妊娠初期に気をつけることはある?食べ物や行動、やってはいけないことを解説

つわりをはじめ、日に日に変化する自身の体調に戸惑いを感じている妊婦さんもいるかもしれません。個人差はあるものの、仕事を休んだりやめたりすることで運動不足になり、体重の増加が進んでしまったり、便秘したり、イライラしたり……。ママと赤ちゃんの健康を守るために、セックスや病気、食べ物、ダイエットなどの妊娠中に気をつけたい5つのことを、助産師の浅井貴子さんに伺いました。
監修者プロフィール
浅井貴子さん
都内在住フリー助産師。産後ケアホテルマームガーデンリゾート葉山アドバイザーを務め、妊婦さんから乳幼児の育児指導には定評がある。
妊娠初期の症状とは?
妊娠初期症状とは、妊娠の初期(妊娠0〜15週)に体に表れる変化のこと。妊娠に気づくきっかけとなる症状で、主に以下のような症状があります。
- 着床出血
- 胸の張り・痛み
- おなかの張り、腹痛、下腹部痛
- 腰痛
- 頭痛
- 肌トラブル
- 嗅覚の変化
- 唾液・鼻水の変化
- 頻尿、便秘、下痢
- おりものの変化
- 体のだるさ、眠気
- 情緒不安定
- 胃のムカツキ
- 基礎体温が高くなる
- 食べ物の変化
- 息切れ
- 生理の遅れ
これらは妊娠したことによるホルモンバランスの急激な変化で起きるもので、妊娠中期の安定期に入ってくると症状は和らいでくることが多いようです。
妊娠中に気をつけること5つ
1.妊娠中のセックス
お互いに求め合う気持ちがあれば、妊娠中もセックスはOKです。でもルールを守ることが大切。妊娠初期の11週以前と妊娠後期の32週以降は、流産・早産が心配なので控えた方が良いです。セックス中に体調が悪くなった時は無理をしないこと。感染症予防のためにコンドームをつけること。手や爪などを清潔にすることも必要です。また、正常位では夫やパートナーは腕を伸ばし、妊婦さんのおなかを圧迫しないようにするなど、体位によっても注意が必要です。挿入が深くなる屈曲位などはおなかを圧迫するので妊娠中は避けたい体位です。また、妊婦さんに以下のような症状があるときはセックスは控えましょう。
- おなかが張るとき
おなかが張る時は子宮が収縮しています。収縮が強くなる心配があるのでやめましょう。
- 出血があるとき
出血があるときは、妊娠で充血している膣や子宮が傷ついたり、切迫流産・切迫早産のサインです。セックスは医師の許可を得てからにしましょう。
- 切迫流産や妊娠高血圧症候群のとき
切迫流産や切迫早産、妊娠高血圧症候群などで安静が必要な時は、セックスはやめましょう。
- 性感染症になってしまったとき
性感染症の治療中にセックスをすると完治が遅れるので、医師の許可が出るまで控えましょう。
2.妊娠中の病気
妊娠中は免疫力が低下しているため、体調を崩しやすくなります。規則正しい食生活はもちろんのこと、手洗いやうがい、十分な睡眠、定期的な運動を心がけて過ごしましょう。また、おりものが増えてきたらおりものシートの交換も頻繁にしましょう。入浴の際は、シャワーだけでなくできるだけ湯船に入りましょう。体温を上げて体を温めるとウイルスが近寄ってきにくくなります。以下、妊娠中にかかりやすく、妊娠前とは対応が異なる病気について知っておきましょう。
- 風邪
妊娠中の体は赤ちゃんを異物として攻撃してしまわないように、免疫力を落としています。そのため風邪をひきやすい状態に。37度前後の微熱や咽頭痛なら、ゆっくり体を休ませれば数日で回復する場合もあります。しかし、高熱が続く場合は体力が落ちて重症化することもあるので、症状が悪化する前に受診しましょう。また、新型コロナウィルスのように風邪と症状が似た感染症もあるので、いつもと体調が違ったら医師に相談することをおすすめします。市販の薬は使用せず、必ず産院に相談して、産院から処方される妊娠中でも飲んで良い薬を服用してください。
