【医師監修】新生児の体重増加の目安とは?どれくらいが正常?増えすぎ?

新生児の体重が増えているかどうかは、赤ちゃんの健康状態や成長を知るうえで大切な指標です。しかし、「思ったより増えない」「逆に増えすぎて不安」と悩むママやパパも少なくありません。この記事では、出生直後の体重減少やその後の正常な増加ペース、正しい測り方、増え方に関する原因と対処法などを、体験談も交えながらわかりやすく解説します。不安になったときの相談先も紹介します。
監修者プロフィール
今西洋介先生
一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事
小児科医・新生児科医。日本小児科学会専門医/日本周産期・新生児医学会新生児専門医。医学博士(公衆衛生学)。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。小児公衆衛生学者。富山大学医学部卒業後、都市部や地方のNICU(新生児集中治療室)で新生児医療に従事。「ふらいと先生」の名で、小児医療や育児に関する啓発を行い、社会問題解決に取り組む。現在は米国在住。3姉妹の父。 主な著書に『新生児科医・小児科医ふらいと先生の子育て「これってほんと?」答えます』(西東社、監修)、『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』(集英社インターナショナル)ほか多数。
新生児の平均体重と正常な体重変化の目安
新生児の平均体重や体重変化についての基本ポイントは次のとおりです。
- 新生児の平均体重は、男児:約2.98kg、女児:約2.91kg
- 生後数日は「生理的体重減少」により出生体重の5~10%が減少する
- その後、生後1週間程度で出生時体重へ戻る
- 生後1ヶ月までは1日25~30gの体重増加が目安
- 母子健康手帳には、赤ちゃんの月齢ごとの体重や身長を記録し、成長が標準的な範囲内かどうかを確認できる指標として「発育曲線」が載っている
以下、これらについて詳しく見ていきましょう。
ここでは赤ちゃんが月齢毎にどれくらいの体重になるかを具体的な数値とともに説明します。以下は、新生児~6ヶ月目までの平均体重・身長になります。
出生時の平均体重と生理的体重減少
日本人新生児の出生時平均体重は、男児で約2.98kg、女児で約2.91kgです。
出生直後は、多くの赤ちゃんが一時的な体重減少を経験します。これは「生理的体重減少」と呼ばれ、出生後3日目ごろが最も減少幅が大きくなります。体重減少の割合は通常出生体重の5~10%ほどで、胎内に蓄えた水分が排尿・排便などで排出され、一時的に栄養摂取が不足するために起こります。
その後、母乳やミルクの飲み方が安定してくると、生後4日~1週間以内に出生時体重まで回復するのが一般的です。
このように、体重が減少するのは正常な生理的現象です。ただし、減少の幅が10%を超えたり(出生時の体重が男児で約2.98kgだった場合は約2.68kg未満、女児で約2.91kgだった場合は約2.62kg未満になるのが目安)、10日以上たっても出生時体重に戻らなかったりした時は、小児科医に相談することをおすすめします。
生後1ヶ月までの体重増加の目安は?
