臨月に起こる下痢は出産の兆候?理由や病院の受診が必要な症状を解説【医師監修】
「臨月に入ってからおなかがゆるい…これって出産が近いサイン?」と不安になる方も多いでしょう。妊娠の最終段階では、ホルモンの変化や体の準備によって腸の働きが活発になることがあります。この記事では、臨月に起こる下痢の原因や出産との関係、受診が必要な症状の見分け方をわかりやすく解説します。
監修者プロフィール
佐藤歩美先生
あゆみレディースクリニック高田馬場
日本周産期・新生児医学会周産期専門医。2008年横浜市立大学医学部卒業。愛育病院、NTT東日本 関東病院に勤務後、2022年より現職。できるだけ妊婦さんの気持ちに寄り添えるように、悩みなども話せるような雰囲気づくりを心がけている。
この記事で知ることができるのは?
- 臨月になると、ママの体内では出産に向けてホルモン分泌量などに変化が起こります。その影響で下痢をしやすくなるため、出産が近いサインとして見られる場合があると説明します。
- 臨月に下痢をしやすくなるのは、「プロゲステロン」という女性ホルモンの分泌低下や、子宮による腸の圧迫、出産への不安やストレス、前駆陣痛などが関係していることを解説します。
- 細菌やウイルス感染が原因の下痢では、胎盤を通じて赤ちゃんに影響が及ぶこともあるため注意が必要であることを説明します。
- 対処法として白湯や経口補水液で水分をとることや、自己判断で下痢止めを服用するリスクについて説明します。
- 臨月の下痢が一時的であれば受診の必要はありませんが、他に症状がある場合、持病がある場合は医師に相談・受診したほうがよいと説明します。
臨月に起こる下痢は出産の兆候?
臨月に下痢をした場合、出産が近づいている兆候のひとつとしてとらえることができます。出産予定日が近づいてくると、ホルモンバランスが変化するなど、ママの体の中ではさまざまな変化が起こります。下痢は、そのような変化を受けて起こる症状のひとつだからです。臨月に入り、予定日が近づけば近づくほど、下痢をしやすくなるともいわれています。ただし、「下痢=出産の兆候」というわけではありません。胃腸炎など別の原因で下痢をすることもあるので、その点は胸に留めておきましょう。
臨月に下痢をしやすい理由
臨月に下痢をしやすい理由として考えられるのは、以下の4点です。どれも、出産に向けたママの体内で起きている変化と関連しています。
- 女性ホルモンの「プロゲステロン」の影響
- 子宮が腸を圧迫している影響
- 自律神経が乱れている影響
- 前駆陣痛
女性ホルモンの「プロゲステロン」の影響
妊娠すると、妊娠を維持するために働く「プロゲステロン」と呼ばれる女性ホルモンの分泌が増えます。プロゲステロンには腸の運動を抑制する働きもあるため、分泌が増える妊娠中は、どちらかというと便秘がちに。しかし臨月に入れば、妊娠を維持する必要はありません。出産に向けてプロゲステロンの分泌が減るため、抑制されていた腸の運動も活発化してきます。そのため、便秘が改善され、快便になりすぎて下痢をしてしまうことがあるようです。
子宮が腸を圧迫している影響
臨月を迎えるころになると、子宮内の胎児も成長し、かなりの大きさになっています。その影響を受けるのが子宮のすぐ近くに位置する腸。子宮に圧迫されるため、本来のような動きができなくなってしまうのです。腸がスムーズに動かないと、胃から送られてきた食べ物を消化することができないだけでなく、水分や栄養素を十分に吸収することもできません。そのため、消化しきれない食べ物や水分が腸を通過してしまい、下痢をしてしまうことがあります。
自律神経が乱れている影響
臨月に入り、出産が現実的なものになってくると、それまでの「お腹の赤ちゃんが無事に育ちますように」と願う気持ちから、「出産の痛みって、どのくらいなんだろう」「痛みに耐えられるのだろうか」、さらには「自分に子育てできるのだろうか」という不安を感じるようになります。こういった気持ちの変化が自律神経のバランスを乱し、下痢につながることがあります。腸はストレスを感じやすく、わずかな刺激でも便意を感じ、下痢をすることも少なくありません。
前駆陣痛
前駆陣痛と下痢に直接的な関係はありませんが、まったく無関係かというと、じつはそうとも言い切れません。前駆陣痛の痛みと下痢をしたときのお腹の痛みは似ているともいわれているからです。下痢をしてお腹が痛いのだと思っていたら、実はその痛みが前駆陣痛だったということもあります。下痢をしたときは、お腹の痛みにも注意を向けるといいでしょう。前駆陣痛は規則的な痛みが起こる陣痛とは違い、痛みの現れ方が不規則で、少しずつ治まっていきます。
臨月に下痢をすると胎児に影響が出る?
