妊婦の腰痛!原因と対処法!マッサージの方法とは?
妊娠週数が進むにつれて、ママの体は大きく変化します。特に妊娠後期になると、多くのママが経験するのが腰痛です。妊婦の腰痛の原因と対処法などについて、マタニティマッサージで腰痛ケアを得意とする、やまどう鍼灸接骨院院長の牧華子さんに解説していただきました。プロが教えるマッサージやストレッチも、ぜひトライしてみましょう!
監修者プロフィール
牧華子院長
やまどう鍼灸接骨院
看護師として婦人科・整形外科・泌尿器科を経験。柔道整復師として活動後、2007年より院長としてやまどう鍼灸接骨院にて施術を行う。マタニティマッサージや妊娠線予防ケアなど、妊婦向けメニューが評判。
妊婦の腰痛の原因って?なぜ起こるの?
出産までに、ママの体はおなかの赤ちゃんの成長とともにさまざまに変化し、痛み、違和感、疲れなどの症状が現れます。妊娠中の体の症状は、週数によって変化します。中でも腰痛は、おなかが目立つようになる中期から現れ始める代表的なマイナートラブルで、妊娠後期には多くの妊婦さんが悩むようになります。腰痛の主な原因を紹介しましょう。
反り腰の姿勢
おなかが大きくなってくると体の重心が前に移るため、どうしても上半身を反らした姿勢(反り腰)で立ったり座ったりするようになります。そのため、背中から腰にかけて負担が大きくなり、腰痛になることがあります。
ホルモンの作用
妊娠すると、リラキシンという女性ホルモンが胎盤から分泌されます。リラキシンには、出産のとき赤ちゃんがスムーズに狭い骨盤を通れるように、骨盤の関節や靱帯を柔らかくする作用があります。そのため大きいおなかを支える力が弱くなり、腰に負担がかかるのです。
心理的不安
出産には、「おなかの赤ちゃんは元気?」「スムーズに出産できるかな」といった不安がつきものです。心理的なストレスによって自律神経のバランスが乱れると、胃腸に悪影響を与えます。胃腸の症状は、胃の裏側にある背中の神経に伝わって痛みを引き起こし、痛みがひどいと腰まで広がることがあります。
妊婦の腰痛の対策は?
日常の姿勢や動作に気を配ることが必要です。次に挙げたことに配慮して、腰痛を少しでも和らげましょう。
立つときは、正しい姿勢を心がける
油断していると、おなかを突き出して反り返る姿勢になりがちです。立つときは、下腹部に少し力を入れて、おなかの赤ちゃんを背中側に寄せるイメージでちょっぴり引っ込めます。背筋が伸びて、反り腰が解消される立ち方です。
起き上がるときは両手で体を支えながら
起床時など、横になっていた姿勢から起き上がるときは、横向きになって両手で体を支えながら、ゆっくりと起きましょう。あお向けの状態で起き上がるのは、おなかや腰にダイレクトに力が入るので要注意。
動くときはゆっくりと
歩くとき、イスから立ち上がるときなど、急に動くと腰に負担がかかるので、ゆっくりした動作を心がけてください。
モノを持ち上げるときは、いったんしゃがむ
モノを持ち上がるときは、立ったまま持ち上げようとするのはNG。いったんしゃがんで片ひざを床についてから、ゆっくり持ち上げるようにするとよいです。上の子を抱っこするときも同様です。
靴はローヒールを選んで
ハイヒールや足に合わない靴を選ぶと、体のバランスが悪くなって姿勢に影響し、腰に負担がかかります。転倒の原因にもなるので、ローヒールを選びましょう。
歩くときは、おなかを突き出さないように注意
外出やウォーキングなどをするときは背筋を伸ばし、腰から前に出すようなイメージで歩きます。かかとから踏み下ろし、腕も適度に振るようにすると体が前へ進みやすくなります。
床に座るときはあぐらが楽
床に座るときは、あぐらをかくと楽です。腰に負担をかけず、おなかを圧迫することがありません。股関節が柔らかくなるメリットもあります。
イスに座るときは腰を保護
イスに座るときは、背もたれとの間にクッションを置き、背筋を無理なく伸ばせるように工夫します。深く腰かけることも姿勢維持のポイント。
入浴は、シャワーですませず湯船につかる
腰痛でこり固まっている筋肉をほぐしてあげるには、入浴が簡単です。湯船につかって体を温めると、筋肉がほぐされ腰痛緩和に役立ちます。夏になるとシャワーだけですませる人がいますが、体の表面しか温まらないので腰痛があるときはあまりおすすめできません。
腰に負担をかけるNG行動
つい、やってしまいがちな人は注意してくださいね。
- 料理のときに長時間立っている
- パソコン作業などで座りっぱなし
- 掃除機をかけるときなどの中腰の姿勢
- 高いところのモノを取る
妊婦の腰痛に、おすすめストレッチ&マッサージ!
