マタニティスイミングって?プールで泳ぐことの効果

妊娠がわかると、赤ちゃんに会える日が待ち遠しくなります。でも、お産は体力を使うというし、産後の育児もなんだか大変そう。そう考えだすと、自分の体力が持つのか、急に心配になってきます。もしかして、今のうちに体力をつけておいたほうがいいのでしょうか?
今回は、これまであまり運動をしてこなかった人のために、始めやすい「マタニティスイミング」をご紹介。マタニティスイミングインストラクターの浅井貴子さんに、運動経験の少ない人でも安心な理由や、マタニティスイミングのメリットについて伺いました!
取材協力
浅井貴子さん
マタニティスイミングインストラクター。助産師でもあり、マタニティーアロマセラピストでもある。大学病院、未熟児センターで勤務ののち、現在は地域助産師として母親学級、育児相談、新生児訪問なども行う。助産師のメディカル知識を活かした、マタニティスイミング&アクアビクスに定評がある。また、妊婦対象の「プレママ★アロマ教室」を開講し、安全な精油の使い方や自然な出産方法の提案を行う。
『妊娠線に…アロママッサージ』『いぼ痔・切れ痔にアロマオイル湿布』『会陰切開・裂傷予防にアロマオイル湿布』の記事でも協力いただいた。
陸よりも水の方が、安全で気持ちいい!
いきなりですが、スイミングって、なぜ、おすすめなんでしょう? 着替えに時間がかかるし、髪が濡れちゃうし、お化粧も落ちちゃうし、ムダ毛のお手入れだって……(ゴニョゴニョ)。マタニティ用の水着も、限られた時期のためだけにわざわざ買うのはもったいない気もするし……。
「確かに、そうかもしれませんね。でも、マタニティ向けのプログラムがあるジムの多くは妊婦さん用の水着レンタルを用意していますよ。平日の夜や土日など、お仕事をしながら利用できるプログラムも増えています。そして何よりも、一度水に入ってごらんなさい。気持ちよさと目に見える効果に、絶対にリピートしちゃいますから!(ニコッ)」
笑顔でそう答えて下さったのは、助産師でもあり、マタニティスイムインストラクターでもある浅井貴子さん。どうやらスイミングには、面倒くささを補って余りある魅力がある、みたい、です。
「まず、水の中は転ばない!(笑) 水が母体と赤ちゃんを守ってくれるから、運動経験のない人、運動に自信がない人でも危なくないです。そして水の中は陸上の8倍!の圧がかかります。水の中に入ると自然とむくみが取れて、足がシュッと締まるんですね。つい1時間前まであった“靴下の跡”がスッと消えるのが快感で、やみつきになる方が多いんですよ」
おお~! ドンヨリ重いむくみ足が、そこまで目に見えて改善するとは!?
「陸上でウォーキングをすると、特に後期は、血液やリンパが滞ってパンパンにむくんでしまいますね。でも水中では、浮力のおかげで四肢に負担がかかりません。陸よりはるかに軽快に運動ができますし、めぐりもよくなりますから、スイミングのあとは300~700gくらい体重が減るんですよ」
な、ななひゃく!! マジですか!!!
やばい、めちゃくちゃやってみたくなりました!!
逆子が直る人も!? 驚くべき「水」のチカラ
浮力――。どうやらこれがマタニティスイミング最大の魅力のよう。
「浮力のおかげで、重力から解放され、お腹の重みを忘れられるんです。ジャンプできるわ、腹這いになれるわ、陸ではできないこともやりたい放題です(笑)」
水底に深く潜る「いるか飛び」は、逆立ちと同じ効果があり、逆子が直った!という人もいるとか。また、まあるいお腹はビーチボールを抱えているのと同じで、よく浮くそう。妊娠中は人生でイチバン泳げる時期…という人もいます。
「プールの水温はだいたい32℃前後。体温より4℃ほど低めです。“体を冷やすのでは?”と心配される方もいますが、むしろ体温を維持するために筋温を上げようとするので、体が燃えやすくなり、有酸素運動の効果がさらに高まるんですよ」
レッスン後はジャグジーやシャワーなどで体を温めてリラックス。これがまた、妊娠中のストレス解消になっていいそう。
「早産気味の方、子宮口が開いている方は医師の許可が下りないこともありますが、基本的には16週ごろから予定日の40週まで、かなり長い間できるスポーツです」
いるか飛びの動作。水中の中を飛び込むように深く潜るため、お腹の天地が自然にひっくり返って逆立ち姿勢になります。
会陰ものび~る!? 筋力を鍛えていいこといっぱい!
