絨毛膜羊膜炎とは?原因や症状は?

赤ちゃんを包んでいる膜が炎症を起こす「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん/CAM)」。早産の最大の原因となっている感染症です。ママにとっては非常に怖いものですが、その引き金となる「細菌性腟症」は妊娠中でなくてもかかるありふれた病気。しかも、体のどこにでもいる悪玉菌によるものなのです。この身近に潜む脅威に、対処法はあるのでしょうか?
ここでは、ドクターに聞いた絨毛膜羊膜炎が起きるメカニズムや、原因となる細菌性腟症の予防法をご紹介します。

取材協力・監修

久保隆彦(くぼたかひこ)先生

早産の最大原因、
なのに体験者が見つからなかった…ワケ

毎回、実際に病気を経験した方の貴重なお話からスタートしている、このシリーズ。ですが、じつは今回、体験者を見つけられませんでしたm(_ _)m いろいろ手を尽くし、いつものように『ベビータウン』会員のみなさんにも呼びかけてみたのですが……。

絨毛膜羊膜炎は、早産のもっとも大きな原因といわれているのに、いったいなぜ?取材が進むうちに、そのワケが見えてきました。

「絨毛膜羊膜炎は、じつは妊娠中には、はっきりと診断できない病気なのです。確実な診断は、胎盤を病理検査に出すことで可能になります。私が勤める国立成育医療研究センターでは、早産した時にその検査を行っていますが、ほかの病院、クリニックで、どこまで検査が行われているか……わかりません」という久保隆彦先生。

妊婦にとっても、切迫早産や早産といった今起きている事態に対処することに懸命で、その原因かもしれない病名にまでは、思いが及ばないのかもしれません。

でも、原因を知れば、予防法にもつながるかもしれません。切迫早産や早産の大敵、「絨毛膜羊膜炎」の正体を解明していきましょう。

炎症で活性化する物質が、
破水、頸管熟化、子宮収縮を引き起こす

「病名にある、絨毛膜と羊膜というのは、赤ちゃんを包んでいる卵膜のこと。これらが炎症を起こすから、絨毛膜羊膜炎なのです」(久保先生)。

赤ちゃんを包んでいる膜が炎症を起こすと、なぜ、早産につながるのですか?

「炎症が起きたところには、血液中の好中球という白血球が集まってきて、原因となっている細菌を食べて、退治しようとします。そのときに出る物質が、卵膜や頸管のコラーゲンを分解してしまうのです」

コラーゲンが分解されるということは、膜の組織が弱くなるということ。破れやすく、破水しやすくなります。頸管組織も柔らかくなって(熟化)、赤ちゃんが産まれやすくなるのです。

また、炎症によって活性化するプロスタグランジンという物質には、子宮の筋肉を収縮する働きがあります。“早産の危機”が迫るのです。

炎症を引き起こす原因菌は、どこにでもいる菌だった

炎症を起こし、早産を招く細菌は、いったいどこから来た、どんな悪い菌なのでしょう?

「特別な菌ではありません。皮膚にもついている、口の中や腸、大便、腟の中にもいる、どこにでもいるありふれた菌なのです」(久保先生)。

腟の中には、いわゆる善玉菌もいれば、悪玉菌もいます。正常なときは善玉の乳酸菌が多数派を占めています。ところが、それが逆転してしまうことがあるのです。

乳酸菌は、腟内を酸性に保って悪玉菌の繁殖を防いだり、病原体の侵入を防ぐ役目をしています。しかし、悪玉菌が増え、悪玉菌が作るアミンやアンモニアが増えると、腟内の酸性が弱まります。こうなると腟は自浄能力を失い、病原体の侵入を防ぐ能力も低下。さまざまな菌が繁殖する温床となるのです。

「悪玉菌が支配すると細菌性腟症になるのですが、これは、妊娠してなくてもなる、とてもありふれた病気です。妊娠中も2割くらいの人が経験します。魚の生臭い臭いがしたり、おりものが増える……などの症状が出る人もいますが、半数以上は無症状。自然に治ってしまうことあります。でも、この細菌性腟症が絨毛膜羊膜炎を起こす大もとなのです」

