子宮頸管無力症について【妊娠中の病気やトラブル】

子宮頸管が無力になる――なんてインパクトのある病名なのでしょう。「子宮頸管無力症」は、おなかの赤ちゃんの出口である子宮頸管がゆるんで開いてしまう病気です。
本来、子宮頸管は赤ちゃんがおなかの外に出られるくらいに大きくなるまでは、しっかりと閉じていなくてはならないもの。それなのに、途中で開いてしまったら早産を招いてしまいます!
ここでは、子宮頸管無力症を乗り越えた先輩ママの体験談とともに、ドクターに聞いた子宮頸管無力症の原因や対処法をご紹介します。

取材協力・監修

大井理恵(おおいりえ)先生

平成12年、東京医科歯科大学卒業。旭中央病院産婦人科、国立成育医療研究センター、都立大塚病院等を経て、東京医科歯科大学特任助教(*2020年現在は、伊藤メディカルクリニック(大田区蒲田)に勤務)。「合併症など困難があって出産する方も、スムーズにお産できる方も、どんなお産でも、赤ちゃんが元気に生まれてきてくれたら、それがいちばんうれしい」と大井先生。これまで取り上げた赤ちゃんは約2000人にのぼる。胎児の超音波診断を得意とする。

子宮頸管無力症体験談「わたしの場合」1

神奈川県に住むSさんが子宮頸管無力症と診断されたのは、妊娠6ヶ月のとき。おなかが痛くなって受診すると「子宮口が開いて、赤ちゃんを包む膜(胎胞/たいほう)が見えている」と言われました。早産の恐れがあるため、即入院となりました。

NICU(新生児集中治療室)の看護師をしていたSさん。仕事柄、知識があったので、事の重大さに恐怖を覚えたそうです。

「1ヶ月前の妊婦健診では、特に問題はなかったのです。まさか自分がなるとは……。でも、なってみると、なぜもっと早く受診しなかったのかと、後悔しました」とSさん。

じつはSさん、おなかが痛くなる1~2週間前から、おりものが黄色っぽくなっていたのに気がついていました。ただ、においもないし、破水した感じもないので、次の健診まで様子を見ようと待ってしまったのです。

入院したSさんには、子宮の収縮を抑えるウテメリンという薬が処方されました。早産に備えて赤ちゃんの肺の成熟を促し、脳出血のリスクを低減するためのステロイド注射も。このままおなかの張りが落ち着けば、翌日、子宮頸管を縛って赤ちゃんが出てこられないようにする手術を行う、と医師から説明されました。

1分1秒でも長く、赤ちゃんをおなかにとどまらせようと必死だったSさん。ベッドの上で絶対安静。おなかの張りが少しでも強くなったら、助産師さんを呼んで張り止めの点滴の調整をしてもらいました。

ところが、翌日の診察で「子宮頸管が広がり過ぎて、もう糸をかける場所がない」と手術は中止に。赤ちゃんはまだ22週でかなり未熟なために、たとえ生まれても助かる確率が低いうえ、もしも破水してしまうと、逆子であるために赤ちゃんが生まれてくる前にへその緒がつぶれて死産になる可能性がある――と医師から告げられました。

へその緒のトラブルを避ける目的で帝王切開手術をしても助かる見込みは少ないし、次回の妊娠で経腟分娩できる可能性が低くなってしまうからと、経腟分娩を勧められました。

「私は、赤ちゃんが助かるなら方法はなんでもいいと思っていたので、少しでも確率の高い帝王切開が希望でした。でも夫が私の体に傷をつけたくないと言い、そうこうしている間に陣痛がどんどん進んで……。帝王手術の準備が間に合わず、経腟分娩になりました」(Sさん)

小さな産声をあげて生まれてきた赤ちゃんは、体重わずか554g。対面した後は、すぐにNICUに移され、保育器に入れられました。自力で呼吸ができないので、口から管を入れて人工的に呼吸を管理。おっぱいは胃につないだチューブで与えられました。

いたいけな赤ちゃん。赤ちゃんの生命力を信じたいSさんですが、もちろん不安はありました。しかし、毎日少しずつ大きくなっていく姿に、次第に喜びを感じながら病院に通うようになりました。

ついに4ヶ月後、赤ちゃんはちょうど出産予定日の頃に退院することができました。

「今は7ヶ月になりました。気になる障害もなく、すくすくと育っています。早産は他人事だと思っていましたが、体験して本当に大変なことだとわかりました。子宮頸管無力症は急に進むことを、皆さんに知って欲しいです。そして、ちょっとした変化や気になることがあれば、躊躇せずに早めに病院に行ってほしいです」(Sさん)

子宮頸管無力症体験談「わたしの場合」2

埼玉県のJさんは、23歳で第一子を妊娠したときに、子宮頸管無力症と診断されました。

「妊娠3~4ヶ月頃、このままでは流産する可能性が高いので、子宮の出口を縛る手術を勧められました。先天性だそうで、自分がそんな病気を持っていたなんて!とびっくりしました」とJさん。

Jさんの場合、手術は日帰り。下半身だけに効く麻酔で、看護師さんと話している間に終わったといいます。

「手術の翌日は、痛みで動けませんでしたけれど…。縛ってからは安心して仕事ができるようになりました。気持ちの上でもすごくラクでした」(Jさん)

縛った部分がゆるんでいないか、病院に行くたびにチェックがあり、妊娠37週で抜糸。麻酔はしませんでしたが、一瞬で終わり、痛みはなかったそうです。

3回の妊娠とも子宮頸管を縛ったJさん。1人目こそ難産だったものの、2人目と3人目は比較的安産で、3人とも経腟分娩。

「お産のときは、赤ちゃんを包む膜が分厚くて自然に破水しなかったので、先生が膜を破って破水させたら、お産がどんどん進みました。産後は問題なく、家事や育児も普通にできました」(Jさん)

