“体毛”の悩みには「皮膚科式毛ケア」

つわりがおさまり、お腹が目立つようになったころ、「なぜか体毛まで目立つようになっちゃった……」という話をよく耳にします。女性として、体毛が濃いのは恥ずかしいもの。それなのに、へそ毛にわき毛にまゆ毛、うなじ、背中、そしてアソコの毛まで……! 妊娠中に体毛が濃くなるのはどうしてなのでしょうか?
今回は、『くぼ皮膚科クリニック』院長の久保佳多里先生に、妊娠中に体毛が濃くなる理由や、肌のことを考えた正しい処理方法を伺いました!

取材協力・監修

おしゃれで癒される『くぼ皮膚科クリニック』の待合室。

皮膚科医・美容皮膚科医
久保佳多里(くぼかおり)先生

なぜ増える!?妊娠中の体毛の不思議

平成生まれのプレママも、なぜか知ってる「ギャランドゥ」。おへそから下の部分、ちょっと恥ずかしい陰毛エリアにかけて生えてくる毛の俗称ですが、妊娠すると、この「ギャランドゥ」が濃くなった……という話をよく聞きます。

「ん~、確かに妊娠中は、ホルモンの影響で毛が濃くなる方はいらっしゃいます。ただ、みんながそうではないです。濃くならない、という人もいます。体毛はかなり個人差がありますので、おへその下だけに集中して生えてくる、という人もいないことはないでしょうけれど……」

今回も、前回に引き続き、関西弁まじりのやさしいトークがステキな皮膚科医の久保佳多里先生にうかがいました。産前産後の「毛」事情って、どうなっているのでしょう?

「妊娠中は女性ホルモンが非常に多く分泌されます。女性ホルモンは発毛を促す作用もありますし、抜け毛を促進する男性ホルモンを抑える働きがありますから、毛が増える人、抜けにくくなる人、こうした作用で“濃くなった”と感じるのではないでしょうか」

やっぱり気のせいじゃなかったんですね!それにしても、なぜこうしたことが起きるのでしょう?

「う~ん、なぜでしょう(笑)。お腹を守るためとか、赤ちゃんを守るためとか、母性的な解釈はいろいろできるでしょうけれど、理由は解明されていません。毛深くなるのは女性ホルモンが活発になっている証拠。医学的な見地からは、ホルモンの副次的な作用としか言えません」

抜くのはNG!やさしく剃るのが正解です

つまり毛深くなるのは、妊娠の宿命。どうにも方法はない、ということでしょうか?

「わき毛などたくさん生えてきて、どうしても気になる、どうにかしたい、というときは剃るしかないですね…」

剃る!しかない……のですね。

「そう……でも、妊娠中のお肌は、前回もお話した通り、ちょっとした刺激にも過敏な状態になっていますので気をつけてお手入れしてくださいね」

抜くのがいけないのは、なぜですか?

「毛抜きで一本一本処理するのはていねいな方法のようにも思えますが、毛穴にかなり負担がかかります。毛をムリに抜くと、毛穴はボコッと大きく穴が開いたような状態になります。そこに雑菌が入り込んでしまうことがあるのです。繁殖して炎症を起こしたら、大変です。また色素沈着を起こすもとにもなってしまいます」

わかりました!では、正しい毛の剃り方を教えてください。

「お風呂にしっかりと浸かって皮膚と毛をやわらかくしたあと、よく切れるカミソリを、毛の流れにそってやさしーく、やさしーく動かしてください。このとき、極力石けんやボディソープなどを使わないで下さい」

ええっ!石けんいけないんですか?ボディソープも?よく使っているんですけど……。

「ダメダメ、絶対やめて~!!必要な皮脂も奪ってしまいますよ!乾燥の原因になります。処理したあとは、しっかり保湿することも忘れないでくださいね。わきの下って、なぜか制汗剤は塗っても、ローションやクリームは塗らない人が多いんです。わきの下だって、お顔と同じ肌ですから、同じようにスキンケアしてあげてください」

“わきも顔も同じ肌”この言葉、響きましたっ!!

毛対策に、毛抜きはNG。カミソリで、やさしくやさしく剃ること。

頭皮も顔と同じ肌。こすらず、やさしく、保湿ケアを

「わきの下だけでなく、頭皮だって肌ですよ」と、さらに久保先生は続けます。

「テレビCMなどの影響でしょうけれど、頭皮のケアというと、ことさらディープなクレンジングで皮脂を徹底的に取り除くというイメージが強いように思います。でもこれ、皮膚科医からしたら“やめてーっ!!”と悲鳴を上げてしまうレベルです(苦笑)」

皮脂を取り除きすぎると、皮膚は乾燥を防ごうとして、よりいっそう皮脂を分泌します。頭皮がベタベタしている、オイリーかも、と感じたら、それはむしろ乾燥のサインだそう。

髪、まさかの「洗い過ぎ」!!