- 頭痛、肩こり
大きくなった子宮によって、血行が悪くなったり、姿勢が悪くなるために、頭痛や肩こりを引き起こすことがあります。お産への不安が原因のことも。適度な入浴と普段からのストレッチで血行を良くし、ストレスを解消すると、痛みが多少やわらぎます。頭痛の場合も市販の薬は使用せず、必ず産院に相談して、産院から処方される妊娠中でも飲んで良い薬を服用してください。
- 貧血
妊娠中は血液の循環量が増えます。でもその増加分の多くは水分(血漿)なので、貧血になりやすいことも。妊娠前から貧血の人はさらにひどくなりやすいので注意が必要です。食事で鉄分をきちんと摂取して予防を。鉄剤の使用も必ず産院に相談して、産院から処方される妊娠中でも飲んで良い薬を服用してください。
- 子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)
子宮内に筋肉のこぶのようなものができる病気。主に子宮の外側に飛び出すようにできる「漿膜下(しょうまくか)筋腫」、子宮壁の中にできる「筋層内(きんそうない)筋腫」、内側に突き出すようにできる「粘膜下(ねんまくか)筋腫」、子宮頸部にできる「子宮頸部(しきゅうけいぶ)筋腫」などがあります。受精卵が着床しにくいことから、不妊や初期流産の原因になることが。妊娠中は経過が順調であれば、多くの場合、それほど問題になりません。ただ、出産のときは陣痛が弱くなるなどのトラブルが起こることがあります。
- 虫歯
妊娠中は唾液の成分が変化するため、虫歯や歯周病がひどくなりがちです。おなかが大きいと歯科で治療を受けるのも大変です。できるだけ妊娠初期~中期のうちに治療を。治療を受けるときには予め産院に相談のうえ、歯科医にも妊娠していることを必ず伝えましょう。
3.妊娠中の食べ物
妊娠中の食事で注意したいポイントは二つあり、一つは妊婦さん自身の健康のため、もう一つはおなかの赤ちゃんのためです。
妊婦さん自身の健康にとって注意したいのは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など、母体が危険になる病気につながるような食べ物や食べ方です。特に注意したいのは塩分と糖分。塩分は高血圧の天敵です。薄味を心がけ、調理する時は塩味ではなく出汁で味の調整を。また、自身とおなかの赤ちゃんのために適正なカロリーは必要ですが、糖分を摂りすぎると血糖値が上がるだけでなく適正体重を超えてしまい、難産になる危険性もあるので、体重管理のためにも摂りすぎには注意しましょう。
おなかの赤ちゃんのために、妊娠前には気にせずに口にしている食材でも、妊娠中の妊婦さんの食事は赤ちゃんの栄養になるため、気をつけたい食べ物やポイントがあります。
■妊娠中は避けたいもの
- アルコール
おなかの赤ちゃんの成長や発達に悪影響の怖れがあるため妊娠中の飲酒はNGです。
- 生もの
妊娠中に妊婦さんが食中毒を起こすとおなかの赤ちゃんに悪影響を与えるため、生魚(お寿司も)、生の魚卵、生卵、生肉、生ハムなどは避けてください。トキソプラズマやサイトメガロウイルス感染になる場合もあります。加熱処理をすれば食べられます。ナチュラルチーズも加熱処理されていないため避け、チーズが食べたいときはピザなど火を通すか、プロセスチーズにしましょう。
■できれば避けたいもの (量を控えたいもの)
- 一部の魚
魚はたんぱく質やミネラル、カルシウムなどの栄養豊富で妊婦さんにとっても良質な栄養源ですが、一部の魚は水銀を多く含んでいるため、妊娠中の摂取量について厚生労働省が基準を定めています。
- キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ(インドマグロ)、ヨシキリザメ、イシイルカ、クロムツ…1回80gを週2回まで。
- キンメダイ、ツチクジラ、メカジキ、クロマグロ(本マグロ)、メバチ(メバチマグロ)、エッチュウバイガイ、マッコウクジラ…1回80gを週1回まで。
- コビレゴンドウ、バンドウイルカは水銀量が多いため、妊娠中は避けた方がよい。
上記以外の魚は加熱処理すれば積極的に摂っても大丈夫です。
- 昆布などヨウ素を多く含む海藻
ヨウ素は摂りすぎるとおなかの赤ちゃんの甲状腺機能が低下すると言われています。特に昆布に多く含まれ、日本人は出汁で無意識に多く摂取しているため、許容量を超えない注意が必要です。許容量の1日の目安は5cm角の昆布を500mlの水で出汁をとり、味噌汁1杯分の150mlです。
- カフェイン
おなかの赤ちゃんの発達に影響がある可能性があるため、カフェインを含むコーヒー、紅茶、緑茶は控えめに。
■食べたほうがいいもの
- 緑黄色野菜
妊娠中に意識して摂りたいのが「葉酸」。妊娠前や妊娠初期に葉酸を十分に摂取すると、赤ちゃんの神経管の先天異常の発症リスクを低下させる効果があるといわれています。ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれています。
- 鉄分が豊富なもの
妊娠中は鉄分が赤ちゃんに運ばれるため、妊婦さんが貧血になりがちです。そのため鉄分が豊富なレバーやあさり、納豆、小松菜、ほうれん草などを積極的に取り入れましょう。
- 乳製品などカルシウムが豊富なもの
赤ちゃんの骨や歯をつくるカルシウムですが、日本人は慢性的にカルシウム不足と言われています。牛乳やヨーグルトなどの乳製品、大豆製品、小魚などを意識して摂りましょう。
4.妊娠中の便秘・痔
妊娠すると便秘がひどくなるのは、妊娠を継続させるために増える黄体ホルモンが腸の動きを抑えたり、大きくなった子宮が腸を圧迫して、動きを妨げたりするから。また、運動不足や野菜不足の食生活も便秘を悪化させる原因になります。便秘がひどくなると、肛門の粘膜が傷ついて出血したり、静脈が圧迫されてうっ血し、こぶができます。これが痔(いぼ痔)です。放っておくと悪化するので、早めに主治医に相談を。座薬など、妊娠に影響しない薬を処方してくれます。
■便秘の解消法
- 食物繊維をたくさん摂る
ほどよい柔らかさと量の便を作り、腸内環境を整える食物繊維を一日20~25g(切り干し大根100g程度)を目標に摂ります。特に寒天やところてん、海藻類、ナタデココなど、水溶性の食べものがおすすめです。
- 適度な運動をする
腸の動きを刺激するために、毎日、ウォーキングやヨガ、ストレッチなどで適度に体を動かすことも必要です。
- ヨーグルトを食べる
ヨーグルトに含まれる乳酸菌などの善玉菌を増やして、腸内環境を良くすることも大切です。
- 毎日決まった時間にトイレに行く
毎日、出ても出なくても同じ時間帯にトイレに。便通のリズムが整い、便意を感じやすくなります。
■痔の種類
- いぼ痔
肛門の静脈に血液がうっ血し、こぶのようなものができる痔。妊娠中は特にできやすい。
- 切れ痔
硬い便を出そうとして、肛門の粘膜に傷がついた状態。出血や痛みがある。妊娠中に多い。
- 痔ろう
肛門と直腸の境目で細菌感染が起こり、化膿する病気。便秘が原因で起こることは少ない。
■痔を予防するには?
- 血行を良くする
お風呂で温めたり、シャワーを当てて、肛門の血行を良くする。
- 無理にいきまない
便を出そうとトイレで頑張りすぎると腹圧をかけてしまいます。お腹が張る事もあるので無理のない範囲で。
- 清潔にする
排便後はシャワートイレで清潔に。入浴時もお湯できれいに洗いましょう。
■痔になってしまったら?
