妊娠中のおなかの膨らみ方は?いつから変化する?どこから?

妊娠が確定したら、いよいよ妊婦生活が本格的にスタート。つわりなども経験して、カラダ的にもココロ的にも、飛躍していきます。今回は、目に見えて変化する、おなかについて。いつごろ、どんなふうに大きくなっていくのか、ご紹介。
妊娠線や毛深くなる、乾燥などについても。また、大きくなった子宮が、胃や心臓、肺、膀胱、腸などを圧迫することで起こる、動悸、息切れ、尿もれ、便秘、痔などについても知っておきましょう。
監修者プロフィール
小川博康先生
小川クリニック院長
日本医科大学卒。同大学産婦人科学教室、私学共済下谷病院、恩賜財団母子愛育会愛育病院、横浜赤十字病院副部長などを経て、『小川クリニック』(横浜市戸塚区)院長。
大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。当時、「胎児に対する胎内交換輸血」「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など、数々の胎内治療を成功させる。国内、国際学会での発表、学術文献のほか、「妊娠大百科(ベネッセ)」「妊娠・出産気がかりQ&A(ベネッセ)」「たまごクラブ」「プレモ」「SoDaTsu.com」などでも、執筆、監修指導など多数。主な著書・監修に、『安産をめざすママ&パパへ 妊娠・出産カレンダー』『「安全神話」の過信が招く妊娠・出産の“落とし穴”』(ともに幻冬舎)『てるてる天使の妊娠出産百科ハッピーマタニティ』(学研プラス)など。
おなかはいつから、どれくらい大きくなる?
「なんだか少し、おなかがふくらんできたかも…」
そう実感するのは、個人差もありますが、早い人で妊娠4ヶ月になってから。妊娠5ヶ月という人も多いです。つわりがおさまり、気持ちも落ち着いてきて、食欲もわいてくるころ。初産婦より経産婦、第2子以降のほうが、早く膨らみ始める傾向もあります。
子宮は4ヶ月の終わり(妊娠15週)に、新生児の赤ちゃんの頭くらいの大きさになります。
それまで恥骨の後ろにあった子宮が、おへその下あたりにまで上がってくるので、それがおなかの膨らみとなって現れるのです。
また、おなかの膨らみは、赤ちゃんが大きくなり、それにつれて子宮が大きくなるからという理由だけではありません。赤ちゃんの成長にはたくさんの栄養と酸素が必要になるため、子宮の血液循環量が増えるからでもあるのです。
どこから膨らみ始める?
最初は恥骨の後ろに隠れていた子宮が、だんだん大きくなり、上のほうに上がってきます。だから最初に膨らみ始めるのは、おへその下あたりです。
タイトなジーンズをはいていた人は、「ファスナーがきつい」「ボタンがとまらない」となって、おなかの膨らみを実感する人もいます。
日ごとに大きくなっていくおなか。胸もふくよかになっていきます。赤ちゃんが育っている証拠。母親になる準備が始まっています。
妊娠初期から後期まで、どのように変化する?
妊娠前、子宮は鶏の卵くらいの大きさ。それが妊娠後期になると、タテの長さは5倍以上、幅は6~7倍、容積は2000~2500倍、重さも20倍以上に。産後は、これがほぼ元に戻っていくのですから、これほど伸縮自在な臓器は、ほかにありません。奇跡の臓器、子宮の変化を見ていきましょう。
妊娠初期:子宮が大きくなる
手のひらに乗る小さな鶏の卵。妊娠前の子宮の大きさは、このくらい。それが、妊娠3ヶ月の終わり(妊娠11週末)くらいになるとなると、大人の握りこぶしくらいの大きさになります。でも、恥骨の後ろにあるので、まだお腹が膨らんできた、という実感を持つ人は少ないでしょう。
それが、妊娠4ヶ月になり、子宮が新生児の赤ちゃんの頭くらいの大きさになると、子宮が骨盤から上のほうに上がってくるので、おなかの膨らみに気づく人も出てきます。
妊娠中期:膨らみが目立ち始める
妊娠5ヶ月(16週~19週)になると、さらに子宮が大きくなり、おなかの膨らみに現れてきます。遅くても、妊娠20週くらいまでには、おなかの膨らみを実感できるようになるでしょう。「もしかして、おめでた?」と声をかけられることもあるかもしれません、これからどんどんおなかが大きくなって、どこから見ても「妊婦さん」らしくなってきます。
子宮の大きさは、妊娠5ヶ月で大人の頭くらい。妊娠6ヶ月になるとさらにひと回り大きくなって、おなかが前のほうにせり出してきます。妊娠7ヶ月になると、おへその上のほうまで膨らんできます。
妊娠後期:赤ちゃんの成長とともにより大きく
妊娠後期(妊娠8ヶ月~10ヶ月/28週~39週)になると、おなかはさらに大きくなり、子宮はおへそとみぞおちの中間くらいまで上がってきます。おなかは、足元が見えなくなるほど前にせり出してくるので、転ばないように注意しましょう。
妊娠9ヶ月は、子宮の位置が最も高くなり、みぞおちの上にまで上がってきます。子宮は胃や膀胱、腸なども圧迫するので、つわりのように気持ちが悪くなったり、動悸や息切れ、頻尿、便秘、痔などに悩まされることも。
しかし、10ヶ月になると、赤ちゃんの頭が下がり、子宮の位置も少し下がるので、動悸や息切れは減ってきます。しかし、逆に膀胱や直腸は圧迫されるので、便秘になったり、尿が出にくくなったり、残尿感が残ることも。
膨らむだけじゃない!他にどんな変化が?
