赤ちゃんの乳歯が生える時期と順番とは?虫歯の注意点についても解説!
ある日ぽつんと見えてくる小さな乳歯は、赤ちゃんの成長を実感させるものですね!将来きれいで丈夫な歯に育てるためには、最初にはえてくる乳歯からのお手入れが大事なのです。そして、赤ちゃんの歯の健康にはママやパパの虫歯の有無も関係しています。乳歯がいつ頃からどのようにはえてくるのか、そもそも虫歯とは何なのかを知っておきましょう。
監修者プロフィール
木本茂成先生
神奈川歯科大学 歯学部小児歯科学講座教授、神奈川歯科大学附属病院 小児歯科 診療科長
日本小児歯科学会理事長、日本歯科医学会常任理事、日本歯科専門医機構業務執行理事などを歴任し、子どもの歯をはじめとする口腔の健康のための研究、治療に携わる。『子どものお口 どう育つの?』『子どものう蝕治療とリスクマネジメント』など著書多数。
乳歯はいつ生えてくる?
乳歯は全部で20本。赤ちゃんの乳歯は通常、下の前歯から順番にはえそろっていきます。下に紹介する時期や順序は平均値による目安で、個人差があるので多少前後しても心配はありません。
乳歯がはえそろう順序は?
通常は下のような順番で、生後7〜8ヶ月ごろに下の前歯からはえ始め、満1歳ごろに上下4本ずつの前歯がそろった後に、1歳6ヶ月ごろに第一乳臼歯(手間の奥歯)がはえ始めます。乳犬歯は1歳3〜6ヶ月ごろ、2歳を過ぎたころに第二乳臼歯(一番奥の奥歯)とはえ始め、3歳ごろに乳歯の歯ならびが完成しますが、子どもによって前後することもあります。
はえる時期にはとても個人差があります
乳歯がはえ始める平均の時期は、2019年に報告された全国調査の結果では、1988年の調査結果と比較すると、30年前より1ヶ月ほど早くなったそう。でもそれは平均値のことで、はえる時期の幅はむしろ以前より広くなっていて、早くはえる子どもと遅くはえる子どもの個人差が広がっていたそうです。
それぞれの歯のはえ始めの時期の幅は下のグラフを見るとよくわかります。特に男の子の上あごの第二乳臼歯は、早い子は1歳半ごろ、遅い子では3歳9ヶ月と大きな個人差が見られました。
赤ちゃんの成長は身長や体重にも個人差があるように、多少早かったり遅かったりしても心配する必要はありません。もし1歳半を過ぎても前歯が生えてこない場合は、一度小児歯科の先生に診てもらうとよいでしょう。
●乳歯が生えはじめる時期の幅(上下あご別・性別)
木本茂成先生『小児の口腔と口腔ケア (総論)』乳歯萌出時期の幅(上下顎別・性別)より
歯のはえ始めは歯ぐきがムズムズ
歯のはえ始めは歯ぐきがむずがゆく感じ、そのために赤ちゃんの機嫌が不安定になる時があります。欧米には「teething pain」という言葉もあり、夜泣きやぐずりの原因として語られているとか。赤ちゃんが今までにない状況でグズグズしたり、夜泣きをするようになったら、もしかするとこのムズムズが原因かもしれません。
歯ぐきのむずがゆさを解消するために、いろいろなものを口に入れたがるようになります。危険なものを口に入れないためにも、歯がためなどの専用のおもちゃで、その欲求を満たしてあげましょう。いろいろな感触の素材を使い、飽きずに遊べるよう工夫されたものや、保冷剤入りでひんやり感が楽しめるものなど、さまざまな商品が出ています。
最初の乳歯がはえ始めたら、毎日歯のお手入れを
虫歯になってしまうと、治療はできても元通りに戻ることはありません。だから虫歯にならないよう、最初の歯がはえ始めたときからのお手入れが欠かせないのです。
なぜ虫歯になるの?
子どもの虫歯はほとんどの場合、ママやパパが持つ虫歯菌(ミュータンス連鎖球菌)がなんらかのかたちで赤ちゃんにうつってしまうことが原因と考えられています。虫歯にかかる子どもの親が虫歯をもっていたり、虫歯治療で詰め物をしていることが多いからです。虫歯がある人のだ液のなかに、たくさんの虫歯菌が含まれているので、ママやパパが使ったスプーンで頻繁に子どもに離乳食などを与えることで、菌が移っていくと考えられます。
虫歯菌(特にミュータンス・レンサ球菌)はエナメル質にくっつきやすい性質があり、歯の表面に細菌の膜(バイオフィルム)をつくります。膜ができると糖分を栄養にして酸をつくり、酸が歯のエナメル質を溶かしてしまうのです。これが虫歯です。細菌の膜はうがいでは取れないため、最初の歯がはえたときから歯のお手入れが必要となるのです。最初の頃はガーゼでぬぐい、奥歯がはえてきたら歯ブラシを使って磨いてあげましょう。
赤ちゃんの歯のお手入れについて詳しくはこちら>>
大人の口腔ケア、特に妊娠期からのママのケアが大事!