腰周りの筋肉をほぐしてあげると、痛みが軽減されやすくなります。牧さんに、腰痛緩和にピッタリな簡単ストレッチとマッサージを教えていただきました。
妊婦の腰痛緩和によいストレッチ
「ストレッチをするときは、床が冷えていない場所で行いましょう。ラグなどの上で行うと、体が冷やされるのを防ぎ、滑り予防にもなるので安心です。おなかの張りや痛みがある、不正出血がある、なんとなく気分がすぐれないといったときは控えてください」(牧さん)
毎日1回でかまわないので、ストレッチは習慣化することが重要です。食後は避け、寝る前や朝などに試してみましょう。
開脚ストレッチ
脚を開くと股関節が柔らかくなり、腰周りの筋肉がほぐれます。また、反り腰が解消され、背筋を伸ばす姿勢を保つのも楽。
回数:1日1回
時間の目安:1分
- 床に座り、無理のないところまで両脚を広げる。
- ゆっくりと上半身を前へ倒す。深呼吸を1回して戻る。
- ゆっくりと上半身を右へ倒す。深呼吸を1回して戻る。
- ゆっくりと上半身を左へ倒す。深呼吸を1回して戻る。
- 1~4を1~3回繰り返す。
両ひざ倒しストレッチ
床に寝ながら、無理なく股関節を柔軟にします。
回数:1日1回
時間の目安:1分
- 床へあお向けに寝て、両ひざを合わせて曲げる。肩は床につける。
- 両ひざを右へ倒して床につける。1回深呼吸して戻る。
- 両ひざを左へ倒して床につける。1回深呼吸して戻る。
- 1~3を1~3回繰り返す。
- 余裕があるときは
両脚を開き、足裏をぴったり合わせる。1回深呼吸して戻る。
四つんばいストレッチ
腰や背中を動かし、凝り固まった筋肉を伸ばすことで腰痛を和らげます。
回数:1日1回
時間の目安:1分
- 床に、両手と両ひざをついて肩幅に開き、四つんばいになる。
- ゆっくり息を吐きながら、おへそを見るように頭を中に入れ、背中を丸くする。
- 息を吸いながら背中を軽く反らせる。
- 息を吐きながら1に戻り、深呼吸する。。
- 1~4を1~3回行う。
妊婦の腰痛緩和によいマッサージ
「マッサージは自分ではできないので、夫やパートナーにやってもらいましょう。『気持ちいい?』『もう少し強く』など、お互いに声をかけ合うことでコミュニケーションづくりにも役立ちます。毎日行うことが理想ですが、おなかが張っているときは控えてください」(牧さん)
マッサージで夫やパートナーと触れ合うことによって、体の緊張が解けるだけでなく、心もホッとリラックスするはず。ふたりで、赤ちゃんの存在を感じられる充実した時間にもなります。
おしりマッサージ
妊婦さんはベッドやソファに寝て、横向きになります。夫やパートナーは妊婦さんの背中側に回り、両手でおしりを軽く押すようにマッサージ。おしり全体をまんべんなく押して、腰からおしりにかけての筋肉をほぐしてあげましょう。
内股踏みマッサージ
妊婦さんはベッドやソファに寝て、横向きになります。夫やパートナーは立ったまま、妊婦さんの恥骨に近い内股に片足を置きます。足裏全体を使って、ゆっくりと軽く踏みます。1分ほど続けたら、反対の内股も同様に。内股の筋肉をほぐすことで股関節が伸びやすくなり、腰への負担が軽減されます。
妊婦の腰痛によい寝方って?