妊娠してどんどん膨らんでくるおなか。それに伴っておなかの表面に妊娠線ができたり、乾燥したり、毛深くなったり…と、ちょっと気になることが起きることも。おなかの肌トラブルと予防法を知っておきましょう。
妊娠線ができる
皮膚は、表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」の三重構造になっています。妊娠しておなかが急速に膨らむと、表皮は伸びやすいのですが、真皮がそのスピードについていけずに、ヒビ割れてしまうことがあります。赤紫色のみみず腫れのようなスジが出てきたら、それが妊娠線です。
必ずできるものではないですし、痛みなどもありません。ただ、かゆみがある、という人はいます。一度できてしまうと、産後も白いスジとなって残ることが多いでしょう。
皮膚が乾燥しやすくなる
妊娠してから乾燥肌になった。肌がかゆくてしかたない。そう訴える人は少なくありません。
妊娠中はホルモンのバランスが変わります。大きくなった子宮が母体の臓器や血管を圧迫します。赤ちゃんへの栄養や酸素供給が優先されています。これらが原因で、母体は血行不良になりやすく、おなかの皮膚も過伸展します。その結果、肌が乾燥しやすくなるのです。
毛深くなる
おなかの膨らみとともに、なんだか毛深くなったような…。個人差はありますが、おへその下のギャランドゥが濃くなった! という人もいます。
妊娠中は、女性ホルモンが活発に分泌されます。男性ホルモンも分泌されています。これらのホルモンには、発毛を促したり、抜け毛をおさえる作用があるため、毛深くなることがあるのです。
おなかの膨らみはどうケアする?
おなかが急激に大きくなると、できやすい妊娠線。一度できてしまうと、あとあとまで消えないし、かゆみの原因にもなります。妊娠線の予防法、乾燥肌の対処法もご紹介します。
保湿やマッサージ
妊娠線にも乾燥肌にも有効なのは、やはり保湿。クリームや肌用オイル、馬油などを使ってケアしましょう。おなかが大きくなる前から、お風呂上りなどにたっぷり使って、やさしくマッサージ。皮膚の伸びをよくしておけば、妊娠線もある程度、予防できます。ただし、熱いお風呂や長風呂は要注意です。お肌にもよくないですし、おなかの赤ちゃんは熱に弱いので、温め過ぎてはいけません。
締め付けのない下着
きつい下着や洋服で、体を締め付けないことも大事。きつい下着などで血行不良になると、お肌に悪いだけでなく、母体の不調や赤ちゃんの発育にも影響します。おなかが大きくなってから「着るものがない!」と慌てないためにも、早めに、マタニティ用のゆったりした下着や服を準備しましょう。
栄養を意識して
妊娠中はいつも以上に、ビタミン、ミネラル、食物繊維が必要です。緑黄色野菜、きのこ、おいも、海藻なども意識して食べるように心がけましょう。タンパク質や鉄分も大事。肉や魚、大豆などもしっかり。ごはんと味噌汁、主菜、副菜などがバランスよくいただける和食がおすすめです。
ただし、塩分のとり過ぎには十分注意して。体重の異常増加は、水分の過剰蓄積による場合が多いからです。体重が急激に増えると妊娠線の原因になります。
妊娠中の食事は、母体の健康のため、赤ちゃんの健康と成長のためですから、バランスを意識しながら、おいしく楽しくいただきましょう。
頻尿、便秘は妊娠と関係ある?
子宮が大きくなってくると、胃や心臓、肺、膀胱、腸、血管などの臓器を圧迫するので、さまざまな不調が出てくることがあります。どんな臓器がどんな影響を受けて、どんなことが起こるのでしょう?
頻尿。尿もれの原因は、膀胱の変形
妊娠前と妊娠中のおなかの中を見てみましょう。膀胱は子宮のすぐ隣にあります。妊娠するとどんどん大きくなっていく子宮におされて、膀胱は細長く扁平になっていきます。伸びも悪くなって、ためられる尿の量も少なくなります。だから、1日に何度も何度もトイレに行きたくなるのです。
妊娠した子宮の影響で、尿管(腎臓から膀胱に続く管)も、広がっています。もともと男性に比べて弱い尿道近くの筋肉(尿道括約筋)も、さらに弱くなって、しまりがなくなっています。妊娠中に増えるエストロゲンなどのホルモンの影響なのです。
くしゃみやせきをしただけで、尿もれが起こるのは、妊娠中はある程度しかたないことなのです。
尿もれは、体を守る防御反応
とはいっても、ちょくちょくトイレに立つのは面倒だし、ふとした拍子におしっこをもらしてしまうのも、できれば避けたい。
でも、もし妊娠中に、頻尿にも尿もれにもならなかったら、どうなるでしょう?