悪玉菌が上へ上へと勢力拡大。卵膜から
やがて赤ちゃんにも……。

腟内を支配した悪玉菌は、上へ上と侵攻して勢力を拡大。そうなると行く先々で、炎症を起こします。まず腟炎を起こし、子宮頸管炎を起こし、そして、ついに赤ちゃんを包む膜にまで到達――。それが、絨毛膜羊膜炎です。

絨毛膜羊膜炎が進み、さらに羊水やへその緒、胎児にまで到達すると、赤ちゃんの脳や肺、腸など全身に障害をもたらすことも。

「ですから、早産が起きるのは、赤ちゃんにまで感染を広げないための自然の摂理、ともいえるのです」(久保先生)

症状によって、また妊娠週数によって、治療法が異なる

妊娠中は正確な診断ができないという、絨毛膜羊膜炎。対処法、治療法はあるのでしょうか?

「まずは細菌性腟症の段階で、症状が出た人に対応します」(久保先生)

「おりものが魚臭い」「おりものが灰色がかっている」「おりものがいつもと違う」ときは、必ず医師に相談しましょう。

医師は、腟分泌物や頸管粘液などを検査して、必要と判断したら抗菌薬を使います。

妊娠週数にもよりますが、子宮収縮抑制剤なども使って早産を予防します。

しかし、「下腹部痛」や「38度以上の高熱」「母親と胎児の脈拍が速くなる」などの症状が出ていたら、無理に早産を防止するより、赤ちゃんを外に出すことを考えます。

「早産は胎児に感染させないための自然の摂理といいましたが、そのとき胎児が何週になっているかが重要です」

胎児の肺の機能が未熟な妊娠24週未満だと、たとえ生まれても赤ちゃんの命や後遺症の危険が高いので、子宮収縮抑制剤や抗菌剤などを使って、できるだけ早産を予防します。

しかし、妊娠24週以降になると、新生児集中治療室(NICU)で赤ちゃんを管理できる周産期センターでは、積極的に分娩をすることが多いそうです。

こんな症状があったら、病院へ

  • おりものが魚臭い
  • おりものが灰色がかっている
  • おりものがいつもと違う
  • 下腹部が痛い
  • 38度以上の熱が出た
  • 脈が速い

よく言われる当たり前の健康生活こそ、
いちばんの予防法!

赤ちゃんは、できるだけ満期までお腹の中で育ててあげたい――。絨毛膜羊膜炎を起こして早産、ということに、なるべくならないようにするため、私たちにできることはあるのでしょうか?

「絶対的な予防法というものはありません。でも、妊娠中は無理しないことです。バランスよい食事、充分な休養、睡眠、適度な運動、ストレスを避ける……などの生活を心がけてください」(久保先生)

また、セックスにも要注意。精液や腟内の刺激は、細菌のバランスをくずすきっかけになりやすいのです。医師からストップがかかったときはもちろんセックス禁止。ですが、禁止といわれていなくても、妊娠中のセックスは、コンドームを付けたほうが、いいそうです。

「腟を洗いすぎてもいけません。乳酸菌まできれいに洗い流してしまうと、細菌のバランスがくずれ、悪玉菌が増える引き金になるからです」

ホルモンのバランスが変わり、免疫力も下がる妊娠中。できるだけゆったりと、明るい前向きな気持ちで、できる限りの健康生活を送ること。体力を養って、免疫アップを心がけたいですね。

細菌性腟症・絨毛膜羊膜炎を遠ざける生活を!

  • 妊娠中は無理しない
  • バランスのいい食事をする
  • 十分な休養をとる
  • 十分な睡眠をとる
  • 適度な運動をする
  • ストレスを避ける
  • ゆったりした気持ちで過ごす
  • セックスしていいかどうかは、医師の指示に従う
  • セックスするときは、コンドームを使う
  • 腟を洗い過ぎない

取材協力・監修/久保隆彦(くぼたかひこ)先生

 

update : 2014.11.05

  • お気に入り機能はブラウザのcookieを使用しています。ご利用の際はcookieを有効にしてください。
    また、iPhone、iPadのSafariにおいては「プライベートブラウズ」 機能をオフにしていただく必要があります
  • cookieをクリアすると、登録したお気に入りもクリアされます。

Share