赤ちゃんのスキンケアの悩みや肌トラブルへの対処法
「赤ちゃん肌」といえば、ぷるぷるでもちもちの理想の肌というイメージですが、実際はおむつかぶれや湿疹など、意外と多い赤ちゃんの肌トラブル。デリケートな肌を守ってあげるにはどうしたらよいのか、悩むママも多いですよね。そこで今回は、小児皮膚科の先生に、ママ達が抱えるスキンケアの悩みや疑問について、お話を伺いました。ぜひ参考にしてください。
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お話を伺ったのはこの方
独立行政法人 神奈川県立こども医療センター 皮膚科部長
馬場直子先生
プロフィール
専門医としての臨床や学会活動にとどまらず、学校保健、各種患者会での活躍でも知られる小児皮膚科のスペシャリスト。著書は『外来で見る子どもの皮膚疾患』(診断と治療社)『こどもの皮膚診療アップデート』(シービーアール)など多数。
スキンケアはしなければならないもの?
赤ちゃんもスキンケアは必要なのですか?
赤ちゃんの皮膚は薄く、大人の半分くらいしかありません。肌の水分を保持したり、外部から異物が侵入するのを防いだりするバリア機能も未熟で、トラブルが起きやすいとてもデリケートな肌です。生まれてすぐは胎脂という白い脂肪分に覆われて守られていますが、24時間以内には自然に剥がれてしまいます。すると、皮膚はとても無防備な状態になってしまうのです。皮脂の分泌も生後1~2ヶ月は盛んですが、それ以降は少なくなり、より乾燥しやすくなります。皮下脂肪が多いのでムチムチして潤っているように感じても、表面はカサカサしていることも。乾燥すると肌のバリア機能はいっそう下がってしまいますし、乾燥性の湿疹ができることもあります。きれいな肌を維持するために、毎日スキンケアをしてあげることが大切です。
肌にトラブルがなくてもスキンケアをしたほうがよいのでしょうか?
トラブルのない肌をキープするために必要なのがスキンケアなので、もちろんトラブルがなくてもきちんとスキンケアをしましょう。逆にトラブルが起きてしまったら早く受診して、薬で肌の炎症を落ち着かせるなど、「治療」が必要になります。トラブルが起きてしまった肌を、スキンケアだけで治そうとして治らず、「保湿剤は肌によくないんだ」というようには思わないでくださいね。トラブルが起きてから必要なのは治療、トラブルが起こらないように予防するのがスキンケアです。
何歳頃までスキンケアをしなければならないのでしょうか?
皮膚がしっかりして皮脂分泌ができ、肌が潤ってくるのは思春期の頃なので、小学校高学年頃までスキンケアをするのが理想的です。ただ、そこまで実践するのは大変なので、難しい部分もあるかもしれませんね。そんな場合でも、少なくとても小学校低学年頃までは、お母様がスキンケアをしてあげて欲しいと思います。小さい頃からスキンケアを習慣化していると、大きくなって保湿剤を自分でぬってくれるようになることもあるようですよ。
具体的なスキンケアの方法は?
スキンケアとは、どのようなお手入れをすればよいのですか?
スキンケアの基本は、きれいにすることと、保湿をすることです。できるだけ肌に刺激をあたえないように気をつけながら、しっかり石けんを泡立てて、泡でやさしく汚れを落とします。顔は石けんをつけるのが怖いので拭くだけにしてしまっているという方がいるのですが、石けんで洗ったほうがきれいに汚れが落ちます。丁寧に洗ってあげてくださいね。お風呂の後や拭いた後は、その都度保湿剤をぬって水分の蒸発を防いであげましょう。
洗う時に気をつけたほうがよいことはありますか?