- 刺激物を控える
痔の炎症を悪化させる唐辛子などの刺激物は避けます。
- 立ちっぱなし・座りっぱなしは避ける
長時間、立ち続けたり、座り続けるなど、同じ姿勢をとっていると血行が悪くなり、痔が悪化してしまいます。
- 清潔にして血行促進
肛門にシャワーをあてると、感染予防と血行促進の効果がアップ。
※治療が必要なほど痔が悪化してしまったときは、産院の主治医にまず相談しましょう。
5.妊娠中のダイエット
妊娠中は、おなかの中で赤ちゃんを育てるために栄養を蓄えなければならないので、体重が増えるのは当然のこと。過度なダイエットはNGです。とはいえ、食欲のままに食べてしまうと太りすぎてしまい、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、難産になる可能性が高くなってしまいます。バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。おすすめは安定期を過ぎてから行うマタニティエクササイズ。簡単なストレッチで体調不良を改善したり、ヨガでリラックスするなど、気が向いたときに10分程度、体と心を軽やかにしましょう。プールの中で妊婦さん向けの有酸素運動をするマタニティスイミングやアクアは、水圧によってむくみが解消されやすく、水の浮力があるため、腰痛や関節痛があっても体を動かしやすいことが最大のメリット。楽しく運動しながら持久力がついて、お産の自信にもつながります。
マタニティエクササイズを行うときには、予め主治医と相談して、許可が出てからにしましょう。妊娠経過にトラブルがあったり、おなかが張っているときは、無理に行わず、安静にしましょう。
■妊婦生活を快適にするエクササイズ
- ストレッチ
腰痛や便秘、むくみなどの不快症状もやわらぎ、お産にも備えることができます。
- ヨガ
ゆっくり呼吸することで、心も体も解きほぐされたようにリラックス。お産にも役立ちます。
- ウォーキング
いつもの散歩にちょっぴり本格的なウォーキング法を取り入れて。体重管理にもひと役買ってくれます。
- マタニティビクス
妊婦用にアレンジされたエアロビクス、音楽に合わせて心地いい汗をかけば心もスッキリ。
- マタニティスイミング、アクア
プールの中で行う運動。水の浮力があるので、腰痛や足の浮腫がある人に最適で体重のコントロールがしやすいです。
妊娠初期に夫・パートナーや同居の家族が気をつけること
これまで挙げてきたように、妊娠すると妊婦さん自身は体も心も大きく変化してきます。妊娠初期から出産まで、心身ともにさまざまな変化を経ていくことは、周囲には伝わりにくい辛いこともたくさんあります。夫・パートナー、もしくは同居している家族がいる場合は、特に妊娠初期は妊婦さんにとっても、赤ちゃんにとっても大事な時期で妊婦さんに無理は禁物であることを理解してもらいましょう。また、つわりは非常に辛いことなので、家族に家事を頼れるようにしたいですね。妊娠中はホルモンバランスの変化で気持ちに浮き沈みがあることも伝えておきましょう。妊婦さんは禁酒が必須なので、お酒が好きな妊婦さんの前では飲まないような配慮もほしいですね。タバコは妊婦さんには絶対NGなので、この機会に家族にも禁煙してもらいましょう。そして、切迫早産などの不測の事態があることについても話し合っておくと、万一が起きたときの心構えもできますね。初めての妊娠は妊婦さん本人にも家族にも不安が多いものです。お互いで要望を伝えあったり気を配れるようにできるといいですね。
妊娠初期に関するよくあるQ&A
初めての妊娠はわからないことだらけ。妊娠初期についてよくある疑問にお答えします。
Q:妊娠初期・中期・後期っていつのこと?
妊娠して産院にいくと、妊娠の経過を週数で表すようになります。妊娠週数の数え方は、妊娠前の最終月経の開始日を「妊娠0週0日」とします。1週を7日として、妊娠40週0日目(280日目)が出産予定日となります。40週の妊娠期間のうちの、最初の0週0日〜13週6日を「妊娠初期」、次の14週0日〜27週6日を「妊娠中期」、最後の28週0日以降を「妊娠後期」と呼んでいます。
Q:妊娠初期症状にあたる症状がほとんどないけれど?
妊娠初期症状にはとても個人差があります。生理が止まることと、基礎体温が高くなること、おりものの変化以外は人によってバラつきがあり、つわりがほぼないまま出産を迎えたといううらやましい先輩ママも多数います。症状がないからと気に病む必要はまったくありません。
Q:妊娠初期が大事な時期というのはなぜ?
妊娠初期は流産が多い時期のため、大事な時期とされています。医療機関で確認された妊娠のうち15%が流産になり、妊娠12週未満での流産が8割以上でありほとんどを占めるためです(*)。ただし、早期に起こる流産の原因で最も多いのが赤ちゃん自体の染色体異常のため、妊娠初期の妊婦さんの仕事や運動などが原因で流産することはほとんどないそうです。
(*出典元:公益社団法人 日本産科婦人科学会「産科・婦人科の病気〜流産・切迫流産」)
妊娠中に気をつけることをたくさん挙げましたが、妊娠中に一番大切なことは、リラックスした穏やかな気持ちで毎日を過ごすことです。ホルモンバランスの変化で気持ちが不安定になったり、ちょっとしたことでストレスを感じてしまうこともあるかもしれません。映画や音楽、読書など、少しでも自分が幸せな気持ちになることをしたり、好きな人とたくさん話したり、たまには美味しい食事を思いっきり食べたり…。ストレスを溜めずに自分のペースでマタニティライフを楽しんでくださいね。ママが幸せな気分だと、赤ちゃんも幸せです。
監修・取材協力/浅井貴子さん
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update : 2024.12.23
release : 2018.01.31
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