妊娠中の腰痛は、夜の寝方の影響をとても受けています。寝るときの姿勢が悪いと、寝ている間中、腰に負担をかけ続けることになります。
そんな妊婦さんに適した寝方は、「シムス」と呼ばれる姿勢です。全身をリラックスさせられるうえ、腰に負担がかかりません。おなかも圧迫しないので、妊婦さんと、おなかの赤ちゃんの両方にとっても楽です。昼間でも「疲れたな」と思ったら、この姿勢で休んでください。
シムスの姿勢
ベッドに体を横たえ、左側を下にした横向き寝の姿勢です。全身の力を抜いて、自然な呼吸を意識して、下の脚は軽く伸ばし、上の脚は曲げます。クッションや枕を脚の下へ差し込んだり、抱き枕を抱いたりすると、より快適に寝ることができます。
妊娠後期に長時間、上向きで寝ると、おなかが動脈を圧迫して低血圧や貧血を起こしやすくなるため、シムスの姿勢がすすめられます。
妊婦の腰痛にはベルトを使ってみよう
妊娠中から産後にかけて、便利なのが骨盤ベルトです。腰痛防止に役立ち、腰痛に悩んでからも大活躍。大きくなってくるおなかを下から支え、腰への負担を軽減させるほか、骨盤の関節のゆがみが安定するため、痛みを緩和してくれます。骨盤の緩みで足のつけ根に違和感がある、恥骨が痛むといった人にもよいとされています。
代表的な骨盤ベルトは、大転子部(太ももの一番太い部分)から恥骨にかけてベルトで巻きます。ちょうどおなかの下にベルトを着けるので、おなかの赤ちゃんは苦しくはありません。妊娠中から産後にかけて、より快適に過ごせます。
腰痛の原因のひとつとなる女性ホルモンのリラキシンは、妊娠初期から分泌されるので、妊娠が分かったときから活用すると腰痛悪化を防ぐ手立てになります。毎日着けていると、産後の体型戻しが早いという人も少なくありません。
骨盤ベルトは、ベルトやガードルタイプなどさまざまな形があり、素材もバラエティに富んでいます。自分に合ったものを選び、迷ったら医師や助産師、看護師などに相談するとよいでしょう。
その他、妊婦の腰痛の対処法
妊娠週数が進むにつれ、妊婦さんは体を動かすのが大変になってきて、筋肉量が減ってしまいがちです。腰周りの筋肉量が減ると腰への負担増は避けられません。適度な運動で筋肉量を維持することは、腰痛対策に有効です。「無理のない範囲で、適度な運動を毎日行うことがポイントです。スポーツを本格的に始めなくても、ウォーキングを1日5分行うだけでOK」と牧さんは話します。
妊娠中の適度な運動は、体調がよくなり、肥満を防ぐことにも有効です。心地よく汗をかくことで気分もリフレッシュできるなど、腰痛対策以外にもたくさんのメリットがあります。
妊婦さんの腰痛対策におすすめの運動
マタニティスイミング
水中では浮力が働くので、体を動かすときのおなかや腰への負担が軽減されます。楽に動けるので、効率よく筋肉が鍛えられるメリットもあります。
マタニティヨガ
無理のないポーズで、楽に腰回りの筋肉がほぐれます。呼吸法をマスターすれば、リラックス効果も期待大。最近では、産婦人科で「マタニティヨガ」のレッスンを行うところも増えています。
マタニティビクス
酸素を大量に取り込み、血液循環がよくなるメリットがあります。筋肉や関節をやわらかくし、持久力もつきます。
ウォーキング
筋肉がつくほか、体力づくりにも役立ちます。ウォーキングシューズを履き、公園などの平坦な道を歩きましょう。
運動を始めるときの注意点
- 安定期になったら始める
- 必ず医師の許可を得る
- スポーツは、専門のインストラクターがいて、メディカルチェックできる施設を選ぶ
- 体調がすぐれないときは休む
激痛!腰痛が治らないときは病院へ