ママやパパから虫歯菌が移ると言われても、愛しい赤ちゃんにチューをしたり、ママやパパが使ったスプーンを赤ちゃんがつい口に、ということを避けて生活するのはむずかしいこと。つまり、大人の口の中の虫歯菌を減らすことが大事なのです。ママやパパ、同居する家族に虫歯があれば放置せずに治療しましょう。そして今まで以上に日頃の歯磨きを丁寧に。
特に、妊婦さんの口腔ケアはとても大事。歯周病の人は低出生体重児の出産や早産の確率が高くなることがデータでもわかっているため、虫歯がある人は安定期の間に治療をしておきたいもの。妊娠中の治療が難しい場合は、出産後に赤ちゃんの最初の歯がはえ始める前に治療をしておきたいですね。
妊娠前から予防歯科として定期的に歯科健診を受けていれば安心ですが、そうでない場合は、妊娠中に自分の状態を歯科医で診てもらいましょう。自治体によっては妊婦歯科健診を無料で受けられる地域もあるので、役所に問い合わせてみるとよいですね。
乳歯の虫歯は永久歯にも影響します
乳歯が虫歯になっても、将来はえ替わるから大丈夫、というのは間違いです。あごの骨の中では乳歯の直下で、ある時期から永久歯が出番を待っています。乳歯がひどい虫歯になると乳歯の根の先端から入った虫歯菌があごの中で菌のすみかを作り、永久歯がうまく作られないことがあります。きれいな歯並びのためにも永久歯へはえ替わる時期まで、乳歯がきれいに保たれていなければならないのです。
また、育ち盛りの時期にしっかり食べ物をかむことができないのも困りますね。ですから、まだ本格的な歯磨きができなくても、乳児期から少しずつケアの習慣をつけておくのは、とても大切なことなのです。そのためにも、小児科同様、かかりつけの小児歯科の先生を見つけておきましょう。虫歯予防のための日頃の歯のお手入れや、きれいな歯並びを保つための相談にものってもらえますよ。
哺乳ビンで甘い飲み物を飲ませないで
哺乳ビンでミルク以外の甘い飲み物を飲むと、上の歯の頬側に飲み物がたまり、虫歯になりやすいと言われています。離乳を開始してミルク以外の飲み物や食品を与えることが多い時期になってきたら、ジュースやイオン飲料など、砂糖の入った飲み物を哺乳ビンで飲ませることはなるべく控えるようにしましょう。どうしても哺乳ビンが必要な場合は、中味をお茶にするなどして、徐々にコップから水分を取れるように習慣づけましょう。
かむこと、飲み込むことを成長段階に合わせて身につけさせる
赤ちゃんは生まれつきおっぱいや哺乳びんの乳首に吸い付くことはできても、食べ物をかむことは学ばないと上手になりません。歯の健康のためのケアとともに、かむことや上手に飲み込むこともママやパパが教えてあげましょう。
離乳期の正しいステップが将来にもつながる
産まれたばかりの赤ちゃんは、誰にも教えられなくてもママのおっぱいを吸ったり、哺乳びんを近づけると乳首に吸い付いて飲み始めますね。哺乳は人間の赤ちゃんに反射として備わった機能。でも、離乳食が始まったあとに、食べ物をかみ砕いて無理なく消化吸収できる硬さにして飲み込む、摂食嚥下機能と呼ばれる機能は、練習しないと正しく身につかないのです。
実は、離乳の時期に正しいかみ方、飲み込み方が身についていないことが、高齢になったときの嚥下障害につながることもあるのだそう!? 三つ子の魂百までどころか、0歳児のかむ習慣が100歳まで続いてしまうのですね。だから、離乳食が始まったら、子どもの月齢や体重、歯のはえ方などの成長段階に合わせて進めていくことが大事なのです。乳幼児の時期から、離乳食はよく噛んでよく食べる食習慣を身につけさせてあげましょう。
★離乳食については「初めての離乳食」で詳しく説明しています。参考にしてくださいね。
監修/神奈川歯科大学 歯学部小児歯科学講座教授 木本茂成先生
update : 2023.03.01
- お気に入り機能はブラウザのcookieを使用しています。ご利用の際はcookieを有効にしてください。
また、iPhone、iPadのSafariにおいては「プライベートブラウズ」 機能をオフにしていただく必要があります - cookieをクリアすると、登録したお気に入りもクリアされます。