早産とは?原因や確率・兆候は?
予定日よりも早い週数で、赤ちゃんが生まれる「早産」。分娩週数が早いほど、母子ともに負担が大きく、生まれたあとの赤ちゃんへのリスクが高まることもあります。そこで、多くのハイリスク妊娠を取り扱う葛飾赤十字産院副院長の鈴木俊治先生に、早産の原因や兆候、対処法などについて詳しい話を聞きました。
監修者プロフィール
鈴木俊治副院長
葛飾赤十字産院
産婦人科医。周産期医療が専門。1988年に長崎大学医学部卒業。日本医科大学産婦人科学教室、米国LomaLinda大学留学、東京臨海病院産婦人科部長などを経て、2006年より現職。
早産とは?
いつからのことを指すの?
妊娠の経過が順調であれば、妊娠37週以降42週未満で赤ちゃんが誕生します。この時期の出産を「正期産」といいます。正期産に対し、妊娠22週以降37週未満に赤ちゃんが生まれてしまうのが「早産」です。
早産には、なんらかの原因で陣痛が来て出産してしまう「自然早産」と、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全などの母子トラブルが原因で妊娠継続が困難となり、医療介入で早産させる「人工早産」があります。
早産になる確率は何%?
早産の原因は?
一般的に早産は全妊娠の約5%に見られ、約20人に1人の割合で発生します。中でも人工早産が1/4~1/3を占めています。
早産の原因は、以下で紹介しているように母体側と胎児側のそれぞれにあります。早期発見には、定期的な妊婦健診をきちんと受けることが大切です
・子宮内感染
クラミジアなどの細菌が腟から入り込んで炎症を起こし、子宮の入口である頸管(けいかん)に感染します。細菌が子宮内に侵入して悪化すると絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)や子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)などが起こり、卵膜が弱くなります。少しの刺激で卵膜が破れやすくなって最終的には破水や陣痛につながり、早産が引き起こされます。早産の7~8割は子宮内感染で、最も多い原因です。
・子宮頸管無力症
子宮頸管の筋力が弱いため、お産が始まらないうちから子宮口が開き、陣痛が来ていないのに胎児が出てしまいます。定期健診で診断できるので、必要であれば子宮頸管をしばる手術を行い、早産を避ける処置をします。
・多胎妊娠
双子以上の多胎妊娠では、胎児が1人のときよりも子宮が大きくなり、早い時期からおなかが張りやすくなります。そのため、単胎妊娠に比べて早産の確率は高くなります。多胎妊娠の約半数は早産になるため、早めに入院管理をする場合が少なくありません。
・子宮の異常
子宮筋腫や、子宮の中がふたつに分かれている双角子宮といった子宮奇形があるときは、子宮内の環境が胎児の成長に快適ではないため、早産になることがあります。
・妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病といった合併症
妊娠による合併症が悪化すると母子ともに状態が悪くなることがあり、胎児は早く生まれようとします。ママと胎児の安全を考えて、帝王切開などで早めに人工早産させることもあります。
また、妊娠糖尿病になると羊水過多症になることも。羊水の量が異常に増えることで、内側から圧迫されておなかの張りが強くなり、子宮収縮が引き起こされて早産につながる可能性があります。
・喫煙
タバコには、ニコチンやタールといった有害物質が含まれており、血管の収縮を引き起こします。すると胎児へ送る酸素や栄養が十分に行き届かなくなり、胎児発育不全になって人工早産させるリスクが高くなります。
・ママがやせすぎ
理由ははっきり分かっていませんが、妊婦さんがやせすぎているほど胎児がおなかにとどまっている日数が短くなり、出生体重が小さくなる傾向があります。初診時に、BMI(肥満度)が18.5未満だったやせ妊婦さんは要注意です。
早産の兆候は?
自覚症状として代表的なのは、次の3つです。気づいたら早めに病院へ連絡し、医師の指示を仰ぎましょう。
・出血
最も気づきやすい兆候です。37週以降ならおしるしの可能性が高いのですが、37週未満なら早産の兆候かもしれません。少し血が混ざったピンク色のおりもの程度、レバーのような血の塊、鮮血で大量などさまざまです。
・おりものの変化
正常なおりものは、乳白色や透明です。ところが細菌に感染すると、おりものに変化が見られることがあります。黄色や緑っぽいなら淋菌、カッテージチーズのようにポロポロしていればカンジダ菌に感染しているかも。感染すると子宮内感染を引き起こし、早産につながることがあります。
・おなかの張り
妊娠中は、生理的なおなかの張りをだれもが感じます。夜に寝ているときはおさまるのが普通ですが、子宮内感染の場合、寝ているときや休んでいるときに「おなかが張る」と気づくことが多くあります。「いつもと違うタイミングで張る」「弱いけれど、おなかの張りが続いている」といった“いつもと違う張り”に気づいたら、病院へ連絡しましょう。
早産のリスクは?
胎児の生存率は?
