妊娠中のつわり(妊娠悪阻)はいつから?症状や対処法のポイントについて解説!
妊娠のサインのひとつでもある"つわり"。通常は吐き気をともなう胃や胸のむかつきが妊娠初期から見られますが、症状や時期は人それぞれ。 「この気持ち悪さも、おなかに赤ちゃんがいる証拠!」と気持ちは前向きにとらえつつ、体は決して無理をせず乗り切りましょう!
監修者プロフィール
井上裕子先生
井上レディースクリニック 理事長・院長
医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本乳癌学会認定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、母体保護法指定医師。
診療のかたわら、思春期から更年期の様々な女性に対しての講演活動、また、雑誌などに、出演、監修、執筆するなど多方面で活躍。
著書に「産婦人科の診療室から」(小学館)、「元気になるこころとからだ」(池田書店)、「赤ちゃんとお母さんのための妊娠中のごはん」(池田書店)など。
現在は、リボーンレディースクリニック 理事長、NPO法人マザーシップ 代表を兼務。
つわりが起きる原因やメカニズムとは?
- 胎盤の絨毛から分泌されるホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が、嘔吐中枢などを刺激するため
- ホルモンバランスの変化で自律神経が失調するため
- 精子の侵入や、胎児を母体が異物と判断してアレルギー反応をおこすため
つわりが始まる時期は?
多くの場合は、つわりは妊娠初期に見られる症状で、早い人だと「月経が遅れているな」と思う頃に始まる場合があります。妊娠4週ごろから15週ごろまで続くケースが多く、最もつらい時期は8−9週が多いようです。
しかし、時期にも個人差があり、10週くらいで終わる人もいれば、妊娠後期まで続く人もいたり、あるいはまったくつわりを経験しなかったという人もいます。
つわりには個人差が生じる
つわりは原因が特定されていないだけに、時期や以下でご紹介するような症状もさまざまです。同じ吐き気にしても、何もなくても吐き気がする人もいれば、特定のにおいに反応して吐き気がするなど、十人十色。だから、なかなか人に理解してもらえない辛さがある一方で、同じ症状の先輩ママや妊婦仲間の対処方法が役立つこともあるので、ネットで体験談を探してみると参考になるかもしれません。
つわりの種類と症状
つわりの主な症状は「吐いたり、吐き気を感じること」。多くは朝目覚めたときや、空腹時に症状が重くなるようですが、これもまた人それぞれ。
主な症状例には以下のようなものがあります。
吐く、吐き気がする(吐きつわり)
胃や胸がむかむかしてがまんができず、吐いたり、空腹時には吐くものがなくつらい症状となります。また、下記のにおいつわりと同時に起きて、ご飯を炊くにおいや電車のにおいなど、特定のにおいをかぐと吐き気をもよおす人もいます。
においに敏感になる(においつわり)
自律神経が不安定になることで起きるようです。日頃は感じなかったにおいを嗅ぎ取ったり、ご飯が炊けるにおいや煮物の湯気など、それまではいい香りだと思っていたものが急に不快になったりすることがあります。
食べ物がほしくなる、好みが変わる(食べつわり)
常に口にものが入っていないと吐き気を感じてしまう「食べづわり」と呼ばれる症状になる人もいます。今まで好きだったものが急に食べられなくなったり、逆に嫌いだったものがむしょうに食べたくなり、常に口にものが入っていないと気持ちが悪くなるということがあります。
眠気がする(眠りつわり)
体がだるくなったり、いくら眠っても眠気が覚めないことがあります。夫やパートナーにもなかなか理解されないことがありますが、妊娠によるつわりの一種であることを伝えて、なるべく休ませてもらえるよう家事分担を減らしてもらいましょう。
イライラしたり、頭痛がする
生理痛のような頭痛やイライラを感じる人もつわりの時期には多くみられます。妊娠前のように薬に頼ることができず、辛さが増してしまうので、頭痛がひどいときは主治医に相談しましょう。
つわりと赤ちゃんの成長の関係性とは?