膀胱は、相変わらず子宮に圧迫されていますから、たまった尿が、ふとした拍子に外に出ないで、腎臓に逆流してしまいます。妊娠中は膀胱に残った尿に雑菌が繁殖して膀胱炎になりやすいので、逆流したときにその雑菌まで腎臓に入り込むと、
また、分娩のときに尿が膀胱にたまったままになっていると、赤ちゃんが出てくるときに圧迫されて、膀胱や尿道がダメージを受けてしまうこともあるのです。
こう考えると、頻尿も尿もれも、そんなに嫌うべき症状ではなくなるのではないでしょうか? どちらも、妊娠中の体を守るために必要な防御反応なのですから。
子宮の中にいるのは、愛しい赤ちゃん。その赤ちゃんが大きくなっている証拠ですから、あまり神経質に考えすぎないようにしましょう。
まめにトイレに行って、おしっこをためない。おしっこしたいという感覚も鈍くなっているので、はっきりとした尿意がなくても、定期的にトイレに行く習慣をつける。だからといって、腹圧をかけて無理にいきんでおしっこを出したりすると、後々の尿もれの回復に影響します。生理用ナプキンをあてることが多いようですが、これだと股間に尿の湿り気が残ります。尿吸収専用のパッドをつけて備えることで乗り切っていきましょう。
腸や肛門も圧迫されて、便秘や痔に
妊娠中のおなかの中を見れば、膀胱だけでなく、腸も圧迫されているのがわかります。縮こまった腸は働きが鈍くなり、血流も悪くなります。水分の代謝も変わるので、便が硬くなって出にくくなるのです。さらに、硬い便は痔も悪化させてしまいます。妊娠中は、肛門周辺にも、むくみがあるので、なおさら痔になりやすいのです。
妊娠中に起こりがちな痔の正体は、じつは痔核と呼ばれる、血管(静脈)がこぶのようになったものがメインです。妊婦の多くが、この痔核に悩まされています。
妊娠中の血流量は、出産時の出血に備えて、妊娠前の1.4倍にも増えています。骨盤内の血管も増えて拡大して太くなっています。糸のように細かった血管は、楊枝(ようじ)くらいの太さになり、楊枝ほどの血管はお箸の太さに、お箸の太さの血管は指1本分くらいの太さに変化しています。肛門付近には、とくに網の目のように血管が張り巡らされているので、これらの血管が膨らんで、痔核になりやすいのです。
妊娠中は、食物繊維が豊富な食べ物や乳酸菌をとるように心がけて、便秘にならないようにすること。朝、起きたら、一杯のドリンクを飲む、朝食をきちんととる、などして排便の習慣をつけるようにしましょう。また、長い時間歩いたり、立ちっぱなし、座りっぱなしなどを避けて、日常生活の中で、骨盤内の血流を促しましょう。これが、便秘と痔を予防する、いちばんの方法です。
胃、心臓や肺までも変形している
大きくなった子宮に圧迫されているのは、膀胱や腸だけではありません。胃やその上にある心臓、肺までも押し上げています。
妊娠前に、縦長に配置されていた胃は、持ち上げられて横位置に近くなります。そのため、胃液の流れが悪くなって、ぜん動もうまくいかなくなります。むかむかしたり、食欲が沸かなかったりするのは、このせいもあったのです。げっぷとともに、吐くような感じになるのは、胃が横になっているために、胃の中の空気がスムーズに出てこられないからです。
子宮は、さらに横隔膜全体を押し上げ、心臓や肺のカタチまで扁平にします。そのために、心臓はときに頻脈や不整脈を起こし、肺活量も小さくなります。妊娠中はちょっと動いただけなのに、ドキドキしたり、ハアハアしてしまう理由は、ここにあったのです。
産後はどうなる?
赤ちゃんが子宮を飛び出し、子宮が元の大きさに戻れば、頻尿や尿もれ、便秘や痔の多くも元に戻ってよくなっていきます。胃もすっきり、心臓や肺も元の大きさに戻ります。
ただし、妊娠中に症状を悪化させないことが大事です。便秘などは習慣化するものですし、痔を悪化させれば、産後も尾をひいてしまいます。
出産時には、赤ちゃんを出すために、尿道や肛門、腟まわりの骨盤底筋群と呼ばれる組織が、どうしてもダメージを受けます。そのダメージが大きいと、産後の尿もれや脱肛、子宮下垂などの原因になります。
骨盤底筋のダメージは、お産のときに分娩の流れをスムーズに進めることで減らすことができます。産褥期はできるだけ養生し、産後3週間以降を目安に骨盤底筋群を強化する体操で、しっかり回復をはかることも、大切です。
監修/小川博康先生(小川クリニック院長) 取材協力/小川クリニック(神奈川県横浜市戸塚区)
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