前期破水とは?

「これって尿もれ?それとも羊水?」――。妊娠すると、たびたび惑わされてしまう、「尿もれ or 羊水」疑惑。尿ならあせることはないけれど、もしも羊水だったら、すぐに入院しなくてはいけません。
赤ちゃんが生まれるより前に羊水が流れて出てしまうことを、「前期破水(PROM)」といいます。羊水が減ってしまうと赤ちゃんの発育に影響するため、早産のリスクが高まってしまいます。
少量の場合は尿もれと区別することが難しい破水。ここでは、先輩ママの前期破水体験談とともに、ドクターに聞いた対処法をご紹介します。

取材協力・監修

久保隆彦(くぼたかひこ)先生

前期破水体験談「わたしの場合」1

東京都に住むNさんが、妊娠35週のときでした。夕食を終え、キッチンで後片付けをしていると、生理の血が出てくるときのような感覚……。トイレへ行ってみると、下着が少し濡れていただけでした。

「妊婦によくある、ただの尿もれだと思ってナプキンを付けたのですが、その後も同じような感覚が続いたので、病院に電話したんです。すると、もし破水だったらそのまま入院になるので、準備してきてください、と」。

すぐに病院に行き、検査をすると、「前期破水」の診断で即入院。

「まさか1ヶ月も早く破水なんて…。お腹の赤ちゃんは元気、と言われたのですが、いつ急変してもおかしくない状態、と言われて、不安でしかたありませんでした」

入院後は、動くともれがひどくなるというので、安静の日々。毎日3回、1回30分かけて抗生物質の点滴。さらに1日3回、1時間近くかけて、赤ちゃんが元気かどうか心拍の確認。血圧や羊水量も確認したといいます。

「2~3日以内に陣痛が来るでしょう、と言われてあせりました。まだ1ヶ月先と思っていたので、心構えが出来ていなかったんです。赤ちゃんも無事に生まれて来れるのかな…と」

ところが、2日、3日…5日経っても陣痛が来ない。幸いおなかの赤ちゃんも元気ということで、主治医の先生も助産師さんも、破水してこんなに陣痛が来ないのは異例だ、と驚いていたといいます。もちろん、赤ちゃんが元気なら1日でも長くお腹にいて欲しいと、Nさんはお腹をさすりながらお願いしていました。

入院7日目の朝、ついに陣痛発来。この時には妊娠36週を過ぎていたので、不安も減っていたといいます。そして、陣痛から10時間。元気な男の子を出産。

「初産だったのでもっと時間がかかる覚悟をしていたのですが、主治医の先生も助産師さんも驚く程、スムーズな安産でした。私が頑張って息子を産んだのではなく、息子が頑張って生まれて来てくれたんだ、と感じています。生まれて来てくれてありがとうね、と話しかける毎日です」

前期破水体験談「わたしの場合」2

神奈川県に住むMさんは、1人目のときも2人目のときも前期破水になりました。

「1人目のときはウィルス性腸炎になって吐いて下してしまい、刺激されたのか、破水。でも37週0日だったので正期産でした。鉗子吸引、会陰切開になりましたが、2500gを超えた元気な赤ちゃんでした」

2人目は、切迫早産の疑いで薬を飲んでいて安静にしていましたが、35週で破水。前回の経験から病院に行くまではいたって冷静。陣痛促進剤で経腟分娩する予定でいたのに、赤ちゃんが酸素不足になり、NICU(新生児集中治療室)のある医療センターに運ばれて、緊急帝王切開に。

「2200gの低体重で産んでしまったことがショックで、毎日泣いてました。帝王切開後の傷口も痛くて、思うように動けず…。でも、お乳を絞っては病院通い。2週間後に退院できて一緒に過ごせるようになって、やっと出産後の幸せがやってきた感じです」

前期破水体験談「わたしの場合」3

千葉県に住むKさんは、2人目の妊娠のとき、絨毛膜下血腫(胎盤の絨毛膜と脱落膜の間に血が溜まること)による出血が続き、切迫流産で入院。しかし、なかなかよくならず破水も起こりました。妊娠5ヶ月でした。医師からは、「羊水がほとんどなく、数日後羊水がたまってきたが障害が残る可能性がある」というので、赤ちゃんを断念したといいます。

「信じられない気持ちでいっぱいでした。自分を責め続けています」

羊水がもれてしまうと、赤ちゃんが苦しくなる

「羊水は赤ちゃんを育てる海ですが、この水は生まれるときにはウォータースライダーのような役目をするのです。赤ちゃんといっしょに流れ出ることですべりやすくなり、お産がスムーズに進むのです」という、国立成育医療研究センター・産科医長の久保隆彦先生。

ところが、赤ちゃんが出てくるより“前”に、羊水が流れ出てしまうのが、「前期破水(PROM)」。妊娠37週を過ぎた正期産でも、それより前の早産でも、赤ちゃんより先に羊水が流れてしまえば、前期破水です。

「羊水が減ってしまうと、赤ちゃんと子宮の壁との間に、臍の緒(臍帯/さいたい)がはさまれて圧迫されたりするのです。赤ちゃんが元気なら、臍帯の血流も勢いがあるのですぐにつぶれたりはしませんが、弱ってくると血管の圧も低くなり、つぶれやすくなるのです」

臍帯が押しつぶされてしまうと、赤ちゃんに充分な酸素や栄養が届きません。また羊水が少なくなれば子宮の壁に赤ちゃん自身も圧迫され、それが長びけば、体の発達にも支障が出てくるのです。