家事ができない、上の子の面倒が見られないといった生活に支障が出るほどの痛みが出たら、産婦人科の医師に相談しましょう。「接骨院や整形外科へ行くべきでは?」と思いがちですが、「産婦人科が第一の選択肢です」と牧さんは注意を促します。
「特に初産婦さんは、下半身の痛みが、おなか、背中、腰のどこから来ているのか区別がつきにくいのです。たとえば、『腰痛と思っていたのが実はおなかの痛みで、切迫早産の兆候だった』ということがあります。接骨院や整形外科の医師では、切迫早産などの妊娠トラブルを見極めることは難しい場合があり、“妊娠トラブルではなく、本当に腰痛だ”と診断できるのは産婦人科医です」(牧さん)
産婦人科では、腰痛に対処する日常生活の注意点や骨盤ベルトのアドバイスなどを受けることができます。必要であれば、妊婦さんを施術できる接骨院や整形外科を紹介してもらえることもあるでしょう。
先輩ママも悩んでる! 腰痛体験談
(ケイのかーちゃんさん)
骨盤ベルトや腹帯でおなかを支えてあげると楽になりました。立ったときは、大きなおなかを支えるのに背中を反り過ぎてしまいがちですが、産院などで教えてくれる正しい姿勢を意識するといいかもしれません。あとは腰痛予防の妊婦体操もオススメです。
(ちびうささん)
(前略)妊婦さんも大丈夫な整骨院を、たまたま見つけて通うようになってから、だいぶ楽になりました。マタニティマッサージもやってみましたが、リラックスはできてよかったと思います(ストレスで痛みに敏感になってた?)。痛いところを温めたりなでたりが意外と効いたりもするので、よければご主人など頼れる方に話して試してみてください。アロマオイルじゃなくても、妊婦さん用のクリームでも滑らかに触れる手の温もりが気持ちよくていいですよ。他には湯たんぽとかで、じんわり温めたり。(後略)
(ERI0044さん)
(前略)役場主催のマタニティヨガをやったり、保健師さんから座り方を直すようにアドバイスされて一時的にだいぶ楽になりました。(昼間やっとくと、夜横に寝たとき効果を発揮して楽に寝れました)。
もう9ヶ月目だと何をやっても痛いので…あと1ヶ月の辛抱だと思うしかありませんが(泣)(中略)呼吸方法とかはマスターしておくと陣痛にもよいと思いますよ♪
(まめ0462さん)
現在妊娠5ヶ月の初マタです。1週間くらい前から右側だけ腰痛がひどく、寝るときも左を下にしないと寝れません。出勤のカバンも右手で持つと、右の腰に重みがかかってつらく、いつも無意識に左側に体重をかけるようになっています。(後略)
(ぷーどるさん)
3日前から腰痛が強い……。歩くとグキッと痛み、脱力感もあり。最近、すごく眠くて日中眠ってたり、ゴロゴロしてることが多いから、筋力が落ちてるのかな……。もともと職業病から腰痛持ちだし、骨盤ベルトは離せません(;´д`)
産後まで腰痛に悩まないために
「『妊娠したから腰痛になるのは仕方ない』と、痛みをがまんしてしまう人がときどきいますが、妊娠中からケアすることは重要です」と牧さんはアドバイスします。「妊娠中の腰痛をケアせずに産後へ突入すると、家事に育児に休むヒマがなく腰が酷使され、ある日突然ぎっくり腰などのトラブルになることが珍しくありません。また、妊娠前にヘルニアなど腰のトラブルを抱えていた人は、妊娠したことで余計な負荷が腰にかかり、腰痛が重症化したり、産後に症状が強く出たりすることがあるので注意が必要です」
妊娠中の腰痛は、多くの妊婦さんに見られる症状です。出産した日からスタートする育児に備えて、日常生活の工夫、ストレッチやマッサージなど、自分に合った方法で腰痛対策を行ってくださいね。
監修/やまどう鍼灸接骨院 牧華子院長
update : 2018.07.02
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