つわりがない人は、どんな人? 特徴とその原因
つわりは、重いより軽いほうがいい。つらいよりつらくないほうがいい。あるよりも、ないほうがいい。とはいえ、まったくない、というのもちょっと不安…。ちょうどいい感じ、というふうには、なかなかならないですね。今回は、つわりがない人のお話。何か特徴があるのなら知りたい。そこで、産婦人科医、島岡昌幸先生(京都市・島岡医院院長)にぶつけてみました。
監修者プロフィール
島岡医院(京都市南区)院長
島岡昌幸
「母と子がハッピーになってほしい」と願い、専門の周産期医療はもとより、育児や子どもの皮膚のことなど、日夜勉強を重ねている。母と子が集い学び楽しむ「親育ち、子育ち」の場も多数企画。1970年関西医科大学医学部卒業。同大学附属病院産科主任、大阪府済生会泉尾病院産婦人科医長、奈良東生駒病院初代院長を経て、1983年、島岡医院院長。
つわりがない人っているの?
5人に1人はつわりがない!
つわりを経験する人の割合ですが、産婦人科医の論文に多いのが、約80%です。なかには、50~80%、50~90%という論文もありますが、80%という数字が多いようです。つまり、5人に1人はつわりがない幸せ者!なのです。
つわりがない人は順応性が高い?
つわりの明確な原因は医学的には不明ですが、妊娠初期のホルモン環境や代謝、生活環境などの急激な変化に適応できないためとされています。つまり、つわりがない人は、これらの変化にうまく順応できる人といえるでしょう。
とくに妊娠初期にはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが急激に増えて、妊娠10週にはピークを迎えます。hCGは妊娠継続に重要な役割を果たしているのですが、これが、つわりの大きな原因ではないかといわれています。ですから、hCG量が増えない人の場合、流産の可能性が高くなります。
しかし、妊娠が継続していて、なおかつ、つわりがない、という人の場合、hCG量がほかの人より低いせいだとは思えません。つわりがないのは、ホルモン環境の変化に適応力がある、順応性が高い、あるいはストレスに強い体質といえるのかもしれません。
つわりがないのには原因がある?
つわりがない人の原因は追究しない?
病院は病気の人を迎え入れます。唯一、病気ではない人を多く診察するのが産婦人科の妊婦外来です。定期健診でいろいろな検査をしますが、合わせて体調について質問をします。「つわりがあります」といわれれば耳を傾け、症状を聞き取り、軽ければ日常生活での注意や対策を伝え、重いときは必要であれば治療や入院を勧めます。
しかし、超音波検査で妊娠の継続を確かめたあとに、「つわりはありますか?」と聞いて「ありません」という答えが返ってくれば「それはよかった」で済んでしまいます。つわりがない人の原因や理由を深く問いただすことはありません。原因究明は無理ですし、その必要もありません。
おなかの中で胎児が順調に育っていて、しかもつわりがなければ「ラッキー!」と喜んでください。
つわりがない人の特徴は?
つらさを感じない環境のせいかも?
「これがつわりかも?」と思う程度なら、軽いつわりです。しかもその症状が日常生活に影響を与えなければ、本人は「つわりはほとんどない」と感じるでしょう。
- 眠いけれど、仕事などで外出しなくてすむので眠ければ寝ていられる
- おなかがすくと軽い吐き気があるけれど、すぐに食べたい物を食べれば吐き気は収まる
- 料理をすると臭いで軽い吐き気を感じるけれど、夫は手料理を要求しないので出来合いのお総菜などで済ますことができる
こうした環境なら、本人はつわりがつらいと感じないかもしれません。つわりがある、ないには、現在おかれている環境も、深く関係していると思われます。
つわりがないと流産が心配!?
流産を知る手がかりは、つわりだけではない
つわりが始まる妊娠5週ころからピークの妊娠10週ころは、流産が心配な時期と一致します。つわりがないと、「赤ちゃんはだいじょうぶ?」と心配になる人もいるでしょう。たしかに、つわりが急になくなって心配になり受診したところ、残念なことに胎児死亡が確認された、というケースもあります。確かに、つわりの有無は、流産を知る手がかりのひとつだとも言えるでしょう。
しかし、今はエコー・超音波検査があります。この時期には頻繁に超音波検査を行い、胎児心拍(胎児の心臓の鼓動)を調べて胎児が生存していることを確認しています。今の時代、つわりだけが赤ちゃんが元気かどうかを知る手がかりではないのです。つわりがないと流産が心配という人がいますが、超音波検査で「順調」といわれたら、だいじょうぶと受け取りましょう。
一度あったつわりがなくなったのは…
一度あったつわりがすぐになくなった、という場合には、「生化学的妊娠」の可能性もあります。「生化学的妊娠」とは、受精卵が子宮内膜への着床に失敗したケースをいいます。比較的よく起こる現象で、臨床的妊娠(妊娠と確定すること)ではありません。
以前は、月経が少し遅れた程度の理解でしたが、最近は早くから感度のいい妊娠検査薬を使うことが多いので、それと気づくことも多いのです。生化学的妊娠は、以前は「化学流産」「化学的流産」と呼ばれていました。しかし、本当の流産とは異なるので、混同しないように名称が変わりました。
update : 2017.04.23
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