通常なら胎児はママのおなかの中で成長し、約10ヶ月をかけて体の機能を成熟させて生まれます。ところが早産で生まれると、成長発達が十分でない場合が多く、なんらかの病気や発達に対する障がいが見られることがあります。
また、生まれる妊娠週数は、胎児の生存にも深く関わってきます。早産の原因や状況で若干変わってきますが、妊娠週数による生存率の目安は次の通りです。
- 妊娠22~23週→生存率50%
- 妊娠24~28週→生存率80%
- 妊娠28週以降→生存率95%
おなかの中にいる期間が短いほど、生存率は低くなります。
早産児が生まれた場合、発達に与える影響って?
早産で生まれても、すべての赤ちゃんに病気や発達のリスクがあるとは限りません。早産児の中でも、35週以降に生まれた場合は、新生児集中治療室(NICU)に入るほどではなかったり、特別な医療的処置をする必要がなかったりする場合もあります。
それに対し、妊娠35週未満の早期では、NICUで治療して成長を促すことが多くあります。「早産児の後遺症の有無を左右するポイントとなるのは、妊娠28週と34週です」と、鈴木先生は話します。
妊娠28週
胎児の目は妊娠28週までにつくられると言われています。28週未満で生まれると、網膜の発達が不十分なので新生児網膜症(しんせいじもうまくしょう)となる確率が高く、失明など将来の視力に影響することがあります。
一方で、28週以降になると体重は1000gを超え、生存率が95%にグンと上がります。「目への影響と生存率が違ってくる妊娠28週が、ひとつのヤマといえます」(鈴木先生)
妊娠34週
妊娠34週を超えると、自分で呼吸できる程度に肺機能は完成しています。しかし、超えないと肺の形成が未発達で呼吸がうまくできずに、生まれた直後から呼吸窮迫(こきゅうきゅうはく)症候群や未熟児無呼吸発作などを起こしやすくなります。その場合、人工呼吸器でサポートする必要があります。
おなかの中にいる期間が短いほど、生存率は低くなります。
体重でも左右される障がいの有無
ちなみに、障がいが残るかどうかは赤ちゃんの体重でも左右されます。脳性麻痺などの後遺症が残る確率は、
1000g(妊娠24~27週ごろ)未満→10~20%
1000g(妊娠27~30週ごろ)以上→10%未満
1500g(妊娠28~31週ごろ)以上→5%未満
が目安です。
「早産で生まれるとさまざまなリスクが残る可能性はありますが、医療の技術は進歩し、医師も赤ちゃんの成長を第一に考えて治療しています。不安になりすぎないでください」と鈴木先生は話します。
早産になりやすい人とは?
早産には、いくつかのリスク因子があります。心当たりがある人は、注意が必要です。
・前回の妊娠で早産だった
早産を1回経験すると、次の妊娠のときの早産率は15%、早産が2回続くと3回目の妊娠では30%が早産になると言われています。もともとの体質で、子宮頸管無力症だったり、子宮頸管ポリープがあったりすることなどが影響しています。
・円錐切除術などの子宮頸管手術をした
手術によって子宮頸管が短くなっているので、細菌感染した場合に子宮まで細菌が侵入して感染しやすく、早産のリスクが高くなります。
・多胎妊娠
本来なら1人の胎児を育てる子宮の中に2人以上の胎児が存在しているので、子宮が狭いことや早期におなかが大きくなって張りやすくなることが原因です。
早産にならないためには、何をすればいい?
生まれてからの赤ちゃんのリスクなどを考えると、「早産になりたくない」というのは、だれもが思うことです。しかし、これをすれば早産にならないという方法はありません。「早産を意識するより、妊娠期間を健康的に送れる生活に気を配ることが第一です」と鈴木先生はアドバイスします。
- 疲れをためない
- ストレスをためない
- おなかの張りやおりものに注意する
- 体を冷やさない
- 感染症にかからないように、セックスではコンドームを使う
- タバコは吸わない
といったことに気をつけて、あまり神経質にならないことも大切です。
先輩ママ発!
私も早産を経験しました
(はにわ0024さん)
(前略)だいたい双子ちゃんの場合36週で出産ですけど、たまたま祝日の三連休があって連休中に破水とかしたら大変だし、おなかの赤ちゃんも2000gはいっているだろうからってことで35週4日で出産しました(*^^*)(後略)
(さっと0014さん)
5月で2歳になる双子の母です。33週目に、長女は1493g、次女は1635gで陣痛が来てしまったので、緊急帝王切開で出産しました。おそらく、週数のわりには小さい方だったのだと思います。1ヶ月半NICUにお世話になりました。大きな病気もなく、月齢並みの大きさに育ってます(0歳のころは体重が重めだったくらい)。超元気です。(後略)
(よっぴー0057さん)
去年の6月に26週で544gの女の子を帝王切開で出産しました。うちの子もおなかの中で成長できてなくて大学病院に5ヶ月のときに入院してたのですが、入院中に血圧が上がってしまって、このままおなかにいても成長できないからと言われ帝王切開になりました。(後略)
update : 2018.07.03
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