水の抵抗で、筋力がつく。これもマタニティスイミングの利点です。
「妊娠すると動きが制限されるため、腹筋や背筋がどんどん弱くなってしまい、産後は体がグラグラになってしまいます。水の中にいると水の抵抗にさからって自然に筋肉を使うから、産後に備えて体づくりができるんですよ」
水をかく、腕を回すといった上半身の動きも、これから母になる人にとっては大事な動作です。大胸筋や肩甲骨のまわりの筋肉は、おっぱいを作るときに欠かせないもの。マタニティスイミングの経験者は母乳育児率が高いというデータも、日本臨床スポーツ医学会が科学的に証明しています。
「お産のときに踏ん張る力もそうですが、筋肉がたくさんついていると体が冷えにくく、いい陣痛がつきやすいという説があります。最近、陣痛がなかなか強くならない微弱陣痛の妊婦さんが増えていますが、これ、体の冷えと無関係ではないなと私の経験則から感じます」
浅井さんには以前「会陰マッサージ」の回でもお世話になりました。先生直伝のオイルマッサージに、マタニティスイミングを併用した人は、なんと7割が「会陰が切れなかった」「切開しなくてすんだ」と回答しています! 一体ナゼ!?
「平泳ぎなど足を開く動作によって、股関節や会陰周辺の筋肉や皮膚が自然に伸縮するんです。こうしてストレッチをしておくことで、分娩時によくのびてくれるようになります」
浅井さんのプログラムは約1時間。約15種類のウォーキングや泳ぎを取り入れながら、トータル1000mほどを歩いたり、泳いだりします。
今回は、公営プールなどで実践できるものを4つご紹介! 助産師やインストラクターが付いたマタニティ専門のプログラムが受けられなくても、入水前に産婦人科で相談してOKをもらえば、妊娠中だからといってプールに入るのをためらうことはないそうです。
平泳ぎでしなやかな股関節&会陰に!
レッスン(1)股関節ほぐしウォーキング
プールの底に引かれたラインを使って、股関節をほぐしながらウォーキングをします。
大きく横に足を広げ、ラインをクロスにまたぐようにして、ゆっくりと一歩ずつ前へ。股関節がしっかりと動いていること、太ももの内側の内転筋が使われていることを意識しながら、一歩一歩歩きましょう。
レッスン(2)肩回しクロール
クロールの手のかき方にも、マタニティスイミングはちょっとコツがいります。
通常、速く泳ぐためには、かいた手を頭の上にクロスするように回して水の抵抗を小さくします。一方、マタニティスイミングでは、ひじを曲げずに体の側面にそってまっすぐ下ろします。ゆっくりと大きく、より遠くに手のひらを着水するイメージで。肩のジョイントをぐる~んと回して、肩と肩甲骨周辺をしっかりほぐしましょう。
レッスン(3)浅井式・出産泳法
「出産泳法」は通常のスイミングにはない泳ぎ方! 股関節をほぐしながら、骨盤底筋群をはじめ全身の筋力が鍛えられます。
まずは、あおむけになり、手足を伸ばしてプカプカと浮きます。さらに、カエルのようなポーズで手足を広げて曲げ、大きく水をかきながら頭の方向へ進んでいきます。
浮く感覚がつかめない人は、ビート板を使って浮力をサポート。足をしっかり開いて、滞りがちな股関節をしっかりと動かしましょう。ビート板を使うと無駄な力が入らずリラックスできるので、泳ぎの合間にも取り入れてみて。
レッスン(4)水中座禅
分娩中、長く続く1分間の陣痛に耐えられるよう、呼吸法を身につけていきます。
パートナーやお友達にサポートをお願いして、肩にしっかりと体重をかけてもらい、ざぶん!と水の中に潜ります。20秒間ぐーっともぐり、プハーッと上がってきたら、間髪入れずにもう一度潜ります。最初はちょっとパニックになったり、苦しくて思わず息があがってしまいますが、慣れてくるとパニックにならずに冷静に呼吸をコントロールできるようになります。
今回、取材に協力してくれた女性のひとりは、今、二人目を妊娠中ですが、浅井さんとは、第一子のときからのおつきあい。はじめはカナヅチで、妊娠を機に体力をつけて泳げるようになりたい!と一念発起してレッスンに参戦。分娩のときには、プログラムで身につけた呼吸法に救われたそうです。いまではラクラク1000mを泳ぎ切れるように! すばらしいですね。
最後は浅井さんを囲んで、ピース!!ご協力、ありがとうございました!
取材協力/助産師・マタニティスイミングインストラクター 浅井貴子さん
update : 2016.08.03
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