生後1ヶ月までの「新生児期」は、1日あたり25~30gを目安に体重が増えていくのが一般的です。特に退院後から1ヶ月健診までの期間は、体重の増加が赤ちゃんの成長状態を知る重要な指標となります。体重が順調に増えていれば、授乳がうまくいっている、健康に発育しているなどの判断材料になります。
体重の推移は、母子健康手帳に記載されている発育曲線を使って確認できます。この発育曲線は、月齢ごとの標準体重やパーセンタイル帯(同月齢の中での平均的な体重範囲)をグラフ化したもので、赤ちゃんの成長の目安として広く使われています。多少の増減や個人差はあって当然ですが、継続的に曲線の範囲内で推移していれば大きな心配はいりません。
ただし、体重増加が明らかに少なかったり、曲線の下限を大きく下回る場合は注意が必要です。短期間で判断せず、数週間〜数ヶ月単位で全体の流れを見守ることが大切です。必要に応じて小児科医へ相談しましょう。
赤ちゃんの体重の正しい測り方と注意点
体重を測る際の基本ポイントは、次のとおりです。
- おむつ1枚で測定するのが推奨される
- 母子健康手帳や記録用ノートを準備
- 必ず体重計を平らで安全な床の上に設置
- 毎回できるだけ同じ条件・同じ時間帯を選ぶ
- 授乳直後や大泣き直後は避けて測定する
- 測定時は手を添えて安全を確保
- 測定記録は母子健康手帳の発育曲線にも記入する
具体的な手順や注意点を見ていきましょう。
自宅で正確に測るための準備と手順
赤ちゃんの体重は、家庭用ベビースケールやアナログ体重計を使って測るのが一般的です。正確に体重を測るには、以下の流れで行いましょう。
- 体重計の設置
平らで安定した床(フローリング等)に家庭用ベビースケールや体重計を設置します。ベビーベッドや布団の上ではなく、硬い床面に置くのが正確です。測定中は必ずそばで見守りましょう。目を離さず、赤ちゃんの安全を最優先してください。
- 準備
赤ちゃんをおむつ1枚にし、衣服の重さによる誤差を避けます。
- 測定
体重計の中心に赤ちゃんを静かに寝かせます。転落防止のため必ず手を添えましょう。
- 記録
母子健康手帳の発育曲線欄や、専用のノートに体重を記入します。
※なお、大人が赤ちゃんを抱いた状態で体重を測定し、大人のみの体重を引いても大まかな体重を出すこともできます。
測るタイミングなど測定時の4つの注意点
測定時には、次の4つに特に注意してください。
- 授乳直後は避ける
授乳や哺乳直後は、飲んだ量や排泄によって一時的に体重が変動します。授乳後すぐの測定を避け、排泄後など赤ちゃんが落ち着いているタイミングでの測定が推奨されます。
- 毎回同じ時間帯に測定
朝や昼など、1日の中のなるべく統一した時間帯に、同じ条件下で測りましょう。いつも同じタイミングで測ることで誤差が少なくなります。
- おむつ1枚で測るのがベター
測る時は、赤ちゃんをおむつ1枚の状態にするようにします。これは服やタオルの重さが加算されないようにするためです。裸にするとより正確ですが、脱がせる・はかせるのが大変なら、おむつのみというのがベターです。
- 赤ちゃんの体調に注意
発熱や大きく泣いている時などは無理に測ろうとしないこと。赤ちゃんが落ち着いているときに測定しましょう。
【悩み別】新生児の体重が増えない・増えすぎの原因と対処法
赤ちゃんの体重が思うように増えない場合、主な原因は母乳やミルクの量が足りない、消費カロリーが多い、または病気によるものが考えられます。一方で、体重が増えすぎている場合、飲み過ぎ(授乳量過多)が主な要因です。
- 増えない場合:母乳・ミルク不足、消費カロリー過多、病気の疑いなどが考えられる
- 増えすぎの場合:授乳量が多すぎる、満腹サインを見逃しているなどが主な要因
以下、詳しく説明します。
体重が増えない場合に考えられる3つの原因
赤ちゃんの体重が増えない時は、主に次の3つの原因が考えられます。
- 母乳・ミルクの量が足りていない
最も多い原因は、赤ちゃんが十分な量の母乳やミルクを飲めていないケースです。授乳回数が1日6回未満だったり、授乳前後での体重変化がほとんどない場合は、必要な栄養が足りていない可能性があります。授乳の間隔や時間、回数を見直したり、必要に応じて搾乳やミルクの量を追加することも検討しましょう。
- エネルギー消費カロリーが多い
よく動く、激しく泣く、排泄量が多い赤ちゃんは、そのぶん多くのエネルギーを消費します。特に暑い季節は汗をよくかくため、体重が思ったように増えないこともあります。この場合、短期的な数字だけを見ず、長期的な体重の推移を観察することが大切です。
- 病気の可能性がある
