妊婦の尿タンパク・尿糖検査について
妊娠中の検査シリーズ第4回のテーマは、「尿タンパク・尿糖検査」。これらの尿検査は、妊婦健診のたびに受ける基本の検査です。
尿を調べることで何がわかるのか不思議に思うかもしれませんが、尿には腎臓の働きを教える情報が詰まっています。そのため、正しく調べることで、妊娠中の病気に早く気づくことができるのです。
ここでは、尿検査でわかることを解説!「尿タンパクが陽性の時に心配な病気は?」「菓子パンや甘いジュースで尿糖が陽性になる?」といった尿検査にまつわるギモンにもお答えします!
尿タンパク検査
尿の中にタンパクがあるかどうかを調べる。妊娠中は生理的にタンパクが多いタンパク尿になりやすいが、腎臓機能の低下、腎臓病、妊娠高血圧症候群の症状のこともある。
検査時期 | 妊婦健診のたび |
---|---|
検査方法 | 尿検査 |
検査結果 | 基準値:陰性(-)。 陽性(1+、2+、3+)。 *陽性は要注意。タンパク量が多いと+の数も多い。 |
母子健康手帳の 記入例 |
病院で実施日と検査結果を、尿蛋白の欄に記入。 「- + ++」のいずれかに、チェック。 |
- *検査結果は、「50mg/dl」など数字でも表すが、試験紙の種類や検査機関によって違うので、具体的に表記されないことが多い。
尿糖検査
尿糖の「糖」はブドウ糖のこと。血液中に含まれる糖の量が多いと、尿の中に漏れ出てくる。尿中にブドウ糖が出ると血糖値が高い、つまり、糖尿病合併妊娠、妊娠糖尿病が疑われる(血糖検査についてを参考に!)。但し、正常の妊娠でも糖を血液内に保持する力が弱くなるので、食後すぐに検査すると陽性になることがある。
検査時期 | 妊婦健診のたび |
---|---|
検査方法 | 尿検査 |
検査結果 | 基準値:陰性(-)。陽性(1+、2+、3+)。 *陽性は要注意。糖の量が多いと+の数も多い。 |
母子健康手帳の 記入例 |
病院で実施日と検査結果を、尿糖欄に記入。 「- + ++」のいずれかに、チェック。 |
- *検査結果は、「50mg/dl」など数字でも表されるが、試験紙の種類や検査機関によって違うので、具体的に表記されないことが多い。
もっと知りたい尿タンパク検査!Q&A
尿検査ってどんな検査?
採尿した尿に検査用化学物質が添付された試験紙を浸して、色の変化から、尿中のタンパク量を判断します。色のついたジュースやビタミン剤を飲んで尿に色がつくと、検査結果に誤差の出るときがあります。誤差は小さいのであまり影響はありませんが、控えるのが無難です。
1回でも尿タンパクが陽性なら病気?
1回だけ尿タンパクがプラスと出ても病気が原因とは限りません。妊娠中は腎臓への血液循環量が多くなり、腎臓の処理能力に負担がかかるので、一時的に尿タンパクがプラスになることはよくあります。とくに妊娠後期に多くなります。また、運動したあとや食べ過ぎた時、過労や発熱、便秘などでも、尿タンパクが陽性になることがあります。一時的な陽性と思われる時は時間をおいて再検査します。
中間尿って何?
中間尿というのは、排尿途中の勢いのある尿のことです。排尿開始直後の尿は腟分泌物などが混じって陽性になることがあるので、検査のときは、この中間尿を採尿するようにしましょう。
朝起きて、いちばん最初の尿をとってくるように言われたのは、なぜ?
安静時の腎臓の働きをより正確にみるためです。早朝の尿にタンパクがあると、腎臓機能の低下や腎臓病が疑われます。正確に判断するために、1日分の尿を貯めて検査することもあります。
尿タンパクが陽性の時、心配な病気は?
