナマズや鯉といった動物性たんぱく質はたいへんなごちそうだったでしょうから、そういうものを食べて栄養をつければ、お乳の出もよくなると考えるのは当然のことですね」と大鷹先生。
お母さんが栄養失調ではお乳も出ませんから、これらの言い伝えは、満足に食べ物がなかった時代には、ある程度的を射ています。しかし、飽食の時代の妊婦には通用しません。粗食の時代と違って、日常的にごちそうを食べている現代では、妊娠したからといってこれまで以上に栄養価の高いものをとる必要がないということは、前回もお話ししました。
妊娠して体を動かさなくなると、消費エネルギーも減っている可能性があるので、痩せている人は別として、標準体重の人や太めの人は、余分に食べようと思わないほうがいいのです。
食べ過ぎかどうかの目安になるのは体重増加です。
「1ヶ月に1キロ、つまり2週間で500グラムくらい増えるのがベスト。もしそれよりも明らかに増えているなら、食べ過ぎと思ったほうがいいでしょう」(大鷹先生)。
「妊娠したら栄養のあるものを食べろ」というのは、おなかいっぱい食べることもままならなかった昔の話だということを肝に銘じておきましょう。
妊娠中の体重増加については、大鷹先生から、もうひとこと。 「最近は、30代後半に子どもを産む人が増えていますが、年齢を重ねると、生活習慣病予備軍の人が増えてきます。もちろん遺伝的な体質も関係しているのですが、生活習慣病予備軍の人は、妊娠の負荷が加わると、たちまち妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群になることがあります。そうなると、母体や胎児を危険にさらすことになります。妊娠中はやはりきちんと自己管理をして、特に高齢出産の人は、食べ過ぎや過労にならないように気をつけたいですね」
乳腺炎やアレルギー予防のためにも、牛乳はほどほどに
母乳に関しては、こんなこともいわれています。
- 牛乳をたくさん飲むと母乳の出がよくなる
牛乳は、牛の母乳だから、たくさん飲めば人間の母乳の出もよくなるーーという単純な連想ですね。でも、牛乳を飲んでも胃や腸で消化されますから、そのまま母乳になるなどということはありえません。
「牛乳を飲みすぎると乳腺炎を起こしやすくなる人もいるようですから、飲みすぎはいけません」(大鷹先生)。
アレルギーも気になります。
「確かに、妊娠中に卵や牛乳をとり過ぎると、生まれてきた赤ちゃんがアレルギーになりやすい傾向があるといわれています」。
でも、アレルギーは遺伝的な体質もかかわっているので、牛乳だけが原因ではないそうです。
「飲みすぎはよくありませんが、牛乳をゼロにする必要もありません。第一、牛乳は飲みませんという人でも、平気でケーキやシュークリームを食べていたりするので、間接的に牛乳をとっているわけです」
アレルギーを予防するには、何かをゼロにするのではなく、いろいろな種類の食べ物をまんべんなく食べることが大切といいます。
「牛乳は、毎日小さなコップ1杯くらいが適量でしょう。牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする乳頭不耐症の人、牛乳がキライという人は、無理して飲む必要はありません」(大鷹先生)。
監修/愛育クリニック産婦人科 大鷹美子先生
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release : 2011.05.04
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