機嫌が極端に悪い、顔色が悪い、哺乳量が著しく減っている、あるいは体重が減少している場合は、感染症や胃腸障害、吸収不良などの病気が隠れている可能性もあります。気になる症状があるときは、自己判断せず、必ず早めに医師に相談しましょう。
体重が増えすぎている場合に考えられる原因
新生児期に体重が急速に増加している場合は、その多くが母乳やミルクの飲み過ぎ(授乳量過多)が原因です。
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の満腹感を伝えるのが難しく、泣くたびに母乳やミルクを与えると必要量以上に摂取してしまうことも。特に哺乳瓶での授乳は、飲むペースや量をコントロールしにくく、飲みすぎにつながりやすい傾向があります。1回あたりの量や授乳の間隔を意識して調整することが大切です。
また、赤ちゃんが見せる「満腹サイン」にも注意しましょう。例えば、急に吸う力が弱くなる、乳首を自ら離す、ウトウトし始める、顔を横にそむけるなどは、お腹がいっぱいになったサイン。これらの仕草を見たら一度授乳をやめ、しばらく間を置くと、飲み過ぎを防げます。また、哺乳後の嘔吐が多い場合は母乳やミルクの摂取過多のサインですのでミルクの量を減らすなど調整をしましょう。
医師や専門家に相談すべきサイン
赤ちゃんの体重増減や健康状態の異常を見逃さないために、以下のような症状が見られた場合は、すみやかに小児科や健診窓口に相談してください。
□体重増加が1日あたり15g未満の日が何日も続く
□数日間にわたり体重が減少し続けている
□顔色が青白い、または唇が紫色を帯びている
□お腹が極端に張っていたり、逆にぺたんこでやせてきたと感じる
□哺乳量が著しく減った、または赤ちゃん自身があまり飲みたがらない
□普段よく泣く赤ちゃんが泣かなくなり、機嫌が悪い、反応が鈍いなどの様子が見られる
□尿や便の回数が明らかにいつもより少ないなど、排泄状況に変化がある
□吐き戻しが多い、下痢や高熱などの症状が数日続いている
□母子健康手帳の発育曲線で帯から大きく外れて推移している、または体重が急激に増減している
新生児の体重変化や発育に関するママの体験談
出産後、赤ちゃんの体重の増え方に不安を感じたことのあるママは少なくありません。アンケートに寄せられた体験談を紹介します。
千葉県:にゃこ
体重の増えかたが遅い我が子。4ヶ月頃までは体重が増加しているかすごく気になって不安になり、何度も赤ちゃん用の体重計の置いてあるスーパーへ行き計っていました。成長曲線の下ギリギリですが、この子なりに増加しており「問題ない」と小児科の先生から言ってもらい、とっても安心しました。今6ヶ月になりましたが、今思えばそんなに気にしなくて良かったなと。不安にかられた日々を送っていたのも良い思い出です。
岐阜県:岐阜県りこママ
新生児の頃、ミルクを1回100ccペロッと飲んだわが子。助産師さんがうちに訪問してくれたとき「このままいくと1歳には20キロよ!」と言われ、悩みました。少し少なく飲ませたら、今度は体重が足りないから増やせと言われ、また悩み。かと思えば、5ヶ月の現在は、飲みムラがあって、それもまた悩み。それでも元気に育っている我が子を見て、悩みながら、私も母になっていくんだなと。気にかけてることは、情報に惑わされず、悩み過ぎない!かなと思っています。
よくある質問
新生児の体重の正常値はいくつですか?
新生児の正常体重は、男子約2.3~3.8kg、女子約2.2~3.6kgです。日本の母子健康手帳や産科指導、多くの小児統計で同様の値が示されています。
生まれた赤ちゃんの平均体重は?
日本人の出生時平均体重は、男子約2.98kg、女子約2.91kgです。
少し前後していたとしても、発育曲線の範囲内で推移していれば特に心配はありません。発育曲線は、子どもの月齢や年齢ごとの身長・体重など成長の推移をグラフ上に表したもののこと。日本では母子健康手帳や小児科の健診などで広く使われており、健康的な成長を見守るための基準となります。
まとめ
- 新生児は、出生後に一時的な体重減少(5~10%程度)があり、その後は1日25~30g増加するのが目安です。
- 体重の推移には個人差があり、母子健康手帳の発育曲線で成長を記録し、帯の範囲内で推移していれば問題ありません。
- 体重の増減には、母乳・ミルクの量、消費カロリー、病気などさまざまな要因があります。不安な時は自己判断せず専門家に相談しましょう。
- 正しい体重測定と日々の記録が、赤ちゃんの健やかな成長を支えます。
release : 2025.09.18
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