血液は腎臓で濾過され、体に必要な栄養素を再吸収して、最終的に要らない物だけを尿として膀胱に送る働きをしています。体に必要なタンパク質が尿の中に出てしまうのは、腎臓の働きが低下しているサインです。一時的に腎臓機能が低下している場合もありますが、腎臓病や妊娠高血圧症候群の症状のこともあります。
妊娠初期に尿タンパクを調べるのはなぜ?
腎臓機能の低下や腎臓病を早く診断するためです。腎臓は我慢強い臓器なので、はっきりした症状がないまま働きが低下していることがあります。妊娠週数が進むと腎臓への負担は大きくなり、もともと持っていた腎臓病が悪化したり、妊娠高血圧症候群を起こしやすくなります。おなかの赤ちゃんの発育にも悪い影響を与えます。妊娠高血圧症候群を正しく診断するためにも、妊娠初期に尿タンパクの検査を行います。
妊娠高血圧症候群は、どんな病気?
母体・胎児の両方に重大な影響を起こしかねない怖い病気なので、早期発見が非常に大切です。主な症状は高血圧とタンパク尿なので、妊婦健診では必ず血圧と尿タンパクを調べます。高血圧の程度が高く、発症の時期が早いほど重症です。タンパク尿の値でいうと、300mg/日以上~2g/日未満が軽症、2g/日以上は重症です。
もっと知りたい尿糖検査!Q&A
妊娠初期に尿糖を調べるのはなぜ?
糖尿病が隠れていないか、糖尿病になりやすい体質かどうかを早く知るためです。このため、妊娠初期(妊娠8週前後)に尿糖を調べるように推奨されています。
尿糖が陽性なら、必ず血糖値を調べるの?
尿糖が陽性の場合、糖尿病が原因かどうかを調べないといけません。とくに妊娠初期から糖尿病があるとおなかの赤ちゃんに奇形が起こる心配もあります。糖尿病は血糖値を調べると診断がつきます。このため、妊娠初期(妊娠4~12週)には随時、血糖を調べるように推奨されています。それ以降も尿糖がたびたび陽性になったり、尿糖検査の数値が高い場合には、血糖値を調べます。
尿糖が陽性になりやすい体質はある?
体質的に腎臓の糖の処理能力が低くて尿糖が出やすい人がいます。腎性糖尿といい、妊娠初期から尿糖がプラスになります。血糖値を調べて糖尿病がないとわかれば、食事制限や生活上の注意は必要ありません。
妊娠後期には尿糖が陽性になりやすい?
妊娠後期には尿糖がプラスになることがよくありますが、必ず妊娠糖尿病というわけではありません。妊娠をすると食べ物に含まれる糖を体内用の糖に変えるインスリンの量が増えます。胎盤からインスリンを分解するホルモンが分泌されるので、これに対抗するためです。しかし、インスリンの量や糖を処理する腎臓の働きには限界があって、尿に糖が出やすくなります。尿糖がプラスでも血糖値が正常なら妊娠期特有の生理的な変化なので心配ありません。
菓子パンや甘いジュースで尿糖が陽性になる?
ブドウ糖のもとはご飯やパン、麺類などの炭水化物、それに甘い食品に含まれる糖分です。尿検査の前に炭水化物や甘い物をたくさんとると、一時的に血糖値が高くなって尿糖が陽性になることがあります。糖尿病による高血糖でなければ、次回の検査時に控えると正常になるはずです。また、あまり心配はありませんが、試験紙にはビタミンCの影響を受ける物があり、誤差が出ることがあります。市販の飲料の中には、ビタミンCや糖分がかなり含まれている物があるので、注意しましょう。
- ※血糖値の検査については、血糖検査についても参照してください。
取材協力/国立成育医療センター(世田谷区)
監修/久保隆彦先生(国立成育医療センター 周産期診療部産科医長)
update : 2009.07.01
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