それに確かに顔は、洗ったあとにローションや乳液で保湿をするけれど、頭皮は放ったらかし。ちょっと差別しすぎていたかもしれません。

「前回紹介した、皮膚科で処方するヘパリン製剤(ヘパリン類似用物質)は、顔やボディはもちろん、頭皮や唇など全身に使える保湿剤です。化粧水タイプ、乳液タイプ、クリームタイプといろいろありますが、頭皮ならサラッとしたローションタイプか乳液タイプがいいでしょう。乾燥の度合いと季節に合わせて、使い分けてもいいですね」(久保先生)

「ヘパリン類似物質」といわれる代表的な処方薬。「ヒルドイド」(②、⑤、⑥)は天然保湿成分のミツロウを含みます。「ビーソフテン」(①、③、④)は価格が安いジェネリック医薬品。

頭皮への保湿、さっそく取材から帰って実践してみました。想像していたようなべたつきや違和感はゼロ。塗ったらすぐに頭皮に浸透して、髪がオイリーになることもありませんでした。むしろ、心なしか髪がふんわりしている?と感じることも。

「ヒルドイド」のローションタイプは、乳液に近い感じ。指の腹で地肌にやさしく押さえるように塗る。

ジェネリックの「ビーフソフテン」は、さらにさらっとしたローションタイプ。

出産するとゴッソリ!抜け毛へ心の準備をしておこう

「毛が濃くなる妊娠中は、まだ剃ったりできるからいいんです。“毛”のお悩みが増えるのは、むしろ産後のほう。まあ、ほんとに、ゴッソリ!抜けますからね(苦笑)」

二児の母でもある久保先生。体験からの実感がこもっています。

「髪の毛は、毛根が休んでいる時期から、徐々に毛が成長して、退行して、毛が抜けて、再び休止期へ…というサイクルを繰り返しています。このサイクルが、それぞれの毛穴で、ばらばらのタイミングで起こっているので、髪は常に一定の量が生えているように見えます。しかし、出産をすると、このサイクルが一斉に、休止期に入ってしまうんです」

つまり出産をすると、しばらくは新しい髪が作られなくなる、ということ。そうなると、一時的に“古い世代”の髪ばかりになって、あるとき一気に卒業してしまう。急に髪が抜けてしまうように感じる……というわけです。

「産後すぐから、少しずつ抜け始める方もいれば、産後3ヶ月から半年ほど経ってゴソッと抜ける方もいます。それはもう、恐ろしいくらいに抜ける方もいます。額が薄くなって後退したという人、頭頂部が特に薄くなったという人、いろいろです。でも、中にはあまり抜けなかったという方もいて、かなり個人差があります」

髪が薄くなっていくのは、かなり厳しい悲しい現実ですね……。

「そうですよね……。産後はそれでなくとも、赤ちゃん優先で、自分のことは後回し。身なりにもかまっていられません。そこへ追い打ちをかけるように、髪が抜けてしまう……。女性としての魅力を失ってしまうのでは、と、ショックを受ける方もいらっしゃいます。でも、必ず!半年から、長くとも1年を過ぎる頃までには、必ず生えてきますから。どうかネガティブにならないで!」

ガシッと記者の肩をつかんで、力強く断言してくれた久保先生。心強いお言葉です!

妊娠中から正しいシャンプーをマスター!

妊娠中の敏感な頭皮対策として、そしてまた産後の抜け毛を最小限に押さえるために、今日から正しいシャンプー方法を身につけてほしい、と久保先生。

「とにかく地肌や髪をこすらないこと!」

そう、前回も「お肌の大敵はこすること」とおっしゃってましたね。

「そうです。頭皮も同じ肌ですからね。シャンプーは、弱酸性で刺激の少ないものをしっかりと泡立てて。地肌や髪の毛で泡立ててはいけませんよ。泡で出てくるフォームタイプのシャンプーもおすすめです。こすらずに泡で地肌も髪も洗うようにしてください」

「シャンプー後のブラッシングも、毛根や頭皮を傷めるポイントです。絶対にひっぱったりしないで!!髪がからまったときは毛束を手で持って、毛根に力がかからないよう、そっとブラッシングしてください」

指の力でこすって洗うのではなく、泡で洗う…。なんとなく頼りない感じがしますが、洗い過ぎをやめると、皮脂の分泌量もおさまっていくそう。

レーザー脱毛は産後、
まつ毛ケアは授乳終了後のお楽しみ

皮膚科と美容皮膚科が併設されている久保先生のクリニック。レーザー脱毛に通っている女性も多いそうですが、妊娠中は、こうした脱毛術はできなくなるそうです。

「妊娠中でもOKというエビデンスが確立していないので、残念ながらレーザー脱毛は産後のお楽しみです」

また産後は、髪の毛だけでなく、まつ毛まで薄くなってしまう人もいるそう。

「パラパラと抜け落ちて、気がついたら、まつ毛がなくなっていた…という人もいます。こちらも髪と同様に自然に戻ってきますので、しばらく待ってくださいね。でも、もし、生え揃ってこないという場合は、授乳が終わってからになりますが、“まつ毛貧毛症”の治療薬を使うこともできます」

「出産すればできることがある。授乳が終わればできることがある。段階によって取れる手段は少しずつ増えていきます。どうか、あまり悩まずに、いまこのときしかないマタニティ期です。楽しみながら、そして皮膚科医も頼りながら、過ごしてください」

乏しくなったまつ毛の治療薬「クラッシュビスタ」。まつ毛の生え際に塗ることで、発毛が期待できる。保険適用外。

update : 2016.02.03

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