臨月に下痢をすると、お腹の赤ちゃんにも影響があるのではないかと不安になりますが、臨月の下痢は一時的であることが多く、基本的には心配しなくても大丈夫です。下痢で水分摂取量が減り、体内の水分があまりに奪われると脱水症状が心配されるため、水分補給を心がけましょう。ただし、下痢の原因が細菌やウイルスの場合は、胎盤を通して赤ちゃんに影響が及ぶこともあるので、注意が必要です。
臨月に下痢をした時の対処法と注意点
臨月に下痢をした場合は、以下の2点に気をつけて過ごすようにしましょう。ママの体はもちろん、お腹にいる赤ちゃんのためにも大切なことです。
- 水分補給を行う
- 自己判断で下痢止めを服用しない
それぞれについて、詳しく説明します。
水分補給を行う
臨月で下痢をしたときに重要なのは、こまめに水分を補給して、脱水症状にならないようにすることです。脱水症状になると、意識不明に陥ったりけいれんを起こしたりすることもあるので注意しましょう。
何かを飲む場合は、腸を刺激して下痢を悪化させる心配のある冷たい飲み物は避け、白湯か経口補水液をおすすめします。白湯のメリットは、飲んでも胃腸に負荷をかけず、しかも体内に吸収されやすいこと。経口補水液の場合は、水分だけでなく、下痢によって失われたカリウムやナトリウムなどの電解質も補うことができます。
なお水分補給は、一度にたくさんの量を飲むのではなく、15分~30分程度の間隔で少しずつ摂取することがポイントです。そのほうが、体は効率的に水分を吸収できます。
自己判断で下痢止めを服用しない
臨月に下痢をしたときに、自分の判断で下痢止めを服用することはやめましょう。先ほども説明したように、臨月の下痢はホルモンバランスの変化や腸の圧迫などが原因であることが多く、市販の下痢止めの成分では効果が期待できないからです。それだけでなく、下痢の原因が細菌やウイルス感染の場合、下痢止めで細菌やウイルスが排出されず症状が悪化する心配もあります。下痢止めに限りませんが、薬には妊娠中に服用できない成分が数多くあります。胎児の発育に影響を及ぼす成分もあります。どうしても下痢止めを服用したい場合は、必ずかかりつけの産科医に相談し、指示に従いましょう。ママの体と赤ちゃんの体を守るためにも、慎重な対応を心がけてくださいね。
病院を受診した方がよい妊娠中の下痢症状
臨月の下痢での受診はしなくても大丈夫ですが、次のような症状があるときには、診察を受けましょう。
- 規則的なお腹の痛みがある場合(陣痛発来)
- 発熱や悪寒、食欲不振などの症状がある場合(感染症の可能性)
- 持病など体調で気になることがある場合
規則的なお腹の痛みがある場合(陣痛発来)
下痢があり、さらにお腹の痛みが定期的にきている場合、その間隔が短くなり少しずつ強くなっている場合は、陣痛の始まり「陣痛発来」の可能性があります。まずは、気持ちを落ち着けてお腹の痛みを観察しましょう。明らかにいつもと痛み方が違う、規則正しく痛むという場合は、かかっている産科医に連絡をして、指示があれば受診してください。痛みに加えて性器出血がある場合は、すぐに医師への相談が必要です。
なお、36週6日目までは早産となります。
発熱や悪寒、食欲不振などの症状がある場合(感染症の可能性)
下痢には嘔吐を伴うこともありますが、それ以外に、発熱や悪寒、食欲不振、倦怠感などの症状が自覚できる場合は、細菌やウイルスによる感染症の可能性があります。下痢をしているうえに食事や水分の摂取ができないとなると、脱水症状を引き起こすことにもなりかねません。こうなると、お腹の赤ちゃんの状況も心配です。症状が始まった時期、出産予定日、体温、飲食の摂取状況などをメモにまとめ、医師に連絡をしてから受診しましょう。
持病など体調で気になることがある場合
血圧の変化など体調に気になることがある、アレルギー疾患やぜん息、甲状腺機能疾患など持病があるという場合は、早めに連絡をして指示を仰ぐようにしましょう。下痢との直接的な因果関係はないかもしれませんが、不安を抱えたまま過ごすのは精神衛生上もよくありません。先ほどもお伝えしたように、不安やストレスは自律神経を乱し、下痢を悪化させることがあります。「このくらいで相談するなんて」などと思わず、医師のアドバイスを受けて過ごしましょう。
まとめ
- 臨月の下痢は、出産の兆候である可能性があります。
- 臨月に下痢をしやすいのは、ホルモン変化、子宮による腸の圧迫、自律神経の乱れ、前駆陣痛などが主な原因で、どの場合も基本的に胎児への影響はありません。
- 臨月に下痢をしたら白湯や経口補水液での水分補給を心がけ、自己判断の下痢止め服用はしないようにしましょう。
- 陣痛発来、感染症などの下痢であると感じるときは、必ず医師に連絡をし、指示があれば受診しましょう。
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release : 2025.11.12
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