石けんはしっかり泡立てて使います。液体や固形石けんを自分で泡立てる時、手をすりあわせて少し泡立てる程度では石けんの濃度が濃すぎて、すすいでも洗浄成分が残ってしまう可能性があります。泡立てネットを使って、しっかりとつぶれにくい泡を作り、たっぷりの泡を手にとって、なでるように洗ってあげましょう。しっかりとした泡で洗えば、手でやさしく洗うだけで十分に汚れは落ちるものです。少なくとも2歳頃までは、スポンジやタオルなどで洗うと、肌への刺激が強すぎるのでおすすめできません。ガーゼも、吸収力に優れているので押し拭きするために使うのはよいのですが、こすると刺激が強い素材ですので、洗う時には使わないようにしてください。また、洗った後は、洗浄成分が肌に残らないようにきちんとすすぐことも忘れずに。
生まれてすぐは沐浴剤でも大丈夫ですか?
沐浴剤では汚れが残ってしまうこともありますし、少量ですが洗浄成分も肌に残ってしまうので、おすすめはできません。沐浴剤よりも手間はかかると思いますが、生まれてすぐからしっかりとした泡で洗い、すすぎ残しのないように流して、保湿をしてあげて欲しいです。
大人が普段使っている石けんや保湿剤はいつから使って大丈夫ですか?
大人用の石けんや保湿剤は香料や防腐剤など、赤ちゃんにとって刺激となる成分が含まれていることもあるので、できるだけ無添加の成分で、と考えて作られているベビー用のほうが安心です。ベビー用を大人が使っても全く問題ないので、逆に大人がベビー用を使うほうがよいかもしれませんね。大人用を試すとしたら、添加物などの少ない肌にやさしいものを、幼稚園に入る年齢くらいになってからのほうがよいと思います。体の一部分で試して、問題が起こらないようだったら全身に使うというように、段階を踏んで使用しましょう。
保湿はどれくらいの頻度でしたほうがよいですか?
洗ったり拭き取ったりすると保湿剤がとれてしまうので、お風呂の後、口の汚れを拭き取った後、おむつ替えでお尻を拭き取った後などは、毎回保湿してほしいです。1度保湿剤をぬっただけで24時間効果を維持するのは難しいので、朝もできたら保湿したほうがよいですね。ただ、忙しい朝、赤ちゃんを裸にして全身しっかり保湿するのは負担が大きいという場合は、とりあえず、露出して乾燥しやすい手足や顔だけ保湿して様子をみてもよいでしょう。
保湿剤はどのような種類のものをつけたほうがよいですか?
どのようなタイプの保湿剤を使わなければならないかというのは、特にありません。乾燥しやすいかどうかは、赤ちゃんによって個人差があるので、十分に肌が保湿されているか、肌の様子をみながら使用すればよいと思います。通常は乳液だけでも十分だと思いますが、肌が乾燥しやすい赤ちゃんはクリームもたしてあげるなど、臨機応変に対応してあげてくださいね。口の周りやおしりなど、汚れやすい部分は、白色ワセリンをつけると、汚れが肌につきにくくなりますよ。
保湿のしすぎは肌によくないということはありますか?
肌を甘やかしすぎるとよくないと誤解している方もいらっしゃるのですが、そのようなことはないので安心して保湿してあげてください。肌は鍛えるものではありません。守ってあげたほうがよいですよ。1日に1回、石けんできれいに洗い流せば、乳液やクリームならば何回つけても「つけすぎ」ということはありません。ただし、白色ワセリンなどの油分の多いものは、たくさんつけすぎると、洗ってもなかなかきれいに落ちないこともあるので、注意が必要です。お風呂の時以外は拭いたり洗ったりしないような部分は、1日に3回くらいまでを目安に使ってあげるとよいでしょう。
UVケアは必要?
生まれてすぐからUVケアはしたほうがよいのでしょうか。
紫外線は肌によいものではないので、避けたほうがよいです。日焼けによる水ぶくれも、大人に比べるとなりやすいですので。ベビーカーの幌を使って直射日光を避けたり、帽子や長袖の洋服を着けたり、長時間、日のあたるところにでないなど、気をつけてあげてください。
日焼け止めはぬっても大丈夫ですか?
