生後0ヶ月の成長発達「あお向け寝のここがすごい！」

「哺乳動物の中で、生まれてすぐあお向けに寝かせられるのは人間だけ」。犬も猫も馬も、人間にいちばん近いチンパンジーでさえ、あお向けには寝かせられない。あお向けにできるから、親が赤ちゃんを置いて、仕事ができる。人間はそう進化してきた――。赤ちゃんにみなぎる強力パワーを、もう一度、発見して、かみしめて、味わって、感動！　子どもの体と心の発達研究の第一人者、榊原洋一先生の解説付きです。

監修者プロフィール

榊原洋一先生

お茶の水女子大学名誉教授
医学博士。1976年東京大学医学部卒業後、ワシントン大学小児神経研究部、東京大学医学部附属病院小児科などを経て、お茶の水女子大学理事・副学長。2017年より現職。「子ども学」の研究所「チャイルド・リサーチ・ネット」所長、日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達小児科学、特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。今後の活動について、「発達障害には様々な誤解があるので正しい理解を広げていきたい」と語る。『オムツをしたサル』『アスペルガー症候群と学習障害』など著書多数。

赤ちゃんのあお向け寝には、ワケがある
Dr.サカキハラの「あお向け寝のここがすごい！」

赤ちゃんのあお向け寝には、ワケがある

おーい　ママー　パパー　おなかがへった
おーい　だれかー　なんだか暑い　寒い
おーい　おしっこ出たよ
おーい　おーい　おーい
ちょっとさみしい　抱っこして

もちろん　まだ「おーい」とは言えませんけど
泣いてぐずって訴えます

でも　こうして「おぎゃ～」と泣いて
訴えることができるのは
あお向けに寝ているから
うつ伏せだと声も出しづらいし　届きにくい

そもそもあお向けに寝られるのは
哺乳類では　かなり特殊なことなんだって
チンパンジーの赤ちゃんは
いつもお母さんにしがみついている
だからおっぱいが欲しいときには
泣いて訴えなくても　すぐ飲める

らくちんだけど　人間のような
コミュニケーションの発達はない
ということらしい

あお向けだと　手もつかえる
オモチャもつかめる
好奇心も広がっていく

ひとりであお向けに
寝ていられるって
すごいことなのだ

Dr.サカキハラの「あお向け寝のここがすごい！」

あお向けに置けるから親が働ける
コミュニケーションも発達する

「哺乳動物の中で人間の赤ちゃんは極めて特殊。生まれてすぐあお向けに寝かせられるのは人間だけ」と、京都大学霊長類研究所の松沢哲郎さんは言っています。

犬も猫も馬も、人間にいちばん近いチンパンジーでさえ、あお向けには寝かせることはできない。チンパンジーの赤ちゃんは、お母さんの腰にくっついて離れません。ということは、お母さんと子どもが別々になることができないので、お母さんはなかなか自由になれない、ということです。

つまり、人間は親が子どもを置いて、ちょっと仕事ができるようになっている。そう進化してきたのです。親と離れているから、子どもはお腹が減ったとか、暑い寒い…など、さまざまな欲求を、泣いて声に出して訴える。このことが結果的にコミュニケーションを促進させている、というわけです。あお向けに寝ていると、赤ちゃんと目も合いやすいので、お互いにっこり。ほほ笑みも生まれるんですね。

ですから、赤ちゃんが泣いたときに、放ったらかしにしてはいけませんが、かといって泣かさないようにと四六時中そばにくっついている必要もないのです。泣いたら「どうしたのかな？」「何かな？」と、できる範囲で応じてあげればいい。あんまり心配しなくていいのです。

そうそう、最後にもうひとつ、おもしろい研究がありますよ。

赤ちゃんはおむつが濡れると不快だから泣く、と言われていますが、そうじゃなかったんです。ある小児泌尿器科の先生がセンサーをつけて、いつ排尿するかを調べたところ、「えーん」と泣いたとき、腹圧がかかって、おしっこが出るのだそうです。