赤ちゃんを外に出すか出さないか、34週が境目

破水したということは、卵膜が破けて子宮の中と外がつながってしまったということ。破水をして時間がたてばたつほど細菌感染もしやすくなります。また、すでに細菌感染していて(絨網膜羊膜炎など)、卵膜が弱くなって破けたとすれば、胎児への感染がさらに進む可能性があります。

医師は、感染症の有無や、胎児が元気かどうか、体温や脈拍、血液なども検査。母体と胎児を管理します。

「37週過ぎた正期産で破水した場合は、48時間以内に多くが自然に陣痛が来てお産になります。37週より前でも、破水すると陣痛が来て早産になることが多いのです」(久保先生)

37週過ぎていれば、赤ちゃんは成熟しているから、外に出てもだいじょうぶでしょうけれど、それより早いときは、どう対処するのでしょう?

「34週過ぎれば、肺機能もだいぶ育ってきているので、陣痛が来なければ分娩誘発や帝王切開などして外に出すことが多いですね。おなかに残しておくと細菌感染しやすいからです。赤ちゃんに感染すると、脳や肺、腸など全身に障害が起きかねないので、早く外に出したほうがいいのです」

では、34週より前に破水が起こったら……?

「リスクに対してどこまで対応できるか、施設によって対応が変わってくると思います。対応できないと判断した場合は、NICU(新生児集中治療室)などのある病院に搬送されるでしょう」

久保先生が務める国立成育医療研究センターは、こうしたハイリスクなお産に対応できる病院。ここでは、34週よりもっと前の26週の対応が境目になっているといいます。

「成育では、26週を過ぎていれば、破水後、ある程度自然の経過にまかせます。陣痛がおこって、未熟な赤ちゃんが外に出てきても対応できるからです」

しかし、それよりも早い場合どうするか――。外で生きていくためには、まだあまりに未熟過ぎる。といって、張り止め薬などを使っておなかに残しておくと、胎児感染を起こしかねない……。メリットとデメリットを慎重にはかりながら、対応していくといいます。

尿もれ?破水?どっちかよくわからない!

今回、『ベビータウン』で前期破水についてアンケートをしたところ、「ブチっという音がして水が出てきた」「お腹のなかで突然パンっ!と針を指した風船みたいに感じた」…という人が2人いました。

しかし、多くの人が次のように、一度は「尿もれ?」と疑っています。

  • 「朝方寝ていたら、なんだか濡れてる感じがしてトイレに。尿もれ?破水?」
  • 「トイレに立ったときに、尿もれのような感じがあり、でも少量で止まったので、破水じゃ無く、尿もれかあ~~と思っていた…」
  • 「夜中に尿意で目が覚めたが、トイレに着く前にジョボジョボ~と。その時は、漏らしてしまったな~、と思っただけでした」
  • 「夜中トイレに行って、なかなか収まらずひどい尿漏れかと思うくらいの量だったが、時間が経つにつれて、どんどん羊水が出てきたので、破水だと気がついた」
  • 「家で寝ていて、何かお漏らしをしたような気がしてトイレへ行ったら、ドバドバ水が出たので破水だと思った」

尿と羊水は、なかなか見分けがつきにくいようです。よく「おしっこの匂いがするかどうか」といいますが…?

「まず本人には区別がつかないと思います。ジャーと出たから羊水だ、と思っても、おしっこだった、ということもあるんです。尿もれとも破水とも気づかず、病院に行ったときには、すでに羊水が少ししかなかった、ということもあります」(久保先生)

尿もれ?破水?検査で間違うこともある

「電話で聞いただけではわかりませんから、とにかく病院に来てください、というしかありません」と久保先生。

尿もれか、羊水か、検査してさえ間違えることもあるといいます。

「ジャージャー出てたらわかりますが、少ししか出ていないと判断がつきにくい。クスコ(腟鏡)で見て腟の中に水が溜まっていたら破水かな、と。そこに試験紙でアルカリ性と出れば、破水となりますが、血液が混じってもアルカリ性になるので、間違いやすいのです。その時には羊水中に存在する物質で破水の有無を確認する簡易検査もあります」

尿は酸性、羊水はアルカリ性。血液もアルカリ性。妊娠中はたびたび出血するので、血液が混じってしまって、正しい検査結果が出ないことがあるのです。

「入院するのは、陣痛が起きたときと破水です。みなさん、出血すると心配で電話をかけてきますが、満期で内診後3日や4日出血するのは当たり前です。一人産んで経験すると、出血はたいして気にならなくなります」

原因不明も多く、予防法もない。
だから自分を責めないで

前期破水の原因は特定できるのでしょうか?

「絨網膜羊膜炎などで卵膜が炎症を起こしていれば、膜の組織が弱くなって破れて羊水がもれることがあります。また、羊水過多、多胎妊娠、子宮奇形などで、子宮の中の圧力が上がってしまって、卵膜が破れることもあるでしょう。また羊水検査で羊水穿刺したことが原因になることもあります。ただ、そうした要因がないのに破水してしまう、原因不明も多いのです」(久保先生)

アンケートでは、前期破水で帝王切開になったり、未熟児で生まれたり、死産となってしまったお母さん方から、自分を責める言葉がたびたび聞かれました。でも、原因も特定できず、予防法もないとなれば、責任はありません。自分を責めてはいけません。

前期破水体験談は、『ベビータウン』アンケートにご協力いただいた方の体験です。ほかにもたくさんの方々にご協力いただきました。ありがとうございました。

 

update : 2014.12.03

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