日焼け止めは生まれたての赤ちゃんには刺激となることがあるため、生後6ヶ月頃まではできるだけ衣類やベビーカーの幌などで直射日光を防ぐとよいでしょう。生後6ヶ月以降で、肌にトラブルがなくきれいな状態ならば、ぬってあげるとよいですね。最初は一部分にぬって、かぶれたりしないか試してみることも忘れずに。ただし、必ずベビー用の日焼け止めを使ってください。大人用の日焼け止めには、紫外線吸収剤のように、赤ちゃんの肌には強すぎる成分が入っていることが多いです。
肌トラブルについて教えてほしい!
受診したほうがよい目安はありますか?
赤くなったり、赤いぼつぼつができたり、かゆみがある時は、すでに肌が炎症をおこしてしまっているので、受診したほうがよいです。薬をもらうなどして、炎症をおさえることが必要です。
乳児脂漏性湿疹になったらどうしたらよいですか?
まずはきれいに洗ってあげることが一番大切です。かさぶたのような塊ができてしまった場合は、オリーブオイルなどでふやけさせてから、泡立てた石けんでしっかり洗います。洗った後は皮脂が落ちすぎてバリア機能が弱くなっているので、乳液やワセリンなどで、保湿をしてあげることも忘れずに。1~2ヶ月経っても改善されなかったり、かゆがったりする場合は、一度受診してみるとよいでしょう。
アトピーかどうかの判断基準はありますか?
アトピーの場合、かゆみを伴う、関節部分や左右対称な部分に湿疹ができることが多いなどの特徴はあります。しかし、アトピーは繰り返す湿疹のことを言うので、一度診察しただけでアトピーかどうかの判断をするのが難しい場合もあります。まずはできてしまった湿疹を治療して、その後の経過によって判断することになります。
おむつかぶれを防ぐために気をつけたほうがよいことはありますか?
おしりに刺激をあたえないようにすることが大切です。できるだけこすらないように、水分を多く含むおしりふきなどで、流し落とすイメージで拭いてあげます。拭いたり洗ったりした後は、きちんと乾かして毎回、保湿剤をつけましょう。習慣にすると、おむつかぶれの予防にかなり効果がありますよ。
あせもを防ぐために気をつけたほうがよいことはありますか?
こまめに着替えたり、濡れたタオルで押し拭きしたり、シャワーを浴びるなど、汗を皮膚に長い時間留めないようにするのが一番です。その後は、夏でもきちんと保湿をしましょう。汗をかいている瞬間は潤っていますが、汗は一時的なものなので、乾くとすぐに肌は乾燥してしまいます。やはり適度な油分は必要なので、保湿が大切なのです。あせもができてしまった場合は、かきむしってとびひになってしまうこともあるので、早く受診して治してくださいね。
ステロイドはできるだけ使わないほうがよいですか?
ステロイドに抵抗があるという方も多いのですが、医師の指導のもと正しく使えば、皮膚の炎症を抑えるのに、もっとも効果的なお薬です。ステロイドには飲み薬とぬり薬があって、飲み薬は長期間服用するとムーンフェイスと呼ばれる顔が丸くなるなどの副作用がでる場合もあるのですが、ぬり薬はそのような全身的な副作用がでることはまずありません。ステロイドをあまりぬりたくないからと、勝手な判断で中断してしまうほうが、かえって炎症がおさまらず長引いてしまうことがあります。医師にいわれた期間は、治ったように見えても、自己判断せず、きちんとぬってくださいね。逆に、自己判断で家に残っているステロイドを使ったりせず、受診して指導を受けてから使用することも大切です。
先生からママたちへのメッセージ
毎日のスキンケアは、最初は面倒に思われるかもしれませんが、習慣づけると結構楽しいものです。お母さんの手でお子さんの皮膚を直接洗ったり、塗ったりすることは、肌と肌を触れ合わせるスキンシップの絶好のチャンスでもあるのです。それに、皮膚のバリア機能を強くすることは、アレルゲンの侵入を防ぎ、アトピー性皮膚炎だけでなく将来の食物アレルギーや喘息の予防にもつながるとさえ言われています。ぜひ実践してみてください。
update : 2015.03.04
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