赤ちゃんが下りてこられないように、子宮頸部を縛る

おなかの赤ちゃんが子宮から出てくるときの通り道が、子宮頸管。ここは本来、赤ちゃんが大きくなりお産が始まるまでは、一定以上の長さに保たれ、きつく閉じられています。

ところが、まだ早過ぎる時期(妊娠14~30週頃)に、痛みなどの自覚症状がないまま子宮頸管が短くなり、ゆるんで開いてしまうことがあります。それが「子宮頸管無力症」です。

子宮口を閉じている力が減るので、子宮口が赤ちゃんや羊水の圧力に耐えられなくなり、そのままにしておけば、本来分娩になるべきでない時期に破水や分娩が始まってしまいます。子宮頸管がゆるんでいると、腟からの細菌も入りやすくなり、子宮内の細菌感染も起こりやすくなります。それもまた早産の引き金になります。

子宮頸管に十分な強度があれば、胎児が大きくなり、子宮内の圧力が上がっても耐えられる。

子宮頸部のしまりが悪くなり、子宮内圧に耐えられなくなる。

そこで行われるのが、物理的に赤ちゃんが下りてこられないように子宮頸管を縛る手術です。腟からの細菌も入りにくくなります。

「縛る手術は、ほとんどが背中から脊椎麻酔で行われます。下半身だけに効くので意識もあります。手術後は、退院してふつうに生活できるようになる人もいますし、そのまま病院で安静を続けなければならない人もいます。ケースによって違います。手術をするかどうかは、妊娠週数がどのくらいなのか、母体と赤ちゃんのコンディションはどうなのか、また、お産する病院が新生児に対してどの程度の医療ができるのか、さまざまな条件を総合的に判断して、決められます」と産婦人科医の大井理恵先生。

子宮頸管を縛る手術法

背中からの脊椎麻酔で行われることがほとんど。

どこでわかるの? どうなったら、無力症?

「診断は、子宮頸管の長さがポイントになります。子宮頸管の長さは、経腟超音波検査でわかります。正常な場合は、妊娠初期から36週ごろまで長さは変わらないもの。30mm以上あれば理想です。それが妊娠24週で25mm未満になると、早産のリスクが6倍になるというデータがあります」(大井先生)。

妊婦健診で子宮頸管の長さが30mmを下回ったら、注意しながら経過を観察。20~25mm以下になったら、入院して安静を保つか、子宮頸管を縛る手術を検討します。

「頸管無力症の古典的・医学的な診断基準は、妊娠14週から28週直前で流産・早産を繰り返すこととされています。しかし今は子どもを産む回数が減っているし、流産や早産の繰り返しを待つわけにもいかないので、初めての妊娠で子宮頸管無力症と診断する場合も少なくありません。厳密な意味での子宮頸管無力症の人がどのくらいいるのかは、はっきりしませんが、以前の妊娠で流産・早産した、超音波検査で子宮頸管が短くなっていたという人は、子宮頸管無力症のリスクが高いと考えて、手を打つことになります」(大井先生)

子宮頸管の長さ(頸管長)が短くなっていたら、要注意。経腟超音波検査で確認できる。

原因は? 流産や中絶経験、子宮頸がんもリスクに

子宮頸管無力症はなぜ起こるのでしょう? また、どんな人に起こりやすいのでしょう?

「子宮頸部にダメージがあるとなりやすいことは、わかっています。流産や中絶を経験した人も。掻爬(そうは)手術の際に医療器具で子宮頸部を傷つけてしまうことがあるのです。また子宮頸がんで、円錐切除手術を受けた人も、子宮頸部が短くなっているのでリスクがあります。先天的に子宮の形や構造に問題がある人もいます。前回のお産で子宮頸部が短くなっていると指摘された人も、リスクがあると考えたほうがいいですね」(大井先生)

しかし原因がわからない場合も多く、一人目は妊娠10ヶ月を迎えて産んだのに、二人目、三人目で子宮頸管無力症になったという人もいます。

「子宮頸管無力症と診断されて、次の妊娠で再発する割合は30%程度。ですから、前回、診断された人は念のため今回も子宮頸管を縛っておきましょう、となることが多いですね」(大井先生)

子宮頸管無力症になりやすい人はこんな人

  • 先天的に子宮頸管が短い
  • 先天的に子宮に奇形がある。
  • 流産したことがある
  • 中絶したことがある
  • 子宮頸がんで円錐切除手術をした
  • 前回のお産で子宮頸管が短いと言われた
  • 前回のお産で子宮頸管が傷ついた

経腟でのお産は可能、次の妊娠も縛ることが多い

妊娠36週になると、正期産の37週まであと1週間。もうほぼ赤ちゃんが外に出てきてもだいじょうぶという頃に、子宮頸管を縛った人は抜糸します。特に問題なければ、自然な陣痛を待っての経腟分娩が可能です。

抜糸をすると、すぐに生まれる場合もあれば、しばらく時間がかかる人もいます。

「子宮頸管無力症を予防する方法は特にありません。自覚症状がないのが怖いところですが、まずは妊婦健診を欠かさずに、しっかりと受けましょう。また、おりものがいつもと違う、出血がある、などの異常があったら、早め早めに医師の診察を受けてくださいね」(大井先生)

  • 子宮頸管無力症体験談「わたしの場合」は、『ベビータウン』アンケートにご協力いただいた方の体験です。ほかにもたくさんの方にご協力いただきました。ありがとうございました。

update : 2014.09.03

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