「つわりで食事を思うようにとれないと、赤ちゃんが健康に育たないのでは?」と心配になることもありますよね。でも大丈夫。妊娠初期のつわりの時期の赤ちゃんはまだとっても小さいので、それほど多くの栄養を必要としていません。この時期のつわりは赤ちゃんの成長や発達に影響はないので、無理に食べる必要はなく、自分の体調を優先してください。
また、赤ちゃんに必要な栄養は赤ちゃんに優先的に行くようなしくみになっているのが妊婦の神秘! 赤ちゃんに必要な葉酸(ビタミンB群の一種)などのビタミン摂取は必要ですが、それ以外は食べたいものを食べられるだけ食べましょう。
つわりの対処法は?
まずは「無理をしないこと」がこの時期は大事です。吐き気がしてもおなかはすきますので食べたいものを食べ、体がだるいときは休むことができる環境作りを考えましょう!1日3回の食事にこだわらず、分割して少しずつ食べてもかまいません。
食べ物を受けつけないときはサプリメントも便利
つわりの頃は、栄養の量やバランスはまださほど気にしなくてもよい時期。とはいうものの、食欲がなくても妊婦さん自身の体力のためにも食べられるときには少量でも食べておきましょう。
ただし、近年、妊娠初期の葉酸不足が流産や胎児の奇形の原因になることが多いとの研究報告が増えています。
以前は、妊娠中になぜか無性に食べたくなるファーストフードやジャンクフードなどだけでもOKとされていましたが、この時期はなるべく葉酸と、葉酸の吸収に必要なビタミンB12、B6、ビタミンCを意識的に取ることが必要です。葉酸はイチゴやグレープフルーツ、ほうれんそうやブロッコリーに多く含まれています。つわりでこれらを受けつけないときは、葉酸が含まれるマルチビタミンのサプリメントで補うのもよい手ですね。
最近はマタニティビタミンとして妊娠を望む女性に、妊娠中のおすすめのビタミン剤をサプリとして摂取することもすすめられています。
水分はきっちりとりましょう
水分が不足してくると、脱水症状を起こしたり、尿の濃度が濃くなったりするので、水分はまめに補給するようにしましょう。ミネラル豊富で水分の吸収のよいイオンドリンクはおすすめです。
枕元にすぐ食べられるものを
朝起きたときに吐き気を感じることが多く、すると一日がつらいものに。枕元にビスケットやクラッカーなどすぐに口にできるものを準備して、目覚めたとき寝たままそれらをつまんでから起きると、かなりラクに過ごせるようになります。
家事や仕事で無理をしない
においにも敏感になるつわりの時期。炊事や通勤の電車のにおいも耐え難く感じることが多々あります。この時期は妊婦さんの体調も赤ちゃんの状態も不安定。無理をしないことが大原則です。
家庭では家族の理解を求め、つわりがひどいときには料理を交替してもらったり、インスタント料理やできあいのお総菜で済ませるなどして乗り切りましょう。
仕事をしている人は、早めに職場に妊娠を報告して時差出勤や、短縮勤務を申し出ましょう。これは男女雇用機会均等法で雇用主に義務づけられていることなので、産院の医師に「母性健康管理指導事項連絡カード」に必要事項を記入してもらい、職場に申請すれば取得する権利があります。権利とわかっていても、なかなか言い出しにくい、と感じてしまう人もいるかもしれません。でも、仕事を元気に続けるためにも、「一番大事なのは、おなかの赤ちゃんとあなたの健康」ですよね。
気分転換を積極的に
精神的な要因も多いとされるつわりですので、お友だちと会っておしゃべりしたり、好きなことをして気をまぎらわせるなど、気分転換をすることでかなりラクになることもあります。
つわりに効果的なツボについてはこちら>>
こんなときは医師の診断を!
けれど、下記のような「妊娠悪阻(おそ)」と呼ばれる深刻な状態になったら、ママにも赤ちゃんにも影響が心配ですので、医師の診断を受けましょう。
- 一日に何度も吐いて脱水状態
- 尿の量が減少した
- 数日間ほとんどなにも食べられない
- 妊娠前より体重が5kg以上減った
- 体力が落ちてフラフラする
症状によって、通院で済むケースと、入院が必要になるケースがあります。
また、妊娠中期以降でもつわりで食欲がないことが続く場合は、赤ちゃんへの影響が心配されますので、健診の際に医師に相談しましょう